◎ 合格点とお達し
大将青雉(と呼ばれる人)が来てから、
長官がなんだかピリっとした雰囲気をかもしだし始めたので、この人がさっき言ってたお偉いさんなんだろうなぁと思った。
青雉はドカっと私とルッチさんの座るソファーの前に腰を下ろした。
私を見る青雉の視線からはほんのりとだが殺気というのか寒気を感じた。
敵を威嚇するような、疑うような不思議な感覚がする。
一瞬私の身がこわばったのを見たのだろうかルッチさんが青雉を睨みつけた。
それに答えるかのように、青雉はルッチさんの方を見て言った。
「そんな顔すんじゃないよ、ルッチ。」
「大将青雉、少々やり過ぎなのでは?」
「はいはい。で、アンタ、どっから来たの?」
と、こちらを向いて言ってきた。
先ほどと違って殺気などは感じなくて、この人が少しばかりわたしに気を許してくれたのが分かった。
そして、質問の後に青雉はニッコリとほほ笑んだのだ。
わたしはそのおかげで気持ちが楽になり、先ほど長官に話したのとと同じように青雉に話した。
「はーん、なるほどねぇ…。
そんで澪ちゃんはこっちの世界に来ちゃったわけなのね。」
「そうなんですよー。びっくりしました。」
「見たところ普通の一般人ってところだな。」
「超一般人です。」
「じゃあ、こんな危険なところにいるより、大人しく一般市民やってた方がいいんじゃないの?」
「え…?」
「CP9の奴等とつるんでたりしたら…」
「失礼ですが大将青雉、こいつはCP9の実態を把握していない。」
口を挟んだのはルッチさんだった。
「あらら、それなのにルッチといたのか。それじゃあ教えてあげようじゃないの。意外とあっさり一般市民に成り下がるかもしれないし。」
「ですから、それはあとで私が…」
「あ、あの、差し支えがないのならわたし、今聞いても大丈夫です。」
「澪…。」
「じゃあお嬢ちゃん、よく聞くんだぞ。いいか、サイファーポールっていうのはな、世界政府直下の諜報機関だ。だけど、こいつらの所属するCP9っていうのは存在しないはずのCPなんだ。
こいつらは『闇の正義』の名の下に、非協力的な市民の殺しを世界政府から許されてんだよ。任務遂行のためならどんなことだってやる奴らだ。そんな奴らと一緒にいるってことがどんな意味だか、お嬢ちゃんでもわかるだろ?」
「わ、かりま…」
「分かってねぇよ。こいつらがどんなに非道なことをしてもあんたはそれに耐えられるのか?」
「それは、私にもその状況になってみないと分かりません。でも、さっき青雉さんが述べたような理屈じゃないんです。ただ、ただ、側にいたいっていうそれだけのことなんです。」
私がそう言うと、青雉は大きく息を吐いて
「合格。」
と言った。
「え?」
「だから、CP9専属の世話係に合格って。」
「世話係?」
驚いたのはルッチさんだった。
長官はびっくりして飲んでたコーヒーを吹きだした。
「そう。澪ちゃんが、もし世界政府や海軍になにも気害を加えないってのが分かったら、CP9の保護下にいれてもいいって、上のお達し。」
「「「はぁ!?」」」
その場にいる3人、わたしとルッチさんと長官が同時に叫んだ。
「あれ、いやだった?なんなら澪ちゃん可愛いし、俺の部下になっちゃう?」
「大将青雉、お言葉ですが、こいつは俺の、なんで。海軍にやるなんてとんでもない。他のムシが寄ってきたらどうするんですか。」
「それはもちろん、あんたが抹殺するんでしょ。」
「無論です。」
「あーあ、こりゃ参った参った。俺は殺されるなんてまだまだごめんだからよぉ、さっさとお暇するぜ。あ、澪ちゃん、そのネコが嫌になったらいつでも俺のところに来ていいからな?」
そう言うと青雉はだるそうにしながら教官室を去っていった。
追うようにして、青雉の見送りにと長官も出ていった。
ルッチさんの機嫌が先ほどより悪くなったのは言うまでもないだろう。
合格点とお達し(これでルッチさんといてもいいんですね?)
(当たり前だバカヤロー)
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