愛と恋と… | ナノ
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 穏やかな朝
ルッチさんが私のことを好きだと言ってくれた。

別段とステキなシチュエーションではない。

子供のころに夢見た場所じゃない。

放課後の夕陽のさしこむ学校でもない。
誰もいない昇降口とも違う。
ましてや私の元いた世界ではない。

でも、
私はこの世界で暮らしていて、いつの間にかルッチさんに恋していた。

最初はケンカばっかりで私のことなんて常にバカ呼ばわり。
絶対服従の主従関係だし歯向かうなんて言語道断だった。

けれども、
そんな日々も今に繋がっていると思うと、とても幸せを感じる。

「おい、いい加減泣き止めよ。」

「…ぐすん。ルッチさんが悪いんですよ。」

「俺が何したって言うんだ。」

「私のこと好きだなんて言うからっ!」

「何がいけないんだ。お前だって俺に言っただろう。"ルッチさんのこ"「ぎゃー!言わないでください!!」」

ルッチさんが昨日の私だとか言ってマネをしだすから、必死で抵抗する。

近くにあったクッションでぽかぽか叩こうとすると

"紙絵"なんて言ってかわすから為すすべがない。

まったく一般市民にCP9が六式をだすのは反則だと思う。

私もこれでは太刀打ちできないし、反撃に出られても困るので、朝ごはんにしましょう!と適当に返した。

台所に立ちエプロンをつける。
冷蔵庫の中を覗いて、ルッチさんに尋ねる。

「ルッチさん、何が食べたいですか?」

「…なんでもいい。」

また、これか。
なら、スクランブルエッグとトーストとコーヒーでいいかな。

「じゃあ、簡単に作るので、シャワー浴びてきてくださいね!」

「…誘ってんのか?」

「違いますっ!!!!!もう、ほら!」

そう言ってルッチさんをシャワー室に行くように促す。

…まったく、あの猫男、いや豹男は何をいいだすんだ、早朝から。

ブツブツいいながら、野菜を包丁出来る音をトントンと規則正しく鳴らしているとハットリが起きたのかクルッポーと一声鳴いた。

「おはよう、ハットリ。」

そう言ってハットリのほうを見ると上機嫌に私の肩へと飛んできた。

「ハットリ〜、君の主人は本当にアレだよね。」

ポー?

って小首をかしげるしぐさをした。
主人に似なくてほんとに可愛いなぁ、なんて口がさけても言えないけど。

シャワー室からはシャワーの音が聞こえるからルッチさんはまだ出てこないだろうと見越して目の前のハットリに話しかけた。

「だってね、なんか強引だし、いつも自分ばっかだし、ほら、ちょっと自己中だし、」

包丁をとめてハットリを見ると、悪いところばかりあげていく私にハットリが困ったようなかおをするから面白い。

「でもね、そこもステキなんだと思ったんだよね。口悪いけど言ってることは正しいもん。変なところで優しくて、それでいて寂しがり屋だし。……うーん、なんやかんや、君の主人は素敵な人だね!」

そう言うとハットリは嬉しそうに私の周りを飛んでいた。

そして、また規則的な音が響く。

材料を切ってからは簡単だ、さっと炒めて出来上がり。
やかんにかけていたお湯もそろそろ沸く頃だろうし丁度いいだろう。

ガチャ

シャワー室の開く音がする。

「あ、ルッチさん、出来てますよ!コーヒー淹れますね。」

そうして、コーヒーを淹れながらルッチさんを盗み見する。

タオルで髪の毛をごしごしする仕草には思わず見とれてしまった。

「澪、零れてるぞ。」

「わっ!ぎゃー!すみません。」

急いでタオルを持ってきて零したところを拭き取る。

「フッ、俺に見とれてたか?」

「そ、そ、そんなことは…」

顔をあげると、
私はそのままルッチさんに
キスをされていた。

話しているこの短い時間に
ルッチさんが近づいてきて私の顎をとらえたと思ったらすでに二人の唇はくっついていたのだ。

そのまま、ルッチさんはゆっくり唇を離した。

「そんな顔すんじゃねぇ。とまらなくなるだろ?」

「ちょ、何言ってるんですか?!ていうかなんで、」

「俺が聞こえてないとでも思ったのか?」

「だって、シャワーだってでてたし…。」

「俺の聴力を侮るな。」

「…聞いてたんですか?」

「あぁ、全部な。」

「……。」

やばい。
全部聞かれていたとは思わなかった。
恥ずかしくて顔があげられない。

「フッ。まぁ、お前らしいな。」

そう言って今度はおでこにキスを落としてテーブルについて食事を取り始めた。

人の気も知らないで!!!



(あ、ルッチさん時間!!)
(剃で、10秒だ。) prevnext
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