チシドク - clap | ナノ




第一話


俺は今期生徒会長の桐生劉生だ。因みに2年。
ここ藍原学園は小中高一貫の男子校で、俺はここに高校からの入学だが、その年の人気投票という名の役員選出選挙で見事一位になり、会長を務めることになった。
藍原学園への途中入学は、学年が上がる毎に難しくなるらしいが、全国模試で1位の俺には別段難しくはなかった。
が、今はそれよりも。

学園に台風が来た。

わかる人にはわかると思うが、台風とはある意味王道のトラブルメーカーのことだ。文字通り天気が荒れて、だったらどんなに良かったことか。
台風のように周りを巻き込む彼ーー姫路勇気がこの学園にやって来たのは6月の下旬。新入生歓迎会や体育祭といった大きな行事が一段落ついた頃だ。
姫路は、良くいえば真っ直ぐで天真爛漫だった。
心のどこかに悩みを抱えていた生徒たちの目にはキレイな光に見えたのだろう。姫路と接触した者はそれに惹かれ、一緒にいるようになった。
ただそれだけならよかったのだが、あろう事か姫路に惹かれたのは学園の有名人。あの巫山戯たランキングの上位者が殆どを占めていた。生徒会役員も例外ではなく、副会長と書記と双子庶務がオちた。
そのため、親衛隊が荒れた。今まで特別を作らなかった彼らに愕然とし、姫路に嫉妬したのだ。
しかし姫路の容姿は天使。クオーターらしく金髪碧眼で顔も中性的。ランキングにも上位に入るであろうその容貌は一般生徒にも人気があり、親衛隊も迂闊には手を出す事ができずにぴりぴりしている。

ああ、会計も最初姫路にちょっかいを出したりしていたが、すぐに飽きて普通に生徒会室に来て仕事をしている。
だから、副会長たちが来なくなってからもなんとか書類を回せているのだがーー。
「ーー今日で、2週間か…」
ぼそりと口から出た言葉は、隣で作業をしている会計ーー清治夕綺に聞こえたらしく、清治が顔を上げた。
清治は俺に次いで仕事が早く、加えて面倒くさい経理が得意ということでかなり助かっている。こいつがいなかったら一週間も保たなかったかも知れない。
「もうすぐテストだし、その後夏休みに入るから少しは仕事が減るんじゃなあい?」
苦笑いしながら言う清治の目元には薄っすらと隈がある。大きな行事が終わったといっても元々6人で回していた仕事を2人で回すにはやはり無理がある。
「テストの後はすぐに球技大会があるぜ」
「…あっちゃー。忘れてた」
俺もだが、最近少し寝不足気味だった。






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