GAME MAKE | ナノ


▼ 03

 風紀委員長は再び俺の唇に自分のソレをくっつけた。手をついて抵抗しようとしたが、いつの間にか委員長に両手を掴まれていてできなかった。

「……っ、ふ」

 苦しくなり、なんとか委員長の腕を払おうとするが体格が自分より大きい委員長に押さえ込まれてしまう。
 ついに耐え切れなくなり、息継ぎをしようと反射的に口が開くと、それを待ってましたとばかりに委員長の舌が咥内に侵入してきた。
 自然と口づけが深くなる。

「んん! ふ、っ…」

 委員長は片手で俺の両腕を抑え、もう片方の手で俺の顔を上に向けさせた。また、俺が口を閉じようとすれば閉じられないように歯の間に指を滑り込ませてくる。
 体勢的にもかなり苦しくなる。

「っ、ふ……ぅ、ん」

 抑えきれずに声が漏れた。
 しばらくして満足したのか、委員長はやっと口を離した。

「お前のその顔……すっごくエロいな」
「っ……ふ、ざけんな……!」

 肩で息をしている俺とは違い、平気な顔でこちらを見ている委員長を睨みつける。その顔は心なしか満足そうだった。

「別にふざけてない。俺は気に入ったモノにはキスすんだよ」
「最っ悪……! 紅蛾のくせに!」
「そんな大声出すな。人に気づかれるぞ」

 未だ、にやにやしながら委員長が言う。

「やだ何その笑顔……くそ、風紀委員長が一般生徒を襲ったって言い触らしてやる……」
「それは……まあ困るな」
「……まあって何」
「襲ったってもキスしただけだし。てか、俺キス魔だし?」
「…………そんなカミングアウトいらんわ!」

 委員長がそう言った数秒後、特別塔に俺の声が響いた。





 とりあえずあの風紀委員長は、腹を殴って沈めておいた。思いっきり、しかも鳩尾に入れたからしばらくは起きないだろう。
 その後、当初の予定通り保健室で昼寝をした。
 目が覚めたのは今日最後の授業が終わる5分前だった。ひとつ大きく伸びをしてベッドから降りる。午後の授業に出られなかったが、現文と数学だったから問題ないだろう。多分。
 教室に着いて中を見回すと、終業のチャイムが鳴ったばかりだというのに既に数人しか残っていなかった。

「あ。ハル、お帰り。授業終わったよ?」
「知ってる。鞄取りに来ただけ。……あ、茂樹、先生何か言ってた?」

 終業を告げるチャイムは教室に向かう廊下で聞いたし。

「いや言ってなかったぜ」
「ん、さんきゅ」

 茂樹がどういたしまして、と少しおちゃらけて返事をした、数秒後。

「あ」
「……何。ものすっごく嫌な感じがするんだけど」
「えっと、金曜日の午後、丸々使って新入生歓迎会するって……全員参加で」
「……は? 金曜って今週の? てか今さら? もうすぐ7月じゃん。体育祭も終わったし、ばかなの?」

 なんで今更。確かに今年は歓迎会というようなものはなく、ガイダンスだけだったが。

「俺が知るか。生徒会に聞けよ」
「馬鹿。俺が聞けるわけ……なくもないか」
「いやいや、関わりないじゃんか」

 茂樹が真面目に突っ込んできたが、本当の話、先程会長の親衛隊と仲良くなったではないか。

「新井先輩に聞いてみようか」
「……新井?」
「なに、茂樹知ってんの?」

 そう聞くと茂樹の顔が引き攣った。

「知ってるも何も、会長の親衛隊隊長の新井真樹、だろ?」
「そうそう。友達になった」
「は? 隊長と?」
「うん。何か問題でもあんの?」

 そう言うと茂樹が頬を引き攣らせた。

「問題も何も、超過激派じゃん!」
「へえ」
「軽っ!」
「だって俺のファンだって言ったし」

 正しくはウルフの、だが。茂樹がいるので余計なことは言わないでおこう。

「ファン? まさか、顔見られたの?!」
「あー……うん」
「! ハルのおバカ!」

 きょとん。何もそんなに言わなくてもいいじゃんか。

「おバカって、何だよいきなり」
「ぁああ! せっかくの俺と紀輔だけの特権が!!」
「特権?」
「は!? ……いや、こっちのことだから!」
「……?」
「とにかく! 駄目なものは駄目!」

 ……あれだよね、茂樹、妹を心配する兄みたい。何をそんなに必死になってんの。意味わかんねえや。誰か翻訳して。

「おれは外国人じゃねえよ!」
「……やっぱり茂樹、エスパーだ」
「だから口に出てんだよ!」
「仲良いね、お二人さん」

 にこにこしながら、帰り支度を整えた紀輔が来た。

「で? 何でバレたの?」

 え……っと、その笑顔怖いです紀輔さん。何をそんなに怒ってんの?!
 てかやっぱりウルフってバレたのヤバいっすかね? ヤバいよねわかってますでもあっちもなんだか確信持ってたけどこういうときはどう弁解したら!?

「まさか、言い訳なんて考えてるわけじゃないよねえ……?」
「えっと……」
「口に出てたけど?」

 あああ! だからなんで出てんだよ!? 口よ塞がれもう喋んな!

「……念じてるのまで声に出すとか、もうバカとしか言いようがないよね」
「もういいです俺がバカでした色々すみません」
「分かればいいんだよ、分かれば」

 うわー、紀輔の鬼! くそ、茂樹少しは助けろよ……。

「茂樹の鬼畜!」
「はあ!?」
「よし、帰ろ」

 うんうん、叫ぶとスッキリする。茂樹って八つ当たりするのにちょうどいい人材だね助かるよありがとう。
 幾分かすっきりした俺は軽く鼻歌を歌いながら寮へと通じる廊下を進んだ。

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