チャラリラン〜♪
携帯が一通のメールを受信した。
マナーモードにしておいたはずなのに、音が鳴ったのでわたしは盛大に驚いた。危ない危ない。今が休み時間でホントによかった。
先に携帯の再度キーでマナーモードに設定して、メールを確認した。
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From: デイちゃん
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Sub: 昼休み
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屋上にこい、うん。
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なんと勝手な。こちらの都合ガン無視ですね!
まぁ、帰宅部で役員なども無所属なわたしに予定なんて何もないけど!
せいぜいお昼の購買合戦に参加することくらいかな。
あ、でも今日はお弁当だしその必要はないか。
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To: デイちゃん
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Sub: 了解です
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授業終わったら行きます
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火の粉が立たぬようにやんわりと返す。デイちゃん怒らせると怖いんだよな。最近はしばらく怒ってるところなんて見たことないけど。
デイちゃんからの返信はすぐに来た。ちなみに始業のチャイムはわたしがメールを打っているときにすでに鳴っている。どうせこの時間の授業はだるいとか言ってサボってるんだろうな。
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From: デイちゃん
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Sub: そういえば
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旦那も来るからな、
遅れたら怒られるぞ
(^O^)/
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まぁ、デイちゃんとサソリ先輩は中学の時から仲良しだから二人で行動してるのはおかしくない。そして、顔文字がおかしいことには突っ込みませんぞ。ここは突っ込んだら負けだ。
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To: デイちゃん
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Sub: 光栄です(棒)
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全身全霊をかけて
屋上に向かいます
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そう返信をすると鳥マークみたいな変な絵文字だけを返してきたので、返信に困ったわたしは放置することにした。
時計を見ると授業の終了5分前を差していた。授業はアスマ先生の現代文だ。しかし、残念なことに授業があと5分では終わるような気配はなかった。
いったいぜんたいどうしてくれるんだ。
すでに彼らは屋上にいるのだろう。遅れたら死刑(という名の焼きそばパン奢りの刑かわたしのお弁当強奪の刑)が執行されてしまう。
チャイムが鳴り終わったがアスマ先生は喋り続けている。
仕方ない、強行突破だ。
「〜であるから、筆者の主張は」
がたんっっっっ
だんっっっ
ばんっっっ
席を立って、教室のドアを開けて、閉めて全速力ダッシュをかます。
この間わずか2秒といったところだろうか。
「…藍夏は、よっぽど、腹減ってんだな。」
そう、アスマ先生が呟いて、ナルトくんが笑っていたのはもちろんわたしの耳には入らなかった。
そこから、体育帰りの生徒を交わしながら、2階の階段を駆け上って、屋上のある3階までノンストップノーブレーキで駆け抜ける。
ばんっっっっっ
「…おい、2分30秒もかかってんぞ。」
「おせぇ、焼そばパン奢りだな、うん。」
「はぁはぁ、ぜぇぜぇ、2分30秒とか結構ベストな記録ですよね???今シーズンもっともいい記録じゃないですか???なのに、こんなわたしに焼きそばパンなんて…。ぐすん。」
そう、泣き真似をすると焦ったのはデイちゃんだった。
「うっ、すまねぇ、許してくれ藍夏、うん。」
「仕方ない、いちご牛乳で手を打ちましょう。」
「まて、いちご牛乳ってなんだ、いちごミルクだろ?うん。」
「はぁ?!何言っちゃってんですか?!いちご牛乳に決まってるでしょう?!なんでいちごだけジャパニーズで牛乳だけイングリッシュにしちゃってんですか?!残されたいちごが可愛そうじゃないですか!!どうせならストロベリーミルクにしちゃうしかないじゃないですか!!!」
「なげぇっっっ!!!!!!!」
「おい、なに俺を邪険にして話を進めてんだ。しかも、いちご牛乳かいちごミルクかってバカかお前ら。いちご・オレに決まってんだろうが。」
…サソリ先輩がコーヒーの缶を飲みながら答えた。
「「旦那(サソリ先輩)…。」」
わたしとデイちゃんが憐れんだ目でサソリ先輩を見る。
「なんだ、その目は?やる気か?あん?」
「「それはない!!!!!」」
「旦那、言っとくけどいちご・オレは最終形態なんだぞ、うん。」
「言ってる意味がわからねぇぞ、デイダラ。なんだ最終形態って。いちごなんちゃらとは次元が違うのか?」
「そうだ、違うんだ、うん!」
「デイちゃん、なんか適当すぎる。」
「というか、なんでお前らはあんなもん飲めるな。大体あれの着色料はむs」
「「ゆーな!そこは言っちゃダメ!!美味しいんだからいいの!!!」」
「っていうか、大体サソリ先輩も、口開けばすぐにやんのか?ってヤンキーすぎる。怖い。」
「うるせぇ、小娘が。」
「小娘とかひどっ!別にいいけど!」
「なら、いいじゃねぇか。ほら、お前の分だ。」
そう言ってポンっとサソリ先輩の好きな銘柄のカフェオレを渡された。否、これは投げられたが正しいが。
「どうせ、ブラックは飲めねぇんだろ?」
「イエッサー!」
「お子ちゃまめ。」
「もう、なんでもイイっす!ゴチになりまーす!」
「お前らしいな。」
ゴクゴクとカフェオレを飲んでたら、気を良くしたサソリ先輩から頭をくしゃくしゃになでられた。
「藍夏は昔から変わらねぇな。」
「変わりました。1センチ身長伸びてましたもん。」
「そんな話じゃねぇよ。」
「そういうサソリ先輩は変わりましたね。一気に不良に。あ、デイちゃんも。」
「嫌いか…?」
「不良は嫌いですけど、先輩たちは別です。」
そう答えると、サソリ先輩はフッと笑って、今度はデイちゃんもわたしの頭を撫でた。
「痛い、痛い、禿げる!」
「問題ねぇ。」
「そうだ、別にいいんだ、うん。」
「学校生活には慣れたのか?」
「はい、なんとか友達もできました。」
「なんかあったら、すぐにオイラたちに言えよ、うん。藍夏を苛める奴はボッコボコにしてやるぞ、うん。」
「当たり前だ。」
「先輩たちが言うとシャレになんないです。」
でも、こう思ってくれる人がいるなんて、本当に嬉しいことだ。
デイちゃんは幼馴染でちっちゃい時から仲良しだから、そのままデイちゃんと今も呼んでいる。サソリ先輩は中学校に上がった時にデイちゃんから紹介されてそこからそのまま仲良くなった。だから、彼は先輩呼び。ちゃんづけにしようものなら一睨みされるのだろう。
高校に上がってからもその関係が壊れないでいてくれるものだからほんとうに有難い。
とまぁ、そんなこんなで先輩たちと昼休みを過ごしていると予鈴のチャイムが鳴るわけです。
「あ!戻らないと!」
「あ?なんだ戻るのか?」
「はい!わたし自称、優等生なので。」
「自称優等生は授業中にメールしたりしねぇだろ、うん。」
「あれは、若気の至りです!」
それじゃ、と言って、ドアをくぐってから、ひょこっと顔を出して先輩たちに向かって言っておいた。
「先輩たち、ちゃんと授業出て進級できるようにしてくださいね先輩と同級生なんて嫌ですからね!!」
そう言うと、二人とも「おう!」と言って、人差指と中指をくっつけて、頭の上でひょいっとわたしの方に向けるという、いつものポーズで返してくれた。わたしはそれに応える。
これは昔からのお決まりだ。
わたしたちの約束のしるしなのである。
校内に戻って午後も頑張るぞ〜と一人背伸びをする。
そして、階段をおりてる途中に重要なことに気づいた。
お弁当食べ忘れた。
(次の授業は出るか、デイダラ。)
(約束だからな、うん。)
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