忍 series | ナノ
◎ 微熱4
「俺と、もう一度やり直してくれないか?」
バカバカしいと思っただろう?
未練たらしいって思っただろう?
うざってぇ。
ふった男なんてこれっぽちも思ってない。
そう、言ってくれたっていい。
でも、
こんなに
情けなくなるくらい
俺は、今でも
お前が好きなんだよ。
…*…*…*…
もう一度…?
あたしがシカマルの隣りに立つことが
許されるの?
頭では分かっている。
あたしがシカマルを解放しなくちゃいけないこと。
あたしが傍にいてはいけないこと。
でも、
心が拒むの。
もう一度あなたの隣りで笑いたい。
これからもずっと傍にいたい。
あたしの頬には
自然と涙が伝っていた。
…*…*…*…
澪の頬に涙が伝ったとき、
俺は自然とアイツを抱きしめていた。
澪のか細い華奢な体を。
雨にうたれて冷たくなってしまった体を。
もう、離したくねぇんだ。
片時だって忘れたことなんてねぇんだ。
なぁ、澪、
俺にはお前が必要なんだよ。
早く気づけよ。
どれだけ心の中でお前の名前を呼んだと思う?
どれだけ俺が崩れていたと思う?
雨の音が、だんだんと弱くなってきているのを聞いていた。
…*…*…*…
シカマルが、あたしを抱きしめてくれた。
かわらないね。
強引で強気で勝気で
かっこいいところ。
ねぇ、
シカマル。
あたし、あなたのそんなところが大好きだったんだね。
あなたと別れて、
周りにはなんともないフリしてたけど
あたしの心はめちゃくちゃだったんだよ?
シカマルがいないだけで
夜、眠ることができなくなった。
あたしの中の方位磁石が狂ったみたいに
どっちに向かえばいいか分からなくなった。
でも、
答えはすぐ、そこにあったんだよね。
あたしは、自分の気持ちを抑えることができなくなった。
「シカマル、あたしもシカマルのこと好きだよ。
あたしだって忘れることなんてできなかった。
ずっと、傍にいたかった。」
…*…*…*…
俺は夢でもみているのか。
いま、何て言った?
俺のことをまだ好きでいてくれてるのか?
俺の背中に回されたあいつの腕のぬくもりを感じた。
俺の腕の中にあいつがいて、
泣きながら、話そうとしている
「澪、それ、本当か?」
「本当にきまってるじゃんっ。ゴメン、今まで強がってて。
でも、…、もうムリだよ。あたし、シカマルのことが本当に大好きだもん。」
「俺は、これからも好きでいていいのか?」
「うん。」
「やっべ、俺、今ものすごい嬉しいんだけど。」
「あたしだって…。」
俺はそれから、
澪の顔の涙をぬぐって、
彼女にキスをした。
2年ぶりのキスだった。
でも、かわんねぇな。
なぁ、
澪、
もう、離さねぇからな。
…*…*…*…
もしも、今日このとき、シカマルに会えてなかったら
一体どうなっていたんだろうか。
神様…。
最初は会わせたこと怒っちゃったけど、
いまでは感謝してるよ。
ねぇ、
シカマル、
遠回りしたけど、
今度はあなたの傍から離れないからね。
二人の体に残る微熱は
雨に溶けていった。
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