四季イベント | ナノ


▼ キスの日

「藤井ー! 一緒に帰ろうぜ」

 終礼が終わった途端、武久が藤井に声をかけた。

「あ。ごめん、俺このあと用事あるんだ」
「ええ、何だよそれ…まさかデートとか言うんじゃねえだろうな」
「え、なんでわかったの」
「は!?マジで?お前彼女なんていたの?!」
「うん。中学からの付き合い」
「何だよそれー」

 あからさまに武久が肩を落とした。

「はは…悪いな、また誘ってくれ。じゃあまた明日な」
「おー、楽しんでこいよ」
「さんきゅー!」

 藤井と別れた武久は、肩を落としたままこちらへ歩いてきた。

「斎藤…聞いてくれよ。藤井のやつ、彼女いるんだってさ」
「ああ、聞こえた。それがどうかしたのか?」
「うぅ、なんだよそのセリフ…斎藤はいいよなあ…カッコいいし、勉強できるし、スポーツもできるし」
「…なんだよ、急に」
「女の子が好きそうな性格だし…さぞモテるだろうね!」
「は?」

 怪訝に思って武久の顔を見ると何やら思い詰めたような表情をしていた。

「おれだってモテてみたい! 付き合いたい! キスしてみたい!」
「じゃあ付き合うか?」
「彼女いない歴イコール年齢なめん、な? は?」

 間抜け顔を晒した武久の口端を軽く啄ばむ。

「……え、ちょ、なにしてんの…?」
「キス、してみたかったんだろ?」
「だからってお前…おれ、ファーストキスだったのに」
「ふうん。ごちそうサマ」
「…っ! っていうか! おれ男だし!」
「それがどうした?」

「……え、」

「好きになった奴の性別なんて関係ねぇよ」

 思考が停止したように動かなくなった武久に近づき、もう一度、今度はしっかりと唇を合わせた。

「俺はお前が好きなんだ」



(…ほら、やっぱりカッコいい)

キスの日 2013.05.23

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