蒼黒の奏で | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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取り換えっこされて
今日はローさんの使う日用品やら、なにやらを購入してきた。
店の中でのローさんはまるで子供みたいに目を輝かせて

「これはなんだ?」

とか、

「こんなもの何に使うんだ?」

などと、とにかく質問してきた。

そのたびに受け答えしたせいか、家に帰ってきた今はものすごく疲労感に襲われている。大きなホネの形をしたクッションに抱きついて、はぁっとため息をついた。

そんなあたしをよそに、ローさんときたら帰り道にあたしの行きつけの古本屋さんに寄って買ってきた本を、これまた買ってきたユニクロのスウェットを着て、しかも、あたしのお気に入りのビースクッションの上で寝転んで読んでいる。

なんとも、自由人。

まぁ、そこが彼の良いところでもあるんだろうな…と、プラス思考で考えてみる。

時計を見ればなんと、6時半過ぎ。
昼過ぎから買い物に出かけたから仕方のないことか。

「ローさん。晩御飯何にします?」

「…。」

本に熱中ですか。

ローさんの読んでる本は医学書関係の本で文字ばっかりの本である。よく、こんなものが読めたものだなぁと思う。

とてもじゃないけどあたしには無理だ。

無反応ってことは何でもいいのかな?

疲れた体を起こしてキッチンへと向かった。
冷蔵庫の中には今日買ってきた食品と買い置きのお酒でいっぱいだった。

…ハンバーグにしよう。

ハンバーグが食べたいという衝動に駆られた。
そんな単純な理由で今日の夕食は決定。
朝食を出した時も大丈夫だったし、味はあたし好みでいいかな。
あたしも最近は食事という食事も仕事が忙しくて摂れていなかったから丁度いいだろう。

そして、丁度夕食が出来上がりテーブルへ運ぼうとした時だった。

「すげぇ、良いニオイだな。」

ローさんが本を読むのをやめてキッチンへと顔を出しにきた。

おっ、これはもしかして、運ぶのでも手伝ってくれるのかな…?
わー、ローさんって優しいんだな〜。

「ローさん手伝っt」

「おぉ〜、できたかー。手伝うことなんてなくなっちまったな。」

「はっ!そういえば、ものすごくタイミング良すぎですね。」

「ククッ、狙ってたんだよ。」

そのままローさんはトイレへと消えた。

…前言撤回。
彼はとんでもないドS人間でした。

ローさんが帰ってきてリビングのテーブルに二人で向かい合ってご飯を食べる。

そこで重要なことを思い出した。

明日からあたしは出勤しなければならないんだっ!!

ローさんを一人でここに置いていかなければならないのか…?

いやいやいや、
いくらなんでもそれは無理か。

かと言って、会社へ連れていくわけにもいかないし…。

「さっきから、お前はなんて顔してんだよ。」

ハンバーグをほおばりながらローさんが尋ねてくる。

「お前ではなく澪です。」

「チッ、んなの別にいいだろう。」

「よくないです。」

「めんどくせー。」

「めんどくさいなんて言わないでください。
 ローさん、あの、あたし明日から仕事に行かないといけないんです。」

「…仕事?」

「はい、あたし一応出版社で働いていて…、」

「出版社?」

「雑誌とか作ってるんです。あ、ちなみに、こんなのです。」

あたしは本棚に置いてあった一冊の雑誌を取り出した。

ローさんに手渡すと、彼はパラパラーっとページをめくった。

「それで…、日中の間は一人でいるようになるんですけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫というのはどういう意味だ。」

「…犯罪とか犯しちゃダメですよ?」

そう言った後、先ほど渡した雑誌を丸め、ポカっとローさんに叩かれた。

「そんなことしねーよ。大体ここは俺のいた世界とは違うってことくらい理解している。」

「じゃあ、大人しくおうちで待っていてくださいね?」

「あぁ、わかった。」

驚いた。
腕やら手やらに入れ墨を施している人がこんなにも常識にあふれた人だとは思わなかった。

なんだかんだいってこのひとは良い人なのかもしれない。

とりあえず、明日の不安は少なくなったから良しとしよう。

「あ、ハンバーグ食べたら、ローさん先にお風呂使っていいですよ〜。」

機嫌がよくなったあたしは快くローさんに勧めた。

「なんだ?それは誘っているのか?」

「ちょっと!なに言ってるんですか!そんなわk」

「冗談だ。お前みたいなガキには興味ねぇよ。」

そう言ってあたしの頭にそっと手をのせて、自分の食べた皿を台所へと下げに行った。

この人はずるい。

一瞬でもときめいてしまう自分が悔しい。

時計もいつの間にか11時を指していた。
もう、寝ないと明日に響いてしまう。

「ローさん、ローさん。」

「一回で良い。」

「ローさんベッド使って寝ていいですよ。」

「は?お前はどこで寝るつもりなんだ?」

「あぁ〜、あたしなら床で平気ですよ。」

「お前女だろ。体を冷やすと良くねェ。俺が下で寝る。」

「そんなことはダメです!」

「却下。」

「ローさんが、下で寝るならあたしも下で寝ます。」

「俺が下で良いって言ってんだろう。」

「じゃあ、あたしも下で良いです。」

「あぁー。もう、めんどくせぇ。」

結局折れたのはローさんのほうだった。
あたしのベッドにローさんを寝かせて、あたしはラグの上で毛布にくるまった。

「風邪引いてもしらねぇぞ。」

「あたし、玄関で寝ても平気でしたから。」

「ククっ、何とかは風邪ひかねぇって間違いじゃねぇな。」

「失敬な!健康だと言ってください!」

「料理もまともに食ってなかった奴のセリフかソレ…」

あたしはこの時はすでに眠りに入ってしまっていた。

「ったく、しゃあねぇなぁ。」

あ…。

なんだろ。体がふんわりしてる。
これが空を飛んでる感覚なのかな…?


取り換えっこされて


(…ん?え?!ここって)
(おう、起きたか?)
((ローさんの腕の中?!))
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