四季イベント | ナノ


▼ エイプリルフール

 それは、いつもの衝突。

「はあ? ッざけんなよ、この企画書で十分だろうが」
「はッ、何言ってんだ、これじゃあ詰めが甘いんだよ」
「あァ?」

 思わず手が出る。
 ぐわりと服を掴んだ手は、ぱしりと簡単に払い除けられた。

「…ったく、生徒の代表がこれじゃ、尚更駄目だよなァ?」
「ッ! てめぇには言われたくねえ!」

 ついカッとなって、声を荒げてしまう。
 ああ、違う、俺はこんな事が言いたいんじゃない。

「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、ここまでくると、」
「おい!」
「どうしようもねえなあ」

 言葉を遮って顔面に向かって拳を突き出せば、軽々と避けられてしまった。

「こういう事を言ってんだよ、ばか」

 にやりと口端を上げて笑われる。

「…くそ……」

 これでは駄目だ、落ち着けと自己暗示をかけるように息を吐く。
 俺は今日、個人的な用事があって、ちゃんとこいつと話をしたかったんだ。

「お前がおとなしいと気味が悪い」
「て、めえ…ッ!」
「ふ…。イキがいい方がお前らしくていい」
「あ…?」

 息をつくように笑われたあと、ボソリと呟かれた言葉は聞き取れなかった。

「いや、なんでもない」

 肩を竦めながら言われて気になったが、それよりも今は俺の用事を優先する。

「…なあ。今日、お前に会ったら言おうと思ってた事があんだけどよ、」

 そう言うと、怪訝そうに眉を寄せて見返される。

「いきなり改まられると変な気分だ」

 話の腰を折られ、黙って聞けと言うように睨みつけた。

「…俺、お前とは喧嘩ばっかしてるけど、実は、最初に会ったときから、お前のこと好きなんだぜ」
「は…?」

 信じられない、とでも言うように目を見開かれた。

「一目惚れだ。っていう嘘にしたかったんだけどよ」
「…ああ、エイプリルフールか。もう夕方だ」

 そう言って残念だったな、と嗤うあいつにもう一撃。

「で。今なら言っても無効じゃねえよな?」
「そうだな…、…え?」

 意味がわからないというように再び眉を寄せられた顔をまっすぐ見て、満面の笑みで告げた。



「好きだぜ、お前のこと」





さあ、果たして相手の反応は……?
2013.04.01

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