月の輝く深夜に |
side:ロー ここは一体どこなんだ? 俺は確か、自室でいつものように本を読んでいて、そしたら隣の部屋でキャスとベポが暴れてたから、その衝撃で俺の部屋の本棚から本が雪崩出てそこで、身に覚えのない小さな箱を見つけて、 それを、開いてみたら…。 意識がとんでいつのまにかこのベッドの上にいたんだ。 「あ!起きましたか?具合は大丈夫ですか?」 女? コイツは一体誰なんだ? 俺を助けたのはコイツか?それとも、敵か? 「お前はだれだ。そして、ここはどこだ、お前は能力者かなんかか!!」 「そんな、いっぺんに言われても困りますよ。」 「いいから、答えろ!」 仲間はいったいどこにいるんだ。 海もないし、第一ここには変なものが多すぎるだろう。 焦燥感を抑えることができずに思わず怒鳴ってしまった。 しかし、 女は怒鳴る俺に対して嫌な顔せずに優しく返してきた。 「大丈夫です。落ち着いてください。ここは日本で、あたしはあなたに害を与える気はありません。」 ピアノの音をポーンと響かせたようなソプラノの声。 深みを帯びていてそれでいて透明感のある声だった。 「…日本…?」 「え?日本を知らないんですか?でも、日本語喋ってますよね?」 「ノースブルー…、グランドラインはどこだ?」 「のーすぶるー?…ぐ、ぐらんど?」 「海の名前だ。」 俺の言葉を聞いて女は黙って考え込んだ。 「日本海とか、太平洋とか大西洋とかインド洋なら知ってますよ!」 「…聞いたことがねェ。」 「ですよね〜。」 そのあと、俺とコイツの間には大きな沈黙が流れた。 …俺はコイツの声で落ち着くことができて、自分の置かれた状態をようやく理解することができてきた。 ここは日本という国であって、俺のいた世界とは全く違うということ。 そう、おそらくここは異世界だ。 時空の歪みだとかなんらかのことがあって俺はこの世界に飛ばされてきたんだ。 俺がこっちに飛ばされる引き金になった原因はおそらくあの箱…。 「あ、あの、そんな難しい顔しないでください。」 先に沈黙を破ったのは女のほうだった。 そんなに難しい顔をしていたのかと思い、窓を見ると俺の顔が映った。 …確かにひでェ顔だな。 「あたし、澪って言います。え…と?」 俺の名前を知りたいのか、困ったように俺を見てきた。 その覗き込む瞳に俺は吸い込まれた。 ほんのわずかだがコイツの目は深い蒼をしていて… 海の底のような黒さを持った瞳に…。 見ていたのをバレないようにぱっと顔を逸らして答える。 「トラファルガー・ローだ。」 「トラファルガー…さん?でいいですか?」 「…構わねェ。」 「え・・・と、 細かいことは考えずに飲みましょうか♪」 そう言って女は嬉しそうな笑顔を見せて 袋の中から缶を出して言った。 月の輝く深夜に (不覚にも笑顔にやられた。) (飲んで忘れる!これが一番です!) |
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