暁ばかり憂きものは

!ATTENTION!
*腐向け(朝菊/smgn/英×日)
*雰囲気
*菊さんの独白ですが事後です。ヤってる。

セフレsmgnちゃんの小ネタSS



玄関の戸が閉まる音で目が覚めた。
静まり返った往来を抜けて足音が遠ざかる。
はっと起き上がると、昨晩閨を共にした彼はもう出て行った後だった。
……今日も行ってしまった。菊はなさけない思いで胸の前にシーツをかき寄せた。決して広くはない寝室がやけに寒々として見える。
素肌にまとわりつく気怠い熱がただ虚しかった。
酩酊した思考にすべてを委ねて、水のように浴びたアルコールを言い訳に彼を誘う。じっさい一杯しか飲んでいない安い酒は、そう簡単には菊の記憶を飛ばしてはくれなかった。
もうずっと、こんなことを続けている。

こうなるのが分かっているのに、律儀にここに足を運ぶ彼。いつかの約束の通り、公式訪問や会議のあと、そしてこの国の地を踏めば必ず。
「…ばかなひと」
刹那のあまい喜びも、宵が過ぎ去れば空虚な胸の痛みだけを残していく。
もう、暁だ。

「有明の、」
未だぬくもりの残るシーツにそっと手を重ね、菊はいびつに微笑んだ。
白み始めた空の端っこに、引き留められた月が宙ぶらりんに冷たい光を宿していた。






有明のつれなくみえし別れより 
暁ばかり憂きものはなし

─古今・恋六二五─

「暁ばかり憂きものは」緋鞠(みぃな)
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