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▼ 再び

 保健室に向かうために廊下を歩いていたら、向こうから人影がふたつ。

「ちょうどいいところにいた」

 いつぞやの二人組に会いました。





 またしても既視感。

「……何でまた、こんな人気の無いところに連れて来るの」
「何言ってんの?」
「人気が無いからわざわざ連れて来たに決まってるでしょ」
 連れられて来たのは、この前と同じ、体育館裏。相変わらず俺ら以外の人気はない。

「それはそれは、ご足労ですねえ。……さてと、俺はそろそろ戻りますね」

 そう言って歩き出そうとしたら黒髪くんに腕を掴まれた。

「逃がさないよ」
「……逃げる? まさか。俺はこれから保健室に行くんだよ」

 そう言うと、二人はきょとんとして固まった。
 えぇ、何なの。腕掴んだまま固まんないでよ、動けないじゃん。
 そう思いながら腕を上下に振ると、黒髪くんがはっとしたように顔を上げた。

「前に忠告したよね?! なのに、何でまだ海藤紗弥と連んでんの!」
「えー、だからそれ、不可抗力だって。俺好きで一緒にるんじゃないんだけど」
「そんな言い訳、信じるわけないでしょ」
「そこは信じようよ、俺達の仲じゃん」
「どんな仲だよ!」
「……友紀、ペース持ってかれてる」

 ヒートアップする俺らの会話に、ダークブラウンくんが制止をかけた。

「……ごほん。と、とにかく、今日という今日は覚悟しなよ!」
「ふふふ。君に、とっておきのお友達を連れて来たんだ」

 ダークブラウンくんがそう言うや否や大柄な男子生徒が数人、後ろの茂みから出てきた。

「とりあえず、ぼこぼこにして! その後は好きにしていいから」

 ダークブラウンくんの言葉に男たちが下卑た笑みを浮かべ、一歩近づいて来た。
 黒髪くんたちは少し離れた場所に移動した。どうやら様子を見ているらしい。

「じゃあ、遠慮なくいくぜ?」
「俺溜まってたんだ」

 男たちはさらに一歩近づいた。
 しかし、誰も気づかない。この場に似合わぬ笑みを浮かべている、眼前の人物に。

「あはは、肩なんて揺らしちゃって! 怖いの?」

 黒髪くんが俯いている俺を見て言った。

「ひゅー。カワイイねぇ。すぐに終わらせて、イイことしょうぜ」

 一番近くにいた男が俺に手を伸ばし――。
 ぱしっ。

「あ?」

 俺が顔を俯かせたままその手を叩くと、男の間抜けな声が聞こえた。男たちが俺を睨みつける。

「……てめぇ、いい度胸じゃねぇか。俺らを相手に抵抗したこと、後悔させてやる」

 それを聞いた俺はついに――。

「ふ……っ、あはははは!」

 大爆笑した。
 周りは何が何だかわからない、といった表情を顔に張り付けている。それがさらに俺に笑わせる。

「ふ、くく……なにその間抜け面……!」

 俺がそう言って数秒後、やっと自分達が笑われていると気づいた男たちが、顔を赤くして一斉に殴りかかってきた。それを軽く躱して足を払う。
「ふふ、遅い遅い。あー、久しぶりにこんな笑った。お腹いたい」

 未だに口元が笑ってるのは見逃してほしい。
 だってさ、いくら俺が学園内で喧嘩したことがないっていったって、五人って……どう考えても少ないよ?

「ねぇ……俺って、そんなに弱く見えんの?」
「……は?」
「だって、五人しかいないってことは、それで俺を余裕で潰せるって思ったからでしょ?」
「っ……そ、ういうのは、コイツらに勝ってから言いなよ!」

 黒髪くんが顔を真っ赤にして叫ぶと、男たちが俺を取り囲んだ。

「負け犬の遠吠えはまだ早いんじゃないのか、おちびさん?」
「生意気な口、すぐに利けなくしてやるよ」
「そっちこそ、後で醜態晒すことになっても知らないよ?」
「なん……ッ?!」

 好戦的に睨みつけると、相手が息を呑んだ。

「俺をターゲットにしたこと……後悔させてあげる」

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