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恋人っぽい事

人には出来る事と出来ない事があると思うんだ。
マルコ隊長みたいに素敵なパイナップルとか私には出来ないし、サッチ隊長みたいにイカすフランスパンも私には出来ない。
いや、髪型だけならなんとか出来るかもしれない。
今私のおかれている状況はそんなくだらないことよりも深刻なんだと脳が警告している。

この状況が何分、いや、何時間経っただろう。
目の前には目を閉じて時折まだか、と声をかけてくるイゾウ隊長。
そしてイゾウ隊長の前で正座をし、顔を近付けては離れて近付けては離れてを繰り返す私。
周りにはなんだなんだと好奇心だけで私たちの様子を伺う隊員や訳を知っていて御愁傷様とでも言いたげに両手を合わせる隊長たち。
誰か事情を聞いて止めるとかはしないのか、薄情な奴らめ。
あ、サッチ隊長目が合ったのに逸らしやがった。
あんにゃろう、後で覚えとけ。

「おい」
「ヒッ!」
「早くしな。俺ァそんなに気が長く無いんでな」

ピクピクと動く眉毛を見る限りかなり我慢しているのが伺える。
そりゃそうだ、どんだけ待たせんだって話だもんね。
ごめん、イゾウ隊長。
でも私には少しばかり拷問に近いこの状況はかなりの冷や汗もんだってことも察していただきたい。

「お前さんが言ったんだろうが。恋人っぽい事したいって」
「そ、それはそうなんですけど…」
「俺にしてほしい事ねェか聞いたのもお前さんだったよな」
「…デスネ」
「ならお前さんがやるべき事はわかってるはずだ」
「や、そうなんですけど」

確かにそう言ったよ。
世間一般の恋人様は一体どのようにして過ごすのかわからないし、いつもエース隊長やサッチ隊長とかとバカやってる私もたまには、なんて思ったりしたらこの有様だ。
イゾウ隊長に恋人っぽい事をしようと提案したはいいがどうしていいかわからず、して欲しい事はないかと尋ねれば私からその、キ、キキキ、キスしてほしい、なんて。

「お前さんがしねェんなら俺からするぞ。濃厚なやつ」
「ちちちちょい待って!する!するから!」

イゾウ隊長の伸ばしかけた手を慌てて止めて座り直す。
大丈夫、ちゅってすればいいだけの話だ。
寝る前にするおやすみのちゅーと一緒で軽くちゅってするだけ、頑張れ私。
意を決してゆっくりとイゾウ隊長に顔を近付ける。
ギャラリー共の生唾を飲み込む音が聞こえてきそうな勢いだ。
だんだんとドアップになるイゾウ隊長の顔は本当に綺麗で、私この顔とちゅうするのか。と何処か落ち着いている頭で考えた。
あれ、なんか私変態くさいぞ。
そんな事を考えていると唇が触れ合うまであと1センチほど。
腹を括れぃ!人生勢いだ!いざ、参る!!


ゴチンッ!


「「ッテェエ!!」」

可愛いリップ音が鳴りそっと唇を離すとニヤリと笑ったイゾウ隊長と目が合った。
となる筈だったのに、なんてこった。
ギャラリーがドン引きするくらいのゴツイ音が響いた。
勢いつけ過ぎて歯とおでこがぶつかるという私マジック。
口を押さえるべきかおでこを押さえるべきか痛過ぎてそんな事すら考えられない。

「なまえ、テメェ…」

痛みに悶えているとドス黒いオーラを放つイゾウ隊長の声で我に返る。
やばい、これはヒッジョーにやばいぞ。
今の私は冷や汗製造機と言っても過言ではないくらいだ。

「覚悟は出来てんだろうな」
「ヒィィイ!!!ごめんなさいすいません申し訳ないですぅぅう!!!」

怖い!イゾウ隊長怖いよ!誰か助けて!

ギャラリー共に助けを求めれば我関せず、誰一人手を伸ばそうとせずそそくさとチリチリになっていった。
こんの白状者共!!ばか!!助けてくれてもいいじゃん!!

「わっ?!は?!えぇ?!」

絶望に浸っているとふわりと体が宙に浮いた。
そう、イゾウ隊長に担がれているのだ。それはまるで樽のように。

「イイイイゾウ隊長?!な、なに?!」
「悪い子にはお仕置きが必要だとは思わねェか?」

ぐうの音も出ないとはこのことか。
てかこれ私が悪いの?ねぇ、悪いの私?!
ガッツリぶつかった落とし前付けろやコノヤロウって事ですか!
向かった先はイゾウ隊長の部屋で、扉を閉めた隊長はご丁寧に鍵までかけやがりました。

「キスもまともに出来ねェ悪い子には…さて、どうしてやろうか」
「お、お助けを!お代官様ぁぁあ!!!」
「はっはっは!苦しゅうない!」
「え、ちょ、まじやめっ、ぎゃぁぁああぁあ!!!」


恋人っぽい事
「あいつらなにやってんだ?」
「エース、世の中には知らなくていい事もあるんだよい」




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