◎ いざゆかん
いつもの如く、ルッチさんは急だった。私が買い物から帰ってくるやいなや、ぎゅーっと抱きしめてくれて、あまりにも突然な彼の行動に頭がついていかなかった。
そのまま、買い物袋を手に提げた私ごと横抱きにしてリビングへと運んで行った。
「ただいまかえりました。」
と、伝えると、
「おう、おかえり。」
と返してくれるようになったのですね。
なにこれ新婚ですか?すごい幸せなんですけど。
そんな幸せの余韻に浸ってるのもつかの間。
明日にはエニエスロビーに行くとさらっと彼は私に告げた。
いくらなんでも急すぎませんかね。毎回毎回びっくりですよ。
そして既に今は海列車に揺られてエニエスロビーへと向かっています。あらら、あんなにとおくに小さくウォーターセブンがあるわ…。
「ところで、なんで突然エニエスロビーに?」
「長官に呼ばれたからだ。」
「え、これってもしかして強制連行ってやつですか?」
「まぁ、お前は異世界から来た人間だからな。上の奴らも気になることがあるんだろう。」
「もしかして、私尋問とかにかけられたりしちゃうんですか?」
「そうなるだろう。」
「えー、ものすごく嫌なんですけど…。上の人とかって言われるとホントにこわいなぁ。」
「安心しろ、お前には危害を与えるような輩は俺が消す。」
……ちょっと、聞きました、今の?
いきなり甘い言葉はずるいですよ。
おもわずキュンとしちゃいますねこれ。
「…なにか言いたそうな顔だな…。」
「ルッチさんがあまりにも素敵だったので思わず見惚れてしまいました。」
「そういうことばっかり言ってると今ここで押し倒すぞ?」
「ちょ、何言い出すんですか?!ここは海列車ですよ?!」
「列車じゃなきゃいいのか?」
「だから〜、そうじゃなくて!」
だめだ。彼と話していると話が違う方向へといってしまう。
「そ!それよりも!長官ってどんな人何ですか?」
「チッ…、普通、じゃあねぇな。」
今この人舌打ちしましたよね?チッって言いましたよね?
「てことは?変!?」
「そんなところだろう。会えば分かるだろう。」
「変な長官なのかー。ちょっと安心しました!長官っててっきりガチガチのギチギチタイプだと思ってましたので。」
「お前の擬音語が何を意味してるかは大体しかわからねぇ。」
「大体わかればいいですよー!」
そんな他愛もない(?)話をしていると、なにやら海軍の海兵の皆様がヒソヒソ話すのが聞こえた。
「あの、ロブ・ルッチ氏と対等にはなすなんて…。」
「それどころか、口答えまでしているし…。」
「いったい何者なんだ彼女は…。」
「聞くところによると、ルッチさんって評判悪いんですか?」
「ほざけ。俺は超エリートだ。そして、突っ込むべきなのは一番最後だろ。」
「?」
「あいつらがお前を見ているのが好かん。今すぐ消してもいいか?」
「そ、そんな!だめです!無駄な殺生ごとは控えた方がいいってカリファが言ってましたよ。」
「まぁ、面倒だしな。」
そんなこんなで冷や汗かきまくりな海軍の海兵さんたちは殺されずに済んだのでした。
めでたしめでたし。
いざゆかん(長官、連れてまいりました。)
(あ、あなたが長官ですか初めまして!)
(あ、こちらこそ。)
prev|
next