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 LOVE for you

「好きです!」
「そーかい」

本日何十回目かになる愛の告白。
勇気を出して言っているのに軽くあしらうこの人は16番隊のイゾウ隊長。

「またやってんのかよい」
「マルコ隊長ぉ」

去って行くイゾウ隊長の背中に熱い眼差しを送っていると、後ろからマルコ隊長とサッチ隊長がいた。

「またダメでした」
「今日で何回目だよい」
「わかんないです」

こんなにも好きなのに、イゾウ隊長には全く伝わらない。
いつもそーかい、とか、ありがとう、とかって躱される。

「諦めろよ」
「嫌です!イゾウ隊長が好きなんです。イゾウ隊長じゃなきゃ嫌なんです」

綺麗で格好良くて頭も良いしクールだし、家族を思って怒ってくれたり、でも凄く優しくてそんな隊長が大好きで。
私はなんの変哲もないただの家族でしかないかもしれないけど、イゾウ隊長の傍で戦いたいし、イゾウ隊長の傍で笑ってたい。
イゾウ隊長にも私の傍で笑っててほしい。
こんなにも想ってるのになんで伝わらないのかがわからない。

「イゾウも意地が悪ィよい」
「だな」

クスクスと笑っている二人の隊長。
私にはなんの話かさっぱりわからないけど、のけ者みたいで落ち込んできた。

「そうしょげんなって」
「うるさいです。コッペパン隊長」
「ちょ、それひどくない?」

困ったように笑うサッチ隊長だったけど、良いこと教えてやる、と、私に手招きをする。
サッチ隊長の良いことは悪いことにもなり兼ねないので少し警戒したが、マルコ隊長をチラッと見ると、今回は大丈夫だよい、と言ってくれたので、サッチ隊長に耳をかした。

「イゾウはな…で…」
「ほ、本当ですか?」

耳打ちされた言葉に疑いを掛けると、親指を立て、グーサインを出すサッチ隊長。
乗るか反るかは私が決める事だ。
サッチ隊長なんかに、と思うけど、私も後がない。

「やってみます」
「頑張れよ!」

マルコ隊長とサッチ隊長に後押しされ、まず向かった所は医務室。

「すいませーん」
「ハチ公じゃない。どうしたの?」
「あの、着付けってできますか?」

医務室の扉を開けると、ジェリーさんが優雅にお茶していた。

「出来るけど…イゾウ隊長に頼んだら?」

私がイゾウ隊長が好きだという事は、この船に乗っている全てのクルーが知っている。
ニヤニヤとしながら言うジェリーさんに

「その隊長の所へ行くのに着付けして欲しいんです!」

というと、快く承諾してくれた。

「でも何で着付け?」
「サッチ隊長がそう言ってたんで」

私はこれに掛けるしかない。
これでダメなら…諦める事も視野に入れないといけないなぁ。

「じゃあ気合いいれないとね!髪も化粧もしてあげる!」
「ありがとう!」

ジェリーさんとの会話を楽しみつつ、着付けに、化粧を施してくれて、髪も綺麗に結ってくれた。

「はい、出来た。頑張りなさいよ」
「すごーい!ありがとう!頑張る!」

振られたら慰めてあげる、なんて縁起でもない事を言われたのは聞こえないふりをして、私はイゾウ隊長の部屋へ向かった。

「うわー、なんか凄い緊張してきた」

鏡を見た時、自分が自分じゃない気がして。
ジェリーさんは綺麗と言ってくれたけど、やっぱり違和感しかない。
イゾウ隊長の部屋の前まで来たのは良いけど、心臓がバクバクして体が動かない。

「無理だよ…」

折角ジェリーさんがいろいろしてくれたのに。
土壇場で怖気付いてしまうなんて情けない。
告白なんて今まで散々言ってきたけど、最後にしようと決めた途端怖くなって泣きそうになる。

「駄目だ…!」

そう思って踵を返そうとした時、目の前の扉が開いた。

「あ…」
「…ハチ公、か?」

私を見て、イゾウ隊長は目を見開いた。

「あ…あの、そのっ」

心臓が早過ぎで頭がおかしくなりそう、顔もだんだん熱くなってきて泣きそうになる。
次の言葉が出ない。
と思ってたら、イゾウ隊長に腕を引かれ、そのまま部屋の中に。

「あの…隊長、?」

後ろには扉が、目の前にはイゾウ隊長。
隊長は扉に手を付き、私をジッと見つめる。
そんなに見られたら、恥ずかしくなる。

「どうしたんだ?そんな格好して」

口角を吊り上げて笑うイゾウ隊長に思わず俯いてしまう。
言わなきゃ…ここまできたんだから。
意を決して、イゾウ隊長に手を伸ばし裾を掴んで隊長の顔を見る。
こんな時まで格好良くて、それに魅了され言葉が詰まる。

「イゾウ、隊長…私…隊長が好き、なんです」

初めは憧れだった。
16番隊に配属されて、イゾウ隊長の傍にいるうちに、いろんな隊長を知っていくうちに、どんどん惹かれていった。
もっと隊長の事が知りたい、普段見せない顔を、私だけに見せてほしい。
愛おしそうな眼差しを私だけに向けてほしい。
そう思うようになっていった。

「隊長…大好きです」
「あぁ、知ってるさ。俺だって…」

自然と、隊長の唇と私の唇が重なり合う。

「ずっと好きだった」

隊長はそう言って、もう一度唇を重ねた。

「着物、似合ってる…凄ェ、綺麗だ」
「ん…たい…ちょ、」
「何も言うな」

溶けそうなくらい濃厚なキスで、私は頭が真っ白になりそうだ。
嬉しくて、愛しくて、隊長も私をずっと好きでいてくれて…


ん?ずっと?

「ちょ、隊長!」

私は我に返って行為を続行しようとする隊長を止めた。

「なんだよ」
「ずっとってどういうことですか!」

今までずっと?じゃあ私が言ってきた時も実は好きでした、とかそんなオチ?
軽くあしらってたくせに?

「必死なお前さんを見てると楽しくてな」

今までの事を思い出したのか、声を殺して笑うイゾウ隊長。
酷い、私は真剣だったのに!
からかわれてたなんて、そんなのってないよ!
言いたい事は山ほど出てくるが、言ったところでこの人には通用しないだろう。
頬を膨らまし、拗ねる素ぶりをしてみた。

「悪かったって」
「悪いと思ってないくせに」

チラリと隊長を見ると、参ったといった風に後頭部を掻いていた。

「機嫌直せよ。なんでも一つだけ願い聞いてやるから」

笑いながら言うのが納得いかないが、それで手を打とうじゃないの。
私は考えに考えた結果、初心に返り、今まで言えなかったわがままを初めて口にした。

「傍で…ずっと、私の傍で笑ってて下さい」
「お安い御用」

腕を引かれ、イゾウ隊長の胸に飛び込んだ。
もう、離さないで。私も、離してあげない。


たっぷりの愛を
「サッチ隊長の言う通り、着物で裾を掴んで言ったらオッケーもらえましたー!」
「だろ?良かったなー!」





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