蒼黒の奏で | ナノ
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
蒼い炎、そして、鳥
side:マルコ

その日俺たち白ひげ海賊団はログポースが差した名もなき島へとたどり着いた。
見る限り、その島には人が住んでそうな気配はない。

けれども、ログがどのくらい経てばたまるのか知らなければ元も子もない。

意外とこんな島だと、奥の方に集落がありました、なんてこともないこともないだろう。

とりあえず、探索しようということで、俺とサッチが率いる、1番隊と4番隊の連中で手が空いてそうなのを適当に集めて、島を探索すろことにした。

向こうから襲いかかってきた場合は別だが、俺たちからは一切攻撃するなと命令を出して、各探索に赴いた。

俺はいつものようにサッチとともに行くことになった。

「なぁ、マルコ、この島十分に木の実とか食料は豊富だし、水もきれいだし補給にはもってこいだな。」

「そうだな。けど、原住民がいるんだったらむやみに取ることもできねぇだろうよい。」

海賊といえども無駄な戦いは避けたい。
なにも奪うだけが海賊じゃないんだ。
俺たちは親父から大切なことを学んだんだ。
だから、そういうのはきちんと守っていかないといけないんだ。

島の探索をしていると、いつの間にか日も暮れ始めていた。

「結構奥の方まで来たけどなんもなかったなぁ。この島には誰もいねぇんじゃねぇか?」

サッチの言う通りかもしれねぇ。
日がくれれば何もない限り船に戻る。それが暗黙の了解でもある。

俺たちもそろそろ戻ろう、そう言いかけた時、茂みがガサガサと揺れ動く音がした。

俺とサッチはとっさに身構えた。

「おい、サッチ、なにかいるよい。気ぃつけろい。」

「もちろん、お前も気を抜くなよマルコ。」

互いに背中を預けあたりの気配を確認する。

「おい、マルコあっちだ。」

サッチが指さす方向を見ると木の陰に、薄汚れた男たちの姿を見つけた。
俺とサッチは近くの茂みに身を隠し、会話のする方に目を配った。

「へへへ、いいねーちゃんじゃねーか。なんでこんなところにいるのかな〜?」

「ほんとだなぁ、ひひひ、今回は上玉とみたぜ。」

「これならボスも喜んでくれるんじゃねぇか?」

「ちげぇねぇ、ハハハハ。早く連れていこうじゃねぇか。」

「随分とひでぇ会話だな。」

サッチが小声でつぶやいた。

「しかし、女とか言ってたよな?どこにいるんだ?」

俺もそこは聞き逃さなかった。

男たちの視線の方を見ると、完全におびえ切った、ここらでは見慣れない格好をした女がいた。

「なんだ、あいつらあんな人数で女によってたかるなんて卑怯じゃねぇか?おい、マルコ止めようぜ?」

「もちろんそのつもりだよい。でも、もう少し待てよい。」

「は?!なんでだよ?ほっといたらすぐにつかまっちまうぞ?」

「そうやって、すぐに頭っから突っ込んで失敗するのがお前のいつもの悪いクセだろい?少しは状況判断をだな…」

「おい!!!マルコお前がうかうかしてるから女とあいつらどっか行っちまったぞ!!!」

「何?」

再び視線を戻すとそこには誰もいなかった。
マズイ、そう思って立ち上がりサッチとともに後を追うように走った

「おいおい、あの女何気に足が速くないか?見失ったぞ?」

「ホントだよい…。ところでお前の自慢の鼻はきかないのかい?」

「ん・・・?クンクンって俺は犬か!!!このパイナップル!!!」

「なんだと?このフランスパン!!!」

「俺のはリーゼントだ!!!ってなにコントやってんだよ俺等。早く見つけねぇと…。」

うっかり船内でのペースに戻っていた。

この暗いジャングルでは視界ももちろん良くない。

あたりの気配を探ってみてもあいにくと女もあいつらも見つからない。

その時、島中に響き渡るかというくらいの、女の叫び声が聞こえた。

「だ、誰かーーーーーーーーー!助けてーーーーーーーーーーー!!!」

「マルコ、聞こえたか?あっちだ!!」

そう言って俺たちは声のした方へとかけだした。
着いてみれば、女はすでに男たちにつかまっていて、腹にパンチをされて黙らされたところの様だった。

「マルコ?もういいだろ?」

「あぁ、もちろんかまわねぇよい。」

俺たちが飛び込んで行ったとき、すでに女は意識を失っていて、ぐだっと倒れてしまっていた。

「オイオイ、お兄さんたち。どうも素敵なことやってくれてるじゃん?」

紳士気取りでまずはご丁寧にいくのがサッチのやり方だ。

「あ?なんだお前?どこの奴だ?」

「この島の奴じゃねぇな?」

「おい、余所もんがごたごたうっせーんだよ!!!」

「まったくこれだから下衆な野郎どもは。女ひとりのエスコートの仕方もわかんねぇのかよ。」

挑発にも乗らなくなったのは流石隊長格になっただけはあると思う。

「サッチ、こんな下衆野郎どもには何言ったって効かねぇよい。」

それを言った後、小声でサッチに俺は呟いた。

『俺は奴等の始末をする。お前はお嬢さんの保護を。』

『了解。』

サッチはすぐに女を拘束していた男めがけて走って向かって、隙をついて颯爽と女を奪還して戻ってきた。

「おい、何すんだよ!女を返せ!」

あいつらの叫びなんて、ハエと同じだ。うるさくてかなわない。

「やだもんねー!!もう、俺のもんだからな。」

「おい、余計なこと言ってねぇで下がれよい、サッチ。」

「へーい。」

そう言って、女を抱き抱えるようにして大事そうに扱うサッチが後退したのを確認すると、俺は下衆な野郎たちの方へと歩みを進めた。

「兄ちゃん一人で俺たちとやる気かぁ?!」

「しかも兄ちゃん丸腰じゃねぇか?」

「ハハハハ、命知らずもいいところだ。」

「あの女はもうかまわねぇ、おら、やっちまうぞ。」

男どもでピストルを持ってたものが俺めがけて撃ち込んでくる。
かわせないことはなかったが、さっさと勝負をつけるためにも俺は自分の姿を見せつけるためにわざと避けなかった。

奴等の撃ったピストルは確かに俺に当たった。当たったが、当たった箇所から俺の体は蒼い炎を纏って再生していく。

「な!!!!」

「銃がきかねぇだと??!!」

「おい、コイツなにものだ?能力者か?」

「ピストルがダメなら刀ならどうだ?!」

随分と意気込んだ男が、こちらに向かって刀で切りつけたのをかわして、みぞおちに蹴りをくらわせる。すると無残にも男は地面へと倒れこんだ。

「ったく、これぐらいでやられるなんて情けねぇよい。鍛え直すんだな。おまえら。」

鼻でフンと笑ってやれば、奴等は段々と顔は青ざめていった。

俺の正体がわかったってところか。

「おい、もしかして、コイツ…。」

「そうだ、思い出した。あの入れ墨は…、」

「白ひげ海賊団の一番隊隊長不死鳥マルコじゃねぇか!!!」

「なんでここに白ひげ海賊団が??」

「知らねぇよ!!!!おい、ずらかんぞ!!!」

人の力量をわかるってのはいいことだが、こちらもつかまえた獲物をみすみす逃がすなんてことはしない。

しかも、その獲物が女を痛めつけるなんて胸糞わりぃもん見せつけられちまったら、益々このまま逃がすわけにはいかない。

逃げ去ろうとする奴等の前に飛んで回り込んで、次々に敵を倒していく。

「あーあ、マルコったらいいとこ持ってちゃうし、あいつらもひでぇ有様。」

サッチがそんなことを呟いたのが聞こえた気がしたが、構わずに俺は奴等を殴り付けた。

それから、しばらく経ってサッチが俺に改めて声をかけた。

「おい、マルコその辺にしとけ。死んじまうぞ。それよりも早くこの子を船に連れてって手当てしねぇと。」

サッチの言葉がなかったらおれは奴等を殺していたに違いない。
半分虫の息の奴らをそのままそこに置いて、船に戻ることにした。

「なんだか今日はいつもよりか、気が立ってんなお前。」

「いや、おれがあの時お前をとめてなかったらこの子は無傷で済んだんじゃねぇかと思ったら、判断ミスをした俺に虫唾が走ったよい。」

「あらあら、なんだか一番隊隊長がそんなに自分を責めるなんてまぁ。よっぽどこの子が気にいったのか?」

「…さぁよい。」

そのまま船に戻ると、帰りが遅いのを仲間たちに心配されながら、いまだ目を覚まさない彼女を医務室へと運んで行った。

これから親父にいろいろと話さねぇとな。


蒼い炎、そして、鳥


交錯する運命たち
<< >>