「自由になればいいのにね。りんもはるも」
最初に仕掛けたのは私。それはふたりの間でNGワード。だけどもうどうでもいいや。りんは血相を変えすかさず私に掴みかかった。フローリングに押し倒しギザギザの歯をむきだしに威嚇する。いっそのこと噛みついてくれればいいのに。
「かわいそうなりんちゃん」
「黙れ」
「なにをそんなにおびえているの?」
「黙れ!」
次の瞬間、ルビーみたいな目から大粒のなみだがこぼれた。それは重力にしたがって私のほっぺにたくさん落ちてきた。ぽたぽた、ぽた。おやゆびでそっと目元をぬぐってやる。なんて顔、してるの。
「おまえもおれからはなれていくのか。はるかのところに行くのか」
「行かないよ。ずっとりんといるよ」
「だったらそんなこと言うな。もう二度と、言うな」
「うん、ごめんね」
りんの首に腕をまわしてだきしめた。消えそうだから。このまま干からびてしまいそうだから。気づかれないよう、私もちいさく涙を啜った。ああ、報われない。
この涙はひっこみそうにもないから