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 White Day 2013

「ハチ公」
「え?わっ!」

呼ばれて振り返ると、乱暴に投げられたなんの変哲もない袋をキャッチする。
中を覗けば大量の飴。

「それ、やるよい」
「なんで飴?」
「ホワイトデーだろい?」

あ、なるほど、と思ったが、なんで飴?
バレンタインの時は柄にもなく気合いをいれて手作りで渡したけど、お返しが飴って…他にもいろいろあったんじゃないかとも思うんだけど。

「ありがとうございます」

そう言うとマルコ隊長は踵を返して何処かに行ってしまった。
なんか、腑に落ちないんだけど。
適当に手にした飴を口の中に放り込む。
飴は好きだけどさ、腹の足しにもならないじゃん。
どうせならクッキーとか、島に降りた時にご飯ご馳走してくれるとかそんなんが良かったな。
マルコ隊長から頂いたのはどんな物でも嬉しいけどさ。

「よぉ!何浮かない面してんだ?」
「サッチ隊長」

相変わらずのヘラヘラとした面持ちで声を掛けて来たサッチ隊長にマルコ隊長から貰った飴を一つ渡す。

「どうしたんだよ、この飴」
「マルコ隊長から貰いました」

コロコロと口の中を転がる飴が次第に小さくなっていき、私はもう一つ同じ飴を探して口の中へ入れた。
無くなりかけていた甘さが再び口の中に広がる。

「マルコも粋な事しやがる」
「どういう意味ですか?」

知らねェの?とでも言いたそうな顔で私を見る。
え、なに、なんかムカつくんだけど。

「お返しに飴を送るっつーのはな、交際してもいいですよってことなんだぞ?」
「え?」
「ちなみにクッキーはお友達でいましょう、マシュマロはごめんなさい、だ」

そんな意味があったんだ、ふーん。
交際してもいいですよって…え?

「えぇ?!」

口の中で転がっている飴を思わず飲み込んでしまった。

「お前、まじで知らなかったのかよ」

ご丁寧に、女子だろ?一応、と失礼極まりない余計な一言付きで。

「マルコ隊長のとこ行ってきます」

殴りたい衝動を抑え、マルコ隊長が向かったと思われる方向に足を進める。
本当、どっちが女子がわからないじゃない。
だってそんな話聞いたことなかったし、ましてマルコ隊長がそんな洒落たことするとか思わないし。

「マルコ隊長!」

隊長の部屋へ行く途中、偶然にも後ろ姿を発見し声をかける。

「なんだよい」
「いいんですか。私なんかで」

まずはそこでしょう。
女らしくもないし、戦闘バカだし、いつも隊長格の方々からお怒りの言葉を頂戴するような私だから。

「サッチあたりに聞いたんだろい?なんか、とか言うんじゃねェよい。その飴の意味のまんまだよい」

そうは言うけど、隊長に好きだと言われたわけでもないし、飴貰っただけだし。
本気なのかどうかもわからないし、隊長の彼女です。なんて言って思い込みだのなんだのって恥をかくのは真っ平御免だ。

「はっきり言ってください」

少し睨むような目になったのは照れを隠すのでいっぱいいっぱいで。
隊長は初めは少し驚いてはいたがすぐに目を細めて妖艶に笑った。

「お前から言えよい」
「は?」
「聞いてねェのは俺も一緒だろい?」

えぇ、確かに私も言ってませんよ。
押し付けたようなものだったし。
だからと言って何故に私も言わないといけない。
マルコ隊長はニコニコしながら私からの言葉をまっているご様子。
言わないと、多分ずっとこのままだろう、と思って口を開く。

「す、好きで、んぐ?!」

最後まで言い終わる前にマルコ隊長に口を口で塞がれる。

「俺も、好きだよい」

反則だ。耳元で言うなんて。
きっと私の顔は真っ赤になっているだろう。
その証拠に、マルコ隊長が必死に笑いを堪えていた。

飴よりも甘いもの
「顔が真っ赤だよい」
「うるさいです」





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