▼ ハロウィン
粛然と静まり返った室内に突如、乱暴に扉を開く音が響いた。室内にいた者が何事かと一斉に扉の方に顔を向けると、そこにはこの学園のツートップの一人、風紀委員長の英田佑(あいだゆう)の姿が。その姿を認識するや否や、皆が一様に顔を顰めた。
ここは生徒会室。生徒会と風紀委員会は犬猿の仲、というのがこの学園に通う者の常識で、今期の役員も例に洩れず、仲が悪かった。
「…風紀がここに何の用ですか」
副会長が尋ねるも、英田はお前に用はないとばかりにスルーし、この部屋の主で英田と肩を並べる存在の生徒会会長、三鷹佳穂(みたかけいほ)の机の前に立ちはだかった。
「……」
「……」
三鷹と英田が互いに睨み合う状態が暫く続いたが、痺れを切らした三鷹が先に口を開く。
「俺は忙しいんだ。用があるならさっさと済ませろ」
三鷹が言うや否や、英田は嫌な笑みを浮かべた。
「ああ、そのつもりだぜ。なァ三鷹、今日が何の日か知ってるか?」
「あ?何だ突然…つか、んなの知るかよ」
そう答えると、英田の笑みがさらに深くなった。
「ハロウィンだろぉが」
「はあ?」
「ほら、Trick or Treat」
言いながら、英田が手を出す。
「…んなの、持ってるわけねぇだろ」
「じゃあ、trick…いたずらしても文句は言うなよ?」
「は?っ、ちょ…おい!」
そう言うと英田は、三鷹を米俵よろしく肩に担ぎ上げる。
「ふざけんな! 何のつもりだ!」
「あ? 俺はちゃんとトリックorトリートっつっただろうが。何も持って無いお前が悪い。…まあ、菓子渡されても連れて行くつもりだったが」
三鷹が暴れるも、英田はすたすたと歩を進めて入って来た扉に近づき、背後を振り返った。
「じゃあ、そういうわけでコイツ借りるぜ。まあ、今日はもう来れねぇと思うが?」
英田は最後に役員に向けて何か勝ち誇ったように笑い、そのまま扉を閉めて出て行った。
@生徒会室
会計「…え、かいちょーといんちょーって何なの?」
副会長「さあ…私たちの中で一番風紀と仲が悪かったはずですが…」
庶務「「でも委員長、楽しそうに会長連れてったよー?」」
書記「ん、ふたり…付き合ってる」
「「「「えっ……!!!?」」」」
何故か書記は知ってる、2人の恋愛事情。
*翌日
三鷹「くそ、腰痛ぇ…手加減しろよ」
英田「あ?久しぶりだったんだぜ?加減なんかできるか。それに途中からお前だってノってた、」
三鷹「うるさいだまれ」
英田「照れんなよ」
三鷹「誰が」
fin.
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