The Cocktail Wowld | ナノ
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 ホワイトレディ
この前のピンクが来店すると、
しばらくピンクが来店しないから、ゆっくりお酒が飲めると
お客さんも足を戻してきた。

決して繁盛しているわけではないが
お客の入りはまぁまぁ。
経営して行ける程度の収入はある。

「サラ、いつものね!」
『はーい、いまお持ちしますね。』

小さい時から酒の味をじっちゃんに仕込まれて、
料理も教わってきたからとりあえず不自由はしていない。

ホントに私が生きていけるのもじっちゃんがこの店を残してくれたおかげだ、とじっちゃんの写真に向かって頭を下げようとすると、イキナリ人がガタンッと少々乱暴に店のドアが開いた。

こんなにね、乱暴にドアを開ける奴にね、いいやつなんていないんだよね?

「おい、この店はやってんのか?」

ドアのほうを見ると
葉巻を咥え、十手を片手に持った白い髪のヤツが現れた。

"白猟のスモーカー"だ。
海軍本部大佐?いや、准将だったか。

『…いらっしゃい。やってますよ。』

海軍の准将のお出ましで騒がしかった店内が一気に静かになる。

『うちに札付きがいてもここでは暴れないでくださいね?
 お客様に手を出すことは私が許しませんから。』

「威勢のいいねぇちゃんじゃねぇか。
 なぁに、今日はただ単に飲みに来ただけだ。」

…なんでこんな奴がうちみたいな小さい店に来るのかなぁ。
ただでさえお客がこの前きたピンクにびびらされてるのに、
ますます人が入らなくなるじゃないか!

スモーカー准将の言葉を聞いて
店にいた人はほっとしたのか、またガヤガヤと
騒ぎ始めた。

スモーカー准将は確か前も一度この店に来たことがあったと思う。
そのとき私はまだ小さかったからよくわからないがなぜかじっちゃんと息が合ってじっちゃんも一緒に飲んでた記憶がある。

でも、
今目の前にいるのはムスっとした表情を浮かべる
愛想のない奴…。

しかも、ドアちょっとゆるんだし。

直させてやりたい。

しかし、うちにはじっちゃんの遺した
≪お客様は神様だ≫
の言葉があるんだ!

いろんな心情を飲み込んで
丁寧に応対する。

『ご注文は?』

「…ねぇちゃんのオススメで。」

でたよコレ。
最近おすすめ作るの流行ってんの?

常連さんのはいつも注文するものから想像しておすすめをつくるのだが久しぶりの人に出すものは難しい。

しかも、スモーカー准将はじっちゃんの作ったものを一度飲んでいるんだ。下手なものは出せない。

…しかし、じっちゃんはじっちゃん。
私は私だ!

『かしこまりました。少々お待ちくださいね。』




ドライジンにホワイトキュラソー、それにレモンジュース。

さっと材料を入れてシェイクする。
その姿を見たスモーカー准将が声をかけてきた。

「アーサーそっくりじゃねぇか。」

『…え?』

アーサーとはじっちゃんのことだ。
まさか覚えていたとは…。
酒の席でのことだし忘れていると思っていた。

『ありがとうございます。しかし、まだまだじっちゃんには及びませんよ。』

できたカクテルをグラスに注ぎスモーカー准将の前に出す。

『お待たせしました。どうぞ、スモーカー准将。』

「ちっけぇときはスモーカーって呼び捨てだったくせにな。」

『…覚えてません。』

嘘。ホントは覚えてる。
でも、それを思い出すってことはとんでもないことを
思いだすのと同じことだから忘れたことにしとく。

スモーカー准将、否、スモーカーは一口のんで
そのカクテルが何かを当てた。

「ホワイトレディか。」

『流石ですね!』

「これくらいは当然だ。」

『ホワイトレディは甘さ、アルコール、酸味この三つのバランスが大切なんですよね。でも、スモーカーにだすものだからすこーし、アルコール度数あげときました。』

「うめぇじゃねぇか。」

『おほめにあずかり光栄です。』

そう言うとスモーカーはまた口をつけてホワイトレディを飲んだ。

『そういえば、なんでスモーカーこの島に来たの?』

「あ?ただの暇つぶしだ。」

…やっぱり、この店に来る大物は
やなやつばっかりだ。

「なんか言ったか?」

『なにも〜。』

話しているとまた、ドアが勢いよく開いた。

「スモーカーさん!ここにいるって聞きましたよ!さっさと帰らないと上の人に怒られちゃいますよ!」

メガネ…?を頭につけて刀を持った女の人が海兵を連れて入ってきた。
そして、話しかけているのはスモーカーではなく
うちの常連さん。

「おい、とろ女。メガネをかけろ、俺はこっちだ。」

「は!スモーカーさんじゃない!し、し失礼しました!」

『すごい部下を持ってるんですね。』

「…はぁ、アイツは役にも立たねぇよ。」

『そんなこと言って、実は、ふがっ』

スモーカーに口をぎゅむっと掴まれた。

「ちげぇって言ってんだろ?
 じゃねぇとその唇ここで奪っちまうぜ?」

『ふ、ふひはへん』

「分かればいい。
 おい、たしぎ、てめぇも飲んでけっ。」

「え?!でもまた上の人に…」

「うるせぇ。上の言うことなんざ聞くかぁ。おい、サラこいつにも同じ奴を。」

『はーい。度数下げときますね。』

「あ、すいません。」

「ついでだ、サラお前海軍に来い。」

『お断りします。』

最上級の笑顔で返してやった。

まったくピンクに煙にここにまともなやつはこないのか?

スモーカーは結局昔と変わんない。
強引な人だ。
小さい時も海軍に入れと言われて、
じっちゃんがとても賛成していたな。

海軍になんか入んないけどね。

それでも私は
たしぎさんにスモーカーと同じものを出した。


ホワイトレディ。
葉巻を吸うあなたの色を映し出す。


(確かちっけぇとき俺の嫁になるとか言ってたんだぜコイツ)
(ぎゃー///それ思い出さないで!) prevnext
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