◎ 彼の隣りで
はてさて、
私もこのウォーターセブンでの暮らしにもすっかり慣れてきました。
低血圧なルッチさんを起こすときに毎朝飛んでくる指銃をかわすのもバッチリです!
そして、
ルッチさんにご飯とお弁当を作って、
食べさせて、
玄関で見送って、
洗濯と掃除をして、
買い物に出かけて…。
って!
これじゃ、私まるで主婦じゃないですか!!!!
まぁ、居候の身ですしね〜。無理は言えないですね。
夕べに、異世界から来たこの世界をなんにも知らないアホ女はおとなしくしてろって言われましたしね。ここで、でしゃばったら私、きっと海の藻屑ですね。
それにしても主婦って暇だなぁ…。
キッチンに目配せをしてみるとテーブルの上に残されたお弁当(私の手作り、しかも愛情たっぷり)。
…てか、ルッチさんって船大工…だったよーな。
↑やっぱりワンピースをよく覚えてない
…よし。
ここはガレーラに届けに行くしかない!
行って不審者に間違われたらどうしよう…。
私の場合65パーセント不審者に間違われますからね。
でも、お弁当届けに来たって言えば大丈夫だよね。
・
・
・
ヤガラを乗り継いで、ガレーラへと到着。
私だって、無事にガレーラにつけるんだ!
「勝手に入ったらまずいよねー。どーしよっかな?」
入り口のところで迷っていると、目の前に、長鼻のあの人がいた。
「見ない顔じゃな。お主、何しに来たんじゃ?」
あーーーー!
カクだー!
カクがいたー!
地味に感動だよー♪
鼻が四角だ〜w
「あ、あの私、ルッチさんに会いにきたんですけど…。」
ここは、得意の営業スマイルだ。
こんな可愛い子ちゃんを見てスルーするのはいないでしょ〜。
「////る、ルッチに用があるんじゃな、中に案内してやるからのぅ。」
効果テキメン!
心の中でこっそりガッツポーズを決める。
まだ、イケるな、私。
「ありがとうございます〜。」
「そういえば、お主はなんという名前なんじゃ?」
「あ、私は澪と言います。」
「澪じゃな、ワシはカクというんじゃ、よろしくのぅ。」
「あ、はい、こちらこそ。」
「ルッチとは、知り合いかなんかかのぅ?」
「ん〜、いわゆる、使用人と主人ですね。主従関係とでも言った方がただしいですかね。」
「ほぅ、面白い関係なんじゃな。」
「まー、そんなかんじですね。」
そういうとカクは子供みたいな無邪気な笑顔で笑った。
…カクはやっぱり話しやすいな〜。
なんかいい人っぽいし。
歩く歩幅も私にあわせてくれて…。
うん、ジェントルマンだよ〜。
そこから、しばらく歩くと何やら作業をしている人たちの人の中にケンカをしている人が…、
ってあれルッチさんじゃん?!
もう一人は葉巻を咥えてて…
確か、パからはじまったような名前のひとで…
「ルッチ、パウリー、いい加減にせんかい!」
そうそう、
パウリーね、パウリー。
ハレンチって言葉をやたら連呼する人ね。
カクが二人を仲裁すると、ハットリがあたしの肩へと飛んできた。
「クルッポーw」
「ハットリー♪元気だった?」
『澪、お前何しに来たんだっぽー。』
「ルッチさんがお弁当忘れていったんで、届けに来てみました。いけなかったですか?それとも何か不都合でも?」
私の言葉に大きくはぁ。とため息をついたルッチさん。
「なっ!ルッチ、テメー、こんな女に弁当って!!」
葉巻をくわえたパウリーが言った。
でも、今のはカチンときちゃいましたよ。
「ちょっと、こんなって、失礼じゃないですか?私に!」
「いやいや、だってな、昼時にはいつもルッチにはたくさん弁当が届いてて…って、もしかして、最近お前が昼休みになると一人でいなくなるのっt『うるさいッポー、パウリー!早く仕事に行けッポー!』」
鳩ルッチさんがパウリーとかいう人を追い払った
「ちょっと、ルッチさん!私、まだあの人にごめんなさいって言われてませんよ!!」
『いいから、落ち着けッポー。』
「でも…。」
…。
立ち込める沈黙のオーラ…
やっぱり来なきゃ良かったのかな?
そこで私たち二人をみかねたカクが、
「ルッチ向こうへ行って休憩にでもしたらどうじゃ。」
と、言ってくれたので、木陰へと移動することになった。
木の下のベンチに私が座るとその隣にルッチさんが腰かけた。
ハットリは私の肩にとまったまま、首をかしげている。
「澪、弁当助かった。ありがとな。」
ルッチさんはなんだか一段と低い声で言った。
はっ!
ルッチさんの地声!
これって実はレアなのかも…。
って、そこじゃない!
「そうは言っても、ルッチさんに迷惑かけちゃいましたよね。」
「いや、別にそんななことはねぇ。」
「でも、何か怒ってません…?いつもよりも声は低いし…。」
私がそういうとルッチさんが大きくため息をついた。
ほら。怒ってるんじゃないか。
「お前、ガレーラに来るのに大丈夫だったのか?」
「大丈夫って、どういうことですか?」
「ほら、変なやつとかに絡まれなかったのか?」
「あ、それは大丈夫でしたよ。ヤガラちゃんも可愛かったし。」
私がそう答えると、安心したかのようにルッチさんが答えた。
「…そうか。」
「…もしかして、心配してくれたんですか?」
「…。」
「ルッチさーん。」
「…。」
「ルッチさん!ルッチさん!」
黙りこくったルッチさんの服の裾を引っ張ってみながら、呼んでみる。
「あぁ、そうだよ。心配してたんだよ。お前、どんくせぇからな。」
「ルッチさん、ひっど!私、そんなにどんくさくないですよ!」
「あ〜、あとお前鈍いしな。」
「え!また更に私のことけなしちゃうんですか?」
「フッ。誉めてんだよ。」
「そ、それはどこがらへんをですか??」
「少しは考えろ。」
「考えるとか、頭使うのは嫌いなんで勘弁です。それより、ルッチさん、わたしもガレーラで働けませんか?なんか、何もしないでいるなんてルッチさんに悪いじゃないですか!」
久しぶりに真剣な顔して、ルッチさんにお願いしてみる。
少し考えた後にルッチさんは口の端に笑みを浮かべて、おっきな手を私の頭にのせてくしゃくしゃっとした。
わたしはただ、笑う彼の姿から、
目が離せなかった。
その笑顔は反則だから(お前も働いてみるか?)
(え?本当ですか?)
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