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▼ 実行

 食事を終え、店内は『rivalry』との『ショー』を前に意気込んでいた。そこに突然、店のドアを思い切り開ける音が響く。

「大変だ! 今、そこにっ……あ、総長! お久しぶりです!」
「オウルか。どうした」
「あ! 『rivalry』が、来ました!」

 俺の問いの返答に店内がざわつく。そして間髪入れずに再び扉が開け放たれた。

「――よお、ウルフ。久しぶりだなァ」
「紅蛾……お前らから来てくれるなんて思ってもみなかったよ。そんなに寂しかったのか?」

 鼻で笑って見せると、紅蛾の顔が歪んだ。コイツは気に入らないことがあるとすぐに顔を歪める癖がある。

「寂しかったのはお前のほうじゃねえのか」
「あはは、俺が? まさか! これでも毎日満喫してるんだぜ。それより、せっかく来てくれたんだし。早速始めようか?」

 そう言って席を立ち、そのまま店を出れば、皆もついて店を出てきた。

「お前からなんて珍しいんじゃねえの? ご要望とかはあんのか?」
「……場所はすぐそこの工場跡地。サシでやりたい」
「はいはい。相変わらず血気盛んなようで」
「お前に言われたかねえよ」

 大人しく隣を歩く紅蛾をちらりと見遣れば、目が合った。
「酷いなあ、紅ちゃん」
「っ、てめぇ……その名で呼ぶなと何度も言ってんだろ」
「えぇ、つれないなあ。かわいいのに……べ・に・ちゃん?」
「おい!」

 間一髪。言葉とともに出された紅蛾の拳を避けるとぶん、と空気を切るような音が耳を掠めた。

「危なッ!」
「自業自得だ!」
「やだなあ、すぐ熱くなりすぎると嫌われるよ? ……俺とかに」
「……てめぇな」
「あははは、もうすぐ着くから」

 言いながら歩を進める。工場跡地はもう見えている。
 そこは十年程前に潰れた自動車部品の製造工場だ。工場主の不正取引がバレて、倒産したらしい。
 敷地内に足を踏み入れと、辺りは薄暗かった。明かりは街からの微光と足元を微かに照らす街灯のみだ。

 互いに対峙し、睨み合う。

「……さあ、ショーの開演だ!」

 俺の言葉を合図に両チームがぶつかる。
 俺らのチームは十一人の、人数で言ったら最小だがどいつもこいつも喧嘩が強い精鋭の集まりで、この辺りじゃあ最強だ。
 ちなみにNo.2は『hound』――会長たちのチームで、『rivalry』はNo.3。
 『hound』も『rivalry』も人数が多く倒すのに時間がかかる。その上どちらもしつこい。特に『hound』が。喧嘩が終わったあとも、やたらとちょっかいを出してきたり付いて来たり、何なんだ。
 ……話がズレたが。
 『rivalry』の主戦力は総長の紅蛾、副総長の紫猿、黒猫だ。情報屋の青狼も厄介だったりする。
 俺たちのチームは特に幹部とかは決めてないが、よくカフェに顔を出すラビーやクロウ、フォックス辺りがそれに当たる。
 事実、こういった喧嘩でよく動くし、特に楽しんでいる。

「ホークは自称俺の右腕だしな」
「何か言った?」
「……喧嘩強いよな、お前も」

 普段はそうでもないのに、なんでチームにいるときはこんなに素っ気ないかなあ。クール決め込んでいるっていうか、腹黒いっていうか、うーん。

「ウルフ、何か俺に対して失礼なこと考えてない?」
「…………まさか」
「あはは、今の間は何?」
「……気にすんな」

 苦笑いを浮かべながら前を向くとちょうど、クロウがあっちの幹部を倒したところだった。他の奴らも相手を倒していく。それを見て自然と口角が上がる。

「それにしても、俺抜きで随分楽しそうじゃん?」

 独り言のように呟いたつもりだったが、それを聞いたフォックスがこちらを振り向いた。その後ろに影が現れる。

「あ、紅蛾」
「え、うわっ、ちょ……!」

 間一髪、フォックスは紅蛾の拳を避けたが足を払われ地面に倒れ込んだ。

「テメェの相手は俺だろ。最後尾にいないで早くこいよ」
「あはは、待ってたよ紅蛾。どう、俺のチーム。強いでしょ?」
「かもな」
「……素直じゃないねえ。少し息上がってるけど?」
「うるせえ。さっさとこいよ」

 紅蛾がにやりと笑う。それを聞いたホークが一歩前に出た。

「俺を差し置いて話を進めないでくれる?」
「心配するな。お前の相手は――」
「僕ですよ」

 どこから現れたのか、いつの間にか紫猿が紅蛾の隣にいた。

「そんじゃ、俺らも始めようか」

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