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▼ 球技大会

「俺がいなくてもどうにかして進めちゃえばいいのに、なんでわざわざ呼びに来たの……おれ、眠いんだけど」
「んなこと言われたって、こっちでどうしようもなくなったんだからしょうがねぇだろ。海藤が一度わがまま言い出したら止まらないんだって」
「うわあ……俺なおさら行きたくない」
「どうしたって連れていくからな」
「えええええ」

 抵抗を試みるも、会長との体格差にどんどん引きずられてしまう。いっそ座り込んでしまおうか、と考えたところで会長がこちらを向いた。

「お姫様抱っこでもしてやろうか」
「え」
「何をしてでも連れて行くっつったろ」
「いや、そこまでする?」
「こっちだって進行困ってんだよ。それくらい安いもんだ」

 会長がとてもいい笑顔を見せた。

「とか言いつつ、役得狙ってるでしょ」
「うるせえな! おら、自分で歩くか抱き上げられるか選べ」
「……ちなみに、選ばない場合は?」
「問答無用で抱き上げる」
「歩きまーす」
「チッ」
「?!」

 舌打ちひどい。
 仮に抱き上げられたまま体育館に行ったら、不特定多数の生徒に見られるわけでしょ? なんて羞恥プレイ。
 ていうか最近やっと落ち着いたのに、また親衛隊煽るようなことしたくないし。
 手を引かれたまま体育館の入口に着いた。

「まあそんなことより早く入れ。みんな待ってる」

 そう言われて体育館の扉に手を掛けたとき、会長があ、と声を漏らした。

「忘れてた」
「ん?」

 会長を振り返った瞬間に、何かが唇に触れた。

「迷惑料、もらっとくわ。じゃあな、がんばれよ」

 そういい笑顔で言った会長は、足早に体育館に消えていった。

「……えええ」

 申し訳程度に残っていたやる気が持っていかれた。





 結論から言おう。勝った。勝ってしまった。
 何故か試合は1回戦、2回戦と順調に勝ち進んで行き、気が付けば次は準々決勝。どうしてこうなった。
 いや、バスケ部2人がとてもいい動きをしてくれたんだ。おかげで俺はほぼパスを出すだけで済んでいる。さすがバスケ部。うん。
 海藤といえば、やりたいと言っただけあってバスケ部並に動いていた。シュートは全く決まっていないが。しかしいい具合に相手を邪魔するように動くため、相手もやりにくそうだった。
 本当はただ無駄にコート内を動き回っているだけなのだけれども。

「はるかー! 次も勝とうな!」
「そうだねー」

 うんうん、いい笑顔だ。しかしこいつ、疲れないのか。俺はほとんど動いていないのに、体育館の熱気に既に疲れ始めている。
 1回戦勝ってから教室に戻れないせいもあるかもしれない。そういえばバスケ部2人も、海藤の体力だけは褒めていた。

「ねぇ、俺次の試合は休みたいんだけど」
「何言ってんだよ!はるかがいなきゃ人数足りないだろ!」
「いや、補欠いるし」
「そんなことしたら、悠が出られないだろ!」
「むしろ本メン入れてあげようよ」

 俺と海藤、そして本メンのバスケ部2人が出ずっぱりで、残り1枠に残りの3人が交代で入っている状況だ。
 いくら一試合が10分とはいえ、疲れて来るはずなのだが。バスケ部2人はともかく、海藤恐るべし。
 うんざりしていると隣にいたクラスメイトが俺の顔を覗いてきた。

「六合はやる気なさすぎだろ」

 苦笑まじりに言われたが、現にやる気がないのだ。

「海藤、あのさ」
「名前で呼べよ!」
「おお……紗弥」
「おう!」
「ちょっとメンバーチェンジしよう。俺もここまで残るとは思ってなかったから疲れてきたし」
「俺は出るぞ!」
「おう、頼むな。で、他4人もチェンジしてもいいだろ?」
「悠は出るよな!」
「おれもつかれたなあ」
「ほら、六合もこう言ってるし……」
「いやだ! 悠と一緒に試合出るんだ!!」

 どうにか説得を試みるものの、相変わらず話が通じない。

「えー、いいじゃん、次くらい休ませてよ……次の試合勝ったら出るからさぁ」

 壁にもたれながら座り込み、やる気がないことをアピールしてみる。

「紗弥、ほら、六合が勝ったら出てくれるって言ってんだし!」
「友達に無理強いはよくないぜ?」

 海藤がうぐっと吃った。

「勝てばいいだけじゃん! な!」
「お、おう」
「よし、じゃあ準々は俺ら休むからお前ら頼むな」

 クラスメイトがいい笑顔で試合に出るチームメイトに声をかければ、様々な返事が返ってきた。

「おー」
「はーい」
「任せろ!」
「はるか! 約束だからな!!」
「はいはい行くよー」

 ほか4人に引っ張られながら、海藤はコートに入って行った。

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