蒼黒の奏で | ナノ
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お世話になります、一番隊
1番隊隊長のマルコさん
2番隊隊長のエースさん
4番隊隊長のサッチさん

この世界に来て初めての知り合いが出来た。

3隊長が帰って行ったあと、わたしはすぐに眠ってしまったようだった。

再び目を覚ますと、額の上に置かれていたタオルを替えようとしてくれていたナイスバディなお姉さまの顔があった。

なんて、美しいんだ…。

「あら、起こしちゃった?ごめんなさい。」

「あ、いえ、たまたま目が覚めて…。」

「そう、ならよかった。気分はどう?」

「全然平気です!」

「わかったわ。丸1日寝ちゃってたから心配だったのよね。」

安心しきったのか、わたしはどうやら丸1日寝てしまっていたようで、時計は昼の3時を差していた。

「そんなに寝ちゃってたんですか…。」

「無理もないわ。色々と大変だったのでしょう?ゆっくり休めてよかったわね。」

「はい、おかげさまで。」

「…あのね、なんだか不思議な気してるんだけど、わたしあなたに初めて会った気がしないのよね。」

何を言い出すのかと思えば、彼女もどうやらわたしが感じていたものを感じていたらしい。

知り合いなどではないはずなのに、どこかで会ったことがあるかのような感覚だ。

たしかデジャヴというんだっけか。

「奇遇ですね!それわたしもです!」

わたしが答えると彼女は花が咲いたかのようにパァっと笑った。

「ほんとに!?やっぱり!そんな気がしてたのよ!ねぇ、あなたしばらく船にいるんでしょう?お友達になりましょうよ!」

わたしがこんな素敵なお姉さまとお友達になんて、なってもいいのでしょうか。

「えっとわたしでよければ!!」

そう答えると彼女は嬉しいと言ってわたしに抱きついてきた。

「わたしアミナ・ミア。っていうの。みんなからはミナミって呼ばれてるの!あなたは?」

ミナミ…?
そうだ!この人誰かに似てると思ったらミナミに似ていたんだった!
こじれた紐が一本に伸びるかのようにすーっとした気持ちになった。
彼女と初めて会った気がしないのは、彼女がわたしの友達のミナミに似ていたからなのだ。

「わたしは鈴原 澪っていいます。澪でいいです。」

「澪ね!わかったわ!それから、せっかくお友達になったんですもの敬語はなしよ。普通に話して頂戴。」

「うん、わかった!」

「あ、そうだった、これからまたマルコ隊長がくるらしいわ。その前に簡単に食事とシャワー済ませてきたらどうかしら?服とかは女性もののやつならたくさんあるから心配しないで。」

「なにからなにまでありがとう。その言葉に甘えさせていただきます。」

ミナミは奥からなにやらごそごそと着替えやタオルなどを出してくれて、わたしはそれらを持って、ミナミに案内されたシャワー室でシャワーを浴びることにした。

ずっと寝ていたままでここに来てお風呂に入るのなんて初めてだし、なんだか緊張してしまう。

しかもこれからマルコさんがまた来るとは…。

わたしのことが原因なんだろうけれども、それだけに心苦しいものがある。

………もしかして、ローさんもこんな気持ちだったのかな…。

不安で仕方なかっただろうな…。

わたしといて少しでもそれが緩和されてたならばいいのだけど…。

…いかんいかん。

一人になってしまうとすぐにローさんのことを考えてしまう。こんどローさんに会った時にはもう少し成長してないと…。

シャワー室からでて、食事も摂り終えたころ、タイミング良くマルコさんが現れた。

「わりぃ、遅くなっちまったよい。」

「あ、いえ大丈夫です!」

「それよりも、具合はどうした?」

「見ての通り、だいぶ良くなりましたし、ミナミからも無理をしなければ大丈夫って言われました。」

そう言ってミナミの方を見ると、ニコッとほほ笑んで返してくれた。

「なんだい?もう仲良しかい?ならよかったよい。澪もミナミも宜しくしてくれよい。…っと忘れるところだった。澪、これから俺等の親父に会ってもらうよい。」

「親父さん…ですか?」

「そうだよい。まぁ、この船の船長で、いずれは海賊王になる男だよい。」

「海賊王!?それってとってもすごい人なんじゃ…。」

「大丈夫だよい、そんなかしこまるなよい。船に乗せる許可も貰ってんだ。ただ、親父がお前と話してぇって言ったんだよい。」

「わかりました、もう大丈夫ですし、今から行くんですよね?」

「今の方が都合がいいよい。それじゃあ行こうか。」

先を歩くマルコさんにひょこひょこと着いていく形になる。
それにしてもマルコさん歩幅大きい。
しかも歩くのはやい。

追いかけては離れ、追いかけては離れをしばらく繰り返していると、マルコさんがそれに気付いたのか、すまねぇ、気づけなくて、と言って先ほどよりもゆっくりのパースであるいてくれた。

よかった。
いくら船の中といえども、ここは広すぎる。危うく迷子になってしまうかもしれなかった。

大きな扉の前まで来ると、マルコさんが歩みをとめた。

「着いたよい、それじゃあ、入ろうかよい。」

「はい。」

緊張はしたが、入ってしまえばどうにかなるだろうし、なによりもマルコさんがいてくれるんだから、と思い気合いをいれて部屋へと入った。

通された部屋の奥にはマルコさんの言っていた親父さんがどーんという効果音が似合うくらいの存在感を出して座っていた。

親父さんの前までいくと、さらにそのオーラはつよくなり、より一層迫力を増した。

「グララララ、お前がマルコが拾ってきたっていう猫か。」

「猫?」

「猫みてぇにちっけーからな、グラララララ。」

「はい、なんかすいません。」

「グラララララ!!おめーなんで謝るんだ、おめーはなんも悪いことなんてしてネェだろうが。」

「はい…。」

「まぁ、そんな固くならなくていい。大体おめーよぉ、異世界から来たなんて心ぼせぇもんだろ。しかもおめーにそんな痣やらが出来たのはどうも、そこにいるマルコが助けなかったからだって言ってたぞ。」

「え、でも、わたしは助けてもらったんじゃ…?」

「もっと早くに、おめーがやられる前に助けられたのかもしれなかったってことだ。それをここまで連れてくるのは当たり前のもんだろ。」

「そうだったんですか…。でも、やっぱりわたしがマルコさんに助けてもらったってことには変わりはないですし、感謝しています。ありがとうございます、マルコさん。」

そう言ってわたしがマルコさんのほうを向いて丁寧にお辞儀をするとマルコさんは、

「こっちもすまなかったよい。もう少し早く助ければよかったよい。」

と、困ったように笑っていた。

そして、その話のやり取りを見ていた親父さんは、盛大に笑っていた。

「グラララララ!!!マルコ、おめー助けた猫がこんなに素直でよかったなぁー!俺ぁ、てっきりお前がかみつかれると思ったぜ!!」

「ほんとだよい。」

それにつられてマルコさんも今度は思いっきり笑った。

なにが起きているのかはいまいち把握してないが、その場に和んでしまった私もまたつられて笑ってしまった。

「グラララララ、猫、おめーの名前はたしか澪でいいんだよな?」

「はい、そうです!」

「おめー、帰り方が分かるまで、存分にこの船にいるがいい。今日からおめーは俺の娘だ!!!!」

親父さんがそう声高々にいうと、入口の方が急に騒がしくなって、どこにこんなに人がいたのかわからない人たちが、親父さんの部屋に一斉になだれ込んできた。

「チッ、あいつらぁ…。ったく。」

「グラララララ、そうかっかすんなマルコ。元気があっていいじゃねぇか。おい、息子たち、聞いてただろう?今日から澪はお前らの兄妹だ!!!!!」

わーっという歓声が一気に上がって、そこかしこから、宴だーという言葉が上がって、その場の盛り上がりは最高潮となった。

その盛り上がりにおされぎみなわたしの元へマルコさんやサッチさん、エースさんがやってきてくれて、改めてよろしくと声をかけてくれた。

そして、サッチさんが親父さんに思い出したかのように尋ねた。

「親父、澪のどこの隊にいれるんだ?」

「おっと、大事なことを決め忘れていたな。」

「あ、あのマルコさん、隊って何ですか?」

「この船の船員は約1600人なんだ。そして、うちはそれを16の部隊に分けているんだよい。詳しいメンバーはあとで紹介するよい。」

「なるほど。」

1600人って、すごい。
この白ひげ海賊団ってほんとにすごいんだ。

「なぁ、親父ぃ〜、俺の隊でいいだろう?丁度人手にも困ってたし!」

そういうサッチさんに負けじと言い張ってくるのがエースさんだ。

「ずりぃぞサッチ!俺だって澪が欲しいぞ!!」

あれ、なんか表現がおかしいような…。

「まぁまぁ、待て息子たち。澪が入る隊はおれぁ先に決めてたんだよ。」

どこどこ?と親父さんを見つめる彼らの瞳はまるで子供のような瞳だった。

「澪が入るのは、マルコが率いる1番隊だ。マルコ、いいな?」

「あぁ、もちろんだよい。」

「グララララ、そういうことだ。おい、異論はねぇな?」

親父さんがそういうと、一瞬静かになったみんなも、おーっと声をあげて、また騒ぎ始めた。

「俺が守ることができなかったんだよい。これからは俺がしっかり澪を守っていくよい。よろしくな。」

「不束者ですが、お手伝いとか精一杯頑張ります!宜しくお願いします!!」

おう、と言ってマルコさんが手を差し出すので、今度は間違えずにしっかりと手をグーにして、コツンとマルコさんのこぶしにぶつけた。


お世話になります、一番隊

心が揺れ動いたのはどっち?
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