GAME MAKE | ナノ


▼ 02

 顔が赤いとからかわれるのが嫌で、顔の火照りが治まるまで組んだ腕に顔を埋めた。そういえば顔を伏せてからしばらく経つけど、あとどのくらいで授業が終わるのだろうか。
 ふと顔を上げると、タイミングを計っていたのか、会長がそういえば、と切り出した。

「っ、なに」
「そんなに構えるなよ。取って食おうってわけじゃねえんだから」
「信じられるか」

 苦笑いしながら言われたが、会長には前科がある。苦い顔をして上半身だけ少し距離をとった。

「前に会ったときのこと言ってんのか? あんなのただのスキンシップだろ?」
「ご丁寧に舌までいれてきたのが?」
「……まあちょっとはやりすぎた気もするが……しょうがないだろ、久しぶりに会えて嬉しくて、歯止めが効かなかったんだ」

 ジト目で見返せば、降参とばかりに手を挙げた。

「悪い悪い、やりすぎたな。でも反省はしない」
「おい」
「てかシャンプーか? すげえいい匂いしたんだけど」
「なに、会長は変態なの?」
「……んな自覚ねえけど。いやでも実際いい匂いしたし、今日もいい匂いするよな」
「ちょ、」

 少し離れただけの距離は簡単に詰められてしまい、すぐそばに会長の顔が迫った。
 首元に顔を近づけてすんと匂いを嗅いで「柑橘系のボディソープ……いや、香水か?」とか呟いているのなんて聞こえない。そんなの聞こえない。
 腕を突っ張って会長の肩をぐいっと押しやって椅子に座り直した。

「はあ……会長はすぐ人のパーソナルスペースに侵入してくるから油断できない」
「へえ? でもこの距離はいいと?」

 そう言われて改めて横を見ると、下手をすれば肩と肩が触れてしまいそうな距離だった。

「……う"、ん、まあ、この前みたいに抱き込まれるのに比べれば……」
「そんな苦渋の選択みたいな顔すんなよ」

 会長は不服そうな顔をしたが、会長みたいにオープンに人と触れ合うのが苦手なんだよ、察しろ。

「……あ。それで、」
「何がどうなってそれで、に繋がるのかわからないんだけど」
「さっきそういえばって言っただろ。お前、本当に勉強しなくていいのか?」
「教科書は持ってきた」
「うん。ん? ノートは?」
「ルーズリーフなら」

 鞄を漁って教科書とバインダーを取り出した。ルーズリーフには計算か雑記しか書いていない。必要なメモは教科書に直接書き込む派だ。そのためルーズリーフは全科目一つのバインダーにまとまっている。

「ノートとらないのか?」
「提出しなきゃいけない科目くらいかな」
「……どうやって勉強してんだ?」
「教科書読んでる」
「……もしかしてそれだけ、か?」
「うん」
「はあ? まじかよ……」

 出した教科書をぱらぱらと捲っていると、会長が覗き込んできた。

「……おお、書き込みすげえ……なるほど、これなら教科書だけでも勉強できそうだな」

 感歎の声が上がったがしかし、俺はノートを見直して問題集やる派だからなあと呟く声が聞こえた。
 ノートといえば今日の一限古典だったな、と思い出して再度鞄を漁る。出てきたノートを適当に開くと古文のページだった。
 古典は漢文も古文も覚える単語が多くて勉強中はとても眠くなる。授業中は書き込むことが多いから寝る暇はないのだけれども。

「すっげ……古文でこんなきれいにノート取れるやつ初めて見た」
「……そう?」
「ああ。書き込んでるのに見やすい」

 二年生に比べたら一年生はまだ簡単な文しか出てこないだろうが、褒められるのは嬉しい。

「……ありがと」
「おう。それに字がきれいなのもノートが見やすい要因だろうな」
「……」
「……どうした? 変なこと言ったか?」

 嬉しいのだが、こんなに言われると恥ずかしくなってくる。急に居心地が悪くなって口を閉ざした。

「……六合は肌が白いから、赤くなるとすぐにわかるな」
「へ!?」
「表情がころころ変わるのもかわいいな」

 なんでこんなに甘い雰囲気になっているんだよ。
 面映くて開いていた教科書に顔を埋めた。
 会長はそんな俺の心情を見透かしているようにふっと笑い、俺の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
 これは顔を上げたら負けだ。なんとなくそんな気がして教科書を読むふりをして顔を俯かせた。

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