▼ 04
「でも『rivalry』がいるのは知らなかった」
『rivalry』は学園の風紀委員会だ。総長の紅蛾は俺の正体を知っているはずだが、未だ学園での接触はない。
できれば会いたくない集団だし、会わないなら会わないで嬉しいのだが。
「あ、そういえばさっき、『rivalry』に会ったよ。今夜遊ぼう、だって」
「……」
「えー、総長なんでがっかりするのー? イヤだったあ?」
「いや、別にいいけど……なんとなく」
「そっかぁ……じゃあ思いっきり暴れちゃおう!」
え、何でそういう方向行くの、おかしくない? 別にいいけど。
まあ相手は決まったし、まずは。
「タカさん、ご飯!」
「はいはい。そういうと思って、あらかじめ作っておきました」
「やった!」
そう言ったタカさんは店の奥に入って行った。そして戻って来たときには両手にたくさんの料理が盛られた皿。
「まだ奥にありますから、遠慮せずに食べてください」
「マジで!? じゃあ、いただきます!」
いただきますとごちそうさまは大切だよね。
ていうか、このオムライスうま! ケチャップ加減がちょうどいい。ん、から揚げも美味しい。あ、あっちのミートソースも食べたい。
「ラビー、ミートソースとって」
「はーい」
「ウルフ、そんなに頬張らなくても料理は逃げないよ」
「総長、いつもおいしそうに食べますよね」
「わかるー! お腹いっぱいでも食べたくなる!」
「それはラビーだけじゃ……」
頬張りながら三人の会話を聞く。おいしそうに、って美味しいんだからそうなるだろ、普通。
「……んぐ。三人は食べないの? 俺食べちゃうよ?」
「ウルフならやりかねないな……じゃあ俺らもいただこうか」
「さんせー!」
三人が席に座り、箸を持ったと同時に入り口のドアが勢いよく開いた。
「うまそうな匂いがすると思えば、総長じゃねえか」
「マジで?!」
「まいすうぃーとはにー! 会いたかったよ!!」
「おー、総長!」
「久しぶりじゃーん。元気してた?」
応えるようにフォークを持っていた手を挙げ、手招きをする。
「もち。早く座れよ」
「ハニー、無視はよしてくれ!」
「みんな、早く食べないと総長がぜーんぶ食べちゃうよ」
俺ってそんなに大食らい? いやいや、普通でしょ。タカさんの料理が美味しいだけだって。みんなもそれなりに食べるじゃん。
「ねえハニー」
「いい加減うるさい」
「ぐ……! 久しぶりの愛!!」
腹に一発。蹴りを入れたが……そうだコイツ、俺に対してだけMだった。これじゃあコイツが喜ぶだけだ。
思い出し、食事を再開するが。
「ここでまさか、いや予想通りの放置プレイ! さすが俺のハ、っにぐし」
何か変な声が聞こえ、変た……げふんげふん、フォックスのほうを見ると何故か俺以外の全員に足蹴にされていた。
タカさんまでそっちに加わっちゃって誰が止めるんだよ。
「……えーと、大丈夫?」
ちょっとかわいそうになってフォックスに声をかけると、勢い良く顔を上げて目を輝かせた。
「ハニーが俺の心配をしてくれるなんて……!」
「……うん。みんな、そのままそいつ放置していいよ」
声をかけるとみんながぞろぞろと椅子に座る。そそくさと戻ったタカさんは、奥から更に四枚の大皿を持って来た。
フォックスも起き上がって席に座り食べ始める。
「……さて、だいたい揃ったしいいか」
目配せをするとホークが頷き返した。それを確認して立ち上がり、不敵に笑ってみせる。
「野郎共、今日は久々に本格的に暴れるぜ! 相手は『rivalry』、不足はないだろう!?」
俺の言葉に一瞬静まったが、次の瞬間咆哮のような叫び声が沸き上がった。
――さあ、ショーの開演まであと少し。
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