◎ Action
現実世界から飛ばされてウォーターセブンにやってきて約3か月が経ちました。
今は、
お客様の接待を終えて秘書室でカリファと一緒に休憩をしています。
カリファの淹れてくれるコーヒーはあまり濃くならない豆をつかってくれるから
私にはとても飲みやすくて、これだとブラックでも飲めるんですね。
そうそう
相変わらずルッチさんとは主従関係のままですが、近頃なんだか私がおかしいんですね。
あ、おかしいのは元からというのは知っていますよ。
なんだか心がモヤモヤしたり。
心臓がぎゅーってなったり。
そうかと思えば上手く話せなかったり。
そうしてたら今度は動悸が激しくなったり。
顔が真っ赤になったりして。
そう、しかもそれ全部ルッチさんの前でしか起きないという。
書類を運んでいたときには、
『澪、大丈夫かッポー?手伝ってやるッポー。』
がしっ。
私の書類を持つ手とルッチさんの手が重なった瞬間、体が硬直して書類を落としてしまったり。
家に戻ってきてシャワーを浴び終わった後、首にタオルをかけてソファに座って新聞を眺めるルッチさんの風呂上がり姿にドキマキしたり。
ハットリと戯れる時に普段は見れないあり得ないくらい無邪気なルッチさんの横顔に
キュンとなったり。
おかしくなってしまいそうで、それから私はルッチさんを避けまくりです。
でも、…これはもしかして、
ルッチ感染病(?)??!!
やばい。
これはやばい。
感染してしまったら
100%死ぬでしょ。いや、120%死ぬでしょ。
「…澪、今のルッチが聞いたら泣くわよ?」
「いや〜、ルッチさんが泣くわけないよ…って、カリファ聞こえてたの?!」
「全部口から洩れてたわよ。」
「え?!どこから?」
「近頃なんだかってところから。」
「うそーん!」
「時に澪、あなた自分の心がおかしいって言ったわよね?」
そう言って上目遣いで私を見ながらコーヒーを啜るカリファの姿はとても美しかった。
「…はい。」
「おかしくなんかないわよ。」
「どういうこと?あ、もしかしてカリファもルッチ感染病にかかってるの?!」
「…感染病はもういいわ。私はルッチにはそんな感情もったことはないわ。」
そう言うとカリファは二口目のコーヒーを啜った。
…カリファ姉さん。
ますますわからなくなってしまいましたよ、私。
いったいどうしたっていうんですかね。
今まで通りに普通でいたいだけなのに。
そう願えば願うほど私からルッチさんが遠くなっていくような気持ちで…。
「ねぇ、澪、あなた恋をしたことないの?」
恋…?
意味的には
特定の異性に惹かれること。
また、切ないまでに深く思いを寄せることだったっけ。
「私ね、恋ってよくわかんない。前に岡崎ってひとが好きだったんだけど、その人にそんな感情すら抱かなかったよ。」
「じゃあ、それは恋じゃないのよ。」
「もしかして、今の気持ちが?」
「恋なんじゃない?」
その時バタンと秘書室のドアが開いた。
『澪はいるかッポー?』
「ルッチさん?」
ルッチはズカズカと入ってきて私の腕を掴んでカリファに言った。
「コイツ、借りてく。」
「どうぞ、ご自由に。」
Action(我慢できなくなった。)
(ちょ、えー?!)
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