蒼黒の奏で | ナノ
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それは、まるで神様のイタズラのように
桜のつぼみも膨らみ始めた3月中旬…。

あたしは、そんな春の日に
自分の彼氏に呼び出しをされた。

一か月ぶりの再会であろうか。

待ち合わせの場所は、二人でよく行った公園。
普通ならとてもうれしい気分になる。

なのに心は全然うきうきとしない。

むしろ、あたしの足がその場に行くことを拒んでいるようにも感じた。

あの、初めて彼に会った時の
トキメキはいったいどこにいったのだろうか。

別れるって時は意外とそんなもんなのかもしれない。

そう、考えながら公園の二人でよく座ったベンチに座る彼の元へと歩いた。

呼び出しの内容はわかってた通り別れ話。

「もう、別れよう。」

そう、彼に言われた。

あたしは

「うん。」

と、一つうなづいた。

別れをきりだされても不思議とかなしくはなかった。
それ以上に、心の荷物が消えた感じで帰り道のあたしの足取りは軽かった。

帰り道のコンビニ。

そういえば別れたんだしお酒にでもどっぷりつかってみようか。
など、考えてアルコールコーナーからチューハイやら、ビールやら日本酒をカゴへと放り込む。

たまにはいっか。
自棄酒というものも。

おつまみやらなにやらも一緒に入れる。

カゴいっぱいのお酒とおつまみの量に、レジの店員さんに若干ひかれながらも会計を済ませ、おっきなコンビニ袋を提げて、自分のアパートへと向かう。

駅から徒歩8分。
2階建てで、西日の入る大きな窓があり、部屋から海を眺めることも可能である。
この立地条件はあたしにとっては絶好のものである。
しかも、家賃は安い。

鼻歌まじりに歩いていると
アパートのあたしの部屋の前で倒れている人がいた。

え?
どちらさま?

この時代に行き倒れ…?
まさか、犯罪に巻き込まれたりして?

どっちにしたってよくない予感。

これは関わらないほうがいいよねー。

倒れている彼を無視して、部屋に入ろうと思ったが、その足をとめた。

やっぱり、
ほっとけない。

あたしの性分的にほっとけない。

黄色いパーカーを着て倒れている人を引きずりながら、
自分の部屋のベッドに寝かせる。

改めてあおむけにさせてみた。

この人隈がヤバイっ。

それと、手とかに刺青も入ってるし。

で、そのくせ、この帽子?!

面白い人だな〜。

あ、行き倒れてたとしたらお腹すいてるよね?

簡単に食べれる物でも作るか。

キッチンに立って料理を開始する。


それは、まるで神様のイタズラのように


(あ、これ神の味付けじゃん。)
(…ここ、どこだよ。)
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