愛と恋と… | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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 豹の見解
朝の日差しが一段と強くさす。
遮光カーテンとはいっても、白ではあまり効果は出来ないと改めて思った。

まぶしくて閉じていた目を開けると、そこにはいつもの真っ白い天井が浮かび上がった。いつもと違って静かな朝だ。いや、この時間は朝と言うのには遅すぎるか。

今日は、眠っているときでさえも香ってくるコーヒーの香りがしない。いつものうるさい声が聞こえない。

あぁ、そうか。
今日は澪がいないのか。

けだるい体を起こして部屋を見渡す。
確かにそこには彼女の姿はなかった。
いつもの止まり木にハットリが止まって俺が起きたのを確認するとクルッポーと一声鳴いた。
今日はガレーラの創立記念日ということもあって職長を含めすべての職人たちが休みになったのだ。

昨日の夜澪は俺にこう言った。

「明日はせっかくの休みなんですし、ルッチさんはゆっくり休んでくださいね!」

「ん?お前はどうするんだ?」

「えっと…、明日はデートなんです!」

「あ?」

「カリファと一緒に買い物に行くんです!」

デートなんて言い出すものだから、一瞬怒りのような気持ちがこみ上げてきたのだが、その次に発せられたカリファという言葉に安堵した。

そういえばカリファに彼女とともに出かけてほしいと頼んだのを思い出した。

「そうか、気をつけていって来い。」

俺は快く彼女を送り出すことにした。
すると彼女はぱぁっと顔に笑みを綻ばせて、いつものように笑顔を見せた。

「ルッチさんにお土産買ってきますね!」

そうだ。俺は彼女のこの顔が見たかったんだ。

…*…*…*…

彼女が勤務中に倒れた時は正直驚いた。
すぐさまに駆けつけられたからあの時は本当に良かった。
確かにあの時、俺はイヤな感じがハッキリと胸をよぎったのが分かった。
CP9として任務をこなしているときでも、こんな感覚を感じることはほとんどないに等しいのに…。
そう、あの時だけは違ったんだ。

彼女が倒れたのは過労のせいだと医者は言っていた。

しかし、俺はこの時、別の見方も考えていた。

澪がこの世界に来た時、彼女は眠ったままだった。
俺の気づかないうちに俺の隣りに寝ていた。
最初はどこの女が転がり込んできたのかと勘違いしたが、家では絶対女を抱くことをしないから、おかしいということに気付いた。

そしてあまりに突然のことだったからスパイということも考えたが、そんな人の布団でグースカ寝ているスパイなどいるはずもなく、いくつか質問をしてみたがそんな素振りはなかった。

では、この女はどこから来たんだろうか。

その時に、俺は彼女が異世界から来たと予測し、それは的中していた。

それからこの世界で日々をすごしていくにつれて、彼女は成長していった。
しかし、どんなに強がっていても、いくらこの世界に順応してきているといっても、その反動は身体に必ず返ってくるのだ。

そう。
俺は、もしかしたら、彼女は再び戻るかもしれないのかと考えたのだ。

が、どういうわけか彼女は戻ってきた。
理由はなんだか分からないが、そんなものは関係ない。
彼女が俺の側にいること。
いつのまにか、そのことが俺のすべてになっていたんだ。

…*…*…*…

テーブルの方へと歩いてみると、そこには彼女の優しくもしっかりとした字で書かれた手紙が残されてあった。

≪ルッチさんへ
 ホントはきちんと
 行ってきますを言おうと思ったのですが、
 あまりにも気持ちよさそうに寝ているので、
 そのまま行くことにしますね!
 朝ごはんと昼ごはんは冷蔵庫に分けて置いてあります!
 夜には戻ってきますね。
       澪 ≫

それを呼んでフっと口角が上がった。
なんて可愛い奴なんだか。
帰ってきたら彼女のわがままを一つ聞いてやることにしようと思った。

そんなときにこの部屋の端で電々虫が鳴り響いた。
相手は一人しかいない。
一体何の用があるんだろうか。

「…はい、こちらルッチ…。」

『おおおおおおい!!!なに冷静沈着になってんだ?!あぁ!?』

「それで用はなんですか、長官。」

『すっとぼけんじゃねえええよ!!お前んとこにきた異世界人を本部に連れてこいと前々から言ってただろうがあああああああ!』

「(忘れてた)」

『忘れてただろおおお?なぁ、今絶対わすれてたよな???いつか連れてくって言ってからまったく来るそぶりもねぇし。早く連れて来やがれ。』

「そうですね…。では、明日うかがうことにします。」

『おう、分かった、ってうわあああ!あっちいいいいいんんだよこのコー』

ガチャン

そうだ。
政府の人間からしたらこれは重要なことだったんだ。
仕方ない。
上の命令に従うしかねぇ…。

まぁ、彼女を渡す気はないが、な。

今は、
ただいまと言って笑みを浮かべて帰ってくる彼女を抱きしめておかえりという準備をしてるか。



(澪、明日はエニエスロビーへ行くぞ)
(だから、なんでいつも突然?!) prevnext
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