蒼黒の奏で | ナノ
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仲良しこよし
1番隊に属することになり一通りの説明をマルコ隊長から受けた。
わたしが請け負ったのは隊内のみなさんの洗濯物と船内の掃除の補佐だった。もちろんメインは洗濯。

新隊員の方も手伝ってくれるそうなのでなんとかやっていけそうだ。

白ひげ海賊団は1600人の船員がいるわけで、そうなると各隊100人と言ったところだろうか。

100人分を一人でっていうのはどうしたものかと思っていたので大助かりだ。

そのほかにも各隊長さんたちを紹介してもらって、一生懸命名前を覚えた。

そして実際に作業をはじめて3日ほどたちわたしも要領を覚えて楽しくやってる。一緒に仕事を任された新隊員はラクスくんと言って、だいぶ仲良くはなったのだが、どうにもよく名前をかんでしまう。そのたびにラクスくんには馬鹿にされるけど。それでもわたしと年齢が近いラクスくんとは話も合う。今回もお互いのことを話していた。

「なぁ〜、澪って異世界から来たんだろ?」

「そうだよ〜。」

「どんなところなんだ?」

「う〜ん、海賊なんてものはないんだよね。すごい平和。でも、物があふれてて、こっちの世界の方がよっぽどきれいだよ。」

「まじか〜!海賊ねぇの?!それってつまらなくね?やっぱり男は海に出て夢持つのが一番っしょ。」

「そうだよね〜。あ、でも、洗濯はここよりずっと楽だよ。全部機械がやってくれるから。」

「まじかよ!?そこだけは羨ましいぜ!」

そして二人であははと笑って、いつものように作業をする。

一通り終えたところで、2番隊隊長のエースさんと4番隊隊長のサッチさんが来てくれた。

「よぉ、澪、ラクス!」

エースさんが気さくに声をかけると、ラクスくんはハッとしたように敬礼をして見せた。彼は隊長たちのファンなのである。

「え、エース隊長に、サッチ隊長、ちわっす!!!」

「ラクスは元気がいいなぁ〜!!これからも頑張れよ、期待してるぜ新人!」

そう言ってサッチさんがバンっと背中をたたくとそれはまぁ、子犬のような笑顔でハイっと答えて、船内へと戻って行った。

残されたわたしを含め三人はそのまま甲板で寛ぐことにした。

「澪、大分慣れてきたようで安心したぜ!」

「はい!サッチさん、エースさん、そしてマルコ隊長、みなさんのフォローのおかげですよ。」

「そんなかしこまらなくていいぜ。大体さん付けなんて堅苦しいぞ。俺はサッチって呼んでもらった方が嬉しいぜ。」

「そうだ、俺もだぞ!」

「う、しかし、わたしは拾われた身ですし…。」

「ばーか言ってんじゃねぇよ。俺たちはその前に仲間だろ?」

「そうだ!そうだ!仲間なんだからな!当たり前だろ!」

二人にそう言われてまた、胸の中が少し軽くなった気がした。

「じゃあ、そうさせていただきます。ありがとう、サッチ、エース。」

そういうと二人は照れたように笑って見せた。

「それより、今日もあっちいーな。」

「そうだなぁ、航海士によれば夏島の気候に入ってるらしいぜ。」

「まじかよ………喰らえサッチ!!!」

なんとエースが洗濯物に使った盥にあった水を思いっきりサッチめがけてかけたのだ。
おもわずきゃっと小さく悲鳴をあげてしまったが、その声はエースの笑い声にかき消された。

「ブッハッハハッハ!サッチ、お前…ククク、もう、俺ダメだ!」

そう言ってエースは笑い転げてしまった。
水を掛けられたサッチはといえばトレードマークのフランスパン、否、リーゼントが力なくだらんと折れてしまった。

「……えええええええええええすううううううううううううう!!!」

サッチが怒りだした。
まぁ、彼のお気に入りがいとも簡単に崩されてしまえばそれは怒りますね。

だらんと前に落ちた髪をかきあげれば見事なオールバックに変わった。

あれ、もしかしてこっちの方が男前?

「わりぃ、わりぃ、暑くてよぉ!」

「あっちーなら自分にかけなさいよ!」

「俺、水ダメだし!」

「そんなの関係ねぇ!!」

そう言ってサッチは盥ごとさかさまにエースに水をぶちまけた。

「ぶはっ!!つめたっ!!」

「ナーハッハハッハハ!お前がこのサッチ様に勝てるわけがないだろう!!!」

「このぉ〜〜、サッチぃ〜〜〜〜!!」

力が抜けると言っていてもエースはなおも元気でサッチへと飛びかかろうとしていた。

サッチも負けじと反撃するが二人ともびしょびしょで、なにがなんだかわからない状態になっていた。

その光景にわたしは思わず吹き出してしまった。

「アハハハハ!」

「おい、澪、笑いすぎだろう!」

「そうだぞ、エースはともかくオレ様を笑うなんて!」

「アハハ、だってごめん、二人ともびしょびしょなのにおかしくって…!」

それを聞くと二人は顔を見合わせて、なにか悪い笑みを浮かべたともったら、投げ出されていたホースをエースが手にとって、まさかとは思ったけど、水を出してわたしに向かってかけてきたのだ。

「笑ったバツだぞ澪!」

「ちょ、つめたっ!」

「よくやったぞ!エース!これで澪もびしょびしょ仲間だな!」

水ホース攻撃は短時間で終わってしまったが、わたしもサッチやエースのようにびしょびしょになってしまった。

「もう、どうするんですか〜!わたしなにもしてないのに〜〜!」

もう、こうなったら仕方ない。
異世界人をなめちゃ困るって教えないとだめだね。

スキをついてエースからホースを奪うと最大限に調節してエースとサッチにめがけてかけてやった。

「ちょ、澪〜、悪かったって、許して!」

「そうだぜ!もうっ、つめた!」

「これで凝りました?」

ホースを上に向けて、観念したと土下座する二人の前で仁王立ちすると、ごめんなさい〜と言って顔をあげたエースとサッチがハッとした顔をした。

「澪、後ろ後ろ!」

何かと思ってみれば、最大限出力で出しているホースを上に向けて発射したせいで水が重力に従って落ちているじゃないですかね。

後ろに立っている…

「マルコ隊長!!!!!!」

「おい、澪…?仕事はおわったかよい?」

「は、はい終わりました…。」

「それでおめぇは一体何をしてるんだよい?」

「いや、これはその…。」

「おい待てマルコ!澪だけが悪いんじゃないんだぜ!元はと言えば、エースがなだ…!」

「おおい!俺の全責任かよ!?」

「ほうほう。大体内容はわかったよい…。」

わたしたちと同じくびしょびしょになったマルコ隊長が髪をかきあげてこちらを見た。

「おまえらぁああああああああ覚悟しろよい!!!!!」

そう言って、マルコ隊長はわたしからホースを奪い取って、最大限で出ているホースの口をさらに絞って、最大限×最大限の攻撃をしてきた。

「ちょ、マルコ痛い!」

「そうだぞ、これは痛いって!!!」

「ちょ、わたし女の子なのに!」

マルコ隊長のお怒りに触れたわたしたち3人はこっぴどくマルコ隊長からお仕置きという名の水攻めを食らわされました。

そのあとは互いに水を掛け合ったりしてほんとうに子供みたいになって遊びました。

疲れたーと言って、エースが先に甲板に寝転ぶと、サッチもマルコ隊長も寝転んだ。

「おい、澪もこいよい!」

そう言って自分の隣りにあいたスペースをトントンと叩いた。

「もう、怒ってないですか?」

「もちろんだよい。」

それを確認してからわたしも彼らと同じようにゴロンと寝転ぶ。

「はぁ〜!疲れたぁ〜!久しぶりにこうやって遊んだ気がしました!」

「俺もだな。」

「俺も!!」

「俺もだよい。」

寝転んで見上げた空はずっと高くて、けれども手を伸ばせばすぐにでも届きそうな距離にあるように感じさせた。

「澪〜。」

「なんですかサッチ〜。」

「敬語と名前呼びがミスマッチだな。」

「エース、うるさい!」

「え、なんで俺だけにSなの?」

「大体お前ら仲良くなるのはやすぎじゃねぇのかよい。大体澪は俺の隊のもんだよい。」

「やだ〜、マルコってば妬きもち?かーわーいー!」

「くそサッチ。真上にいなきゃすぐにでも蹴りとばしてやんのによい。」

「ケンカはダメですよ〜。」

「ほら〜、澪がこう言ってるぞ。」

「ケンカじゃねぇだろうよい。」

なんだか、マルコ隊長がなにか言っていた気がするけれど、いまはそれどころじゃなくてとても眠い。

宙ぶらりんになってしまった感じのままわたしは意識を手放した。

…*…*…*…

「仲がいいってのはいいことだけど、場所くらい考えろってーの。」

「まったくだな。」

16番隊隊長のイゾウと3番隊隊長のジョズにより、遊び疲れて寝てしまったこの4人が発見されたのは言うまでもないだろう。


仲良しこよし

仲間だからできること
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