▼ 02
「……えーと? 委員長、フラれた?」
「馬鹿言うな。告ってすらない」
「じゃあ何してたの?」
「襲ってた」
ええ、と嫌な顔をすれば、委員長はくつくつと笑った。
「ああいうタイプは、からかうと楽しい」
「さいですか」
「……突っこめよ。真に受けんな。風紀から注意していたんだ」
「注意?」
そう聞き返せば、委員長はため息を吐き説明してくれた。
どうやら副会長以下生徒会の親衛隊が少なからず動いているらしい。しかも最近は活発化し始めており、制裁が起こる前に自分の親衛隊に釘を打ってほしいと、副会長を呼び出したそうだ。
「へぇ……風紀も大変なんだ、ご苦労様です」
「絶対俺のこと労ってないだろ」
「あは、わかる? 俺、委員長からかうの好きなんすよ」
「お前な……」
ふふん、と少し勝ち誇ったように笑って見せると、委員長は何かを諦めたようにため息をついた。
「ところで、どうしてこんなところにいる?」
「んー……別に?」
「お前、好き好んで真昼間に外に出ないだろ」
しかも今日は快晴だ、と空を見上げながら言う委員長に逃す気はないことを悟る。
「……む。じゃあ、強いて言うなら、あれだよ。お友達作り」
「は?」
「会長の親衛隊長と副隊長と友達になりました。いえい」
右手でピースをして、委員長に向かって突き出したら眉を寄せられた。
「おいおい、大丈夫なのか?」
「もちろん。なんか、俺のファンだったみたいよ?」
そう言うとますます委員長の眉間にシワが増えた。
「…………」
「…………」
無言で説明を求められるのってさ、なんか怖いよね。
ということで、有無を言わさず委員長に説明させられました。
ついさっきのこととは言え、あったことを説明するのって面倒臭い。途中省略しようとしたら委員長に全て吐けと言われた。一通り話し終え、委員長の顔を覗くと、ぽかんとした表情を浮かべていた。
「委員長?」
「……や、マジ?」
「いえーす」
「そうか……まあ、よかった、な……?」
首を傾げながら未だにに腑に落ちない様子だが、一応賛成してくれた。
「それにしても、よくわかったな。髪色違うと随分雰囲気変わるのに」
「ねー。一発でバレたよ」
俺は最初気づかなかったのに、と委員長が呟いたので、委員長の鈍ちん、と言いってみたら。
「それはアイツらに言ってやれ」
「えぇー……絡みたくない面倒臭い。それに委員長にバレたのだって事故だし」
「……あれはお前が悪い」
そう言われて頬を膨らませると委員長に笑われた。
「なに」
「お前って見た目カッコイイ系だけど、仕草とか笑顔は可愛いよな」
さらりと頬を撫でられた。
「…………委員長のスケベ」
「今の間はなんだ」
「びっくりしたんですー。委員長にそんな風に思われていたなんて! って」
「いや、俺だけじゃないと思うが」
言うや否や委員長は俺との距離を縮めた。俺が後ろに一歩下がるより早く、委員長に手を取られる。
「……なんすか」
「可愛いなーと思って」
「どうしよう鳥肌が立った」
空いている手で自身を摩ると、呆れられた。
「……それは、本人の前で言う台詞じゃねえだろ……雰囲気ぶち壊しやがって」
「え、なんかする雰囲気だった? あ、この前のリベンジとか?」
「……やってやろうか」
にやりと口角を上げて言う委員長に、反射的に身が引けた。
「逃げるなよ」
「え。ちょ、待っ……んむ!?」
委員長の顔が近づいてきたと思ったら、いきなり口づけされ、唇を軽く啄まれる。
「っ、はあ……やっぱ委員長、変態じゃん」
「お前……今の状況でよくそんなこと言えるな」
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