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桜とともに舞った君
学校の手前にある坂を自転車で思いっきり駆けのぼる。
それは想像していたものよりもきつくて、ペダルをこぐ足についつい力を入れてしまうので、中学から使っているわたしの自転車は、キィキィと悲鳴を上げる。

わたしも大変なんだよ、分かってくれよ。
と、心の中で愛車に呟きながら、必死に酸素を取り入れる。

レンガ細工が敷き詰められた道路の脇には桜並木が並んでいる。
今年も満開だなぁ、と思いながら、
徒歩で登校する生徒の横を通り抜ける。

よし、ここまでくれば大丈夫。
のぼりきった先には私の通う木の葉高校があった。

自転車を止めて、しっかりと施錠をして校舎へと向かう。
この前施錠を忘れたときに検査に引っ掛かってしまい鍵を取られてしまったので、今回は念には念を入れて確認する。取られた鍵を取り返しに、生徒指導担当のアスマ先生のもとまで行かなきゃならないなんてごめんだ。

今日の音楽の気分は比較的アップテンポな曲だった。

ヘッドフォンから流れる曲はわたしの心をウキウキとさせた。
まぁ、このヘッドフォンっていうのがよくてね、普通のイヤホンじゃ聞こえないベース音やドラム音まで拾ってくれるまさにハイテクヘッドフォンなわけだ。
しかも最近買ったばかりで、限定品が手に入ってこっちとしてはホクホクなのだ。

あぁ、やっぱり買ってよかった。
高かったけど、ミナトさんに無理言って(しかも内緒で)取り寄せしてもらってよかったよ。

わたしはその日最高の気分で今日の学校生活を迎えたわけだった。

廊下を歩いているとポツンと一つの男子の集団があった。確かヒナタから聞いたことのあるイケてないーズだったか?

イケてないーズにキバがいるということは分かっている。キバは同じ中学から一緒にこの高校に進学してきたから知っている仲で犬好き同盟を組んでいるが、ほかはイマイチよくわからない。

「なぁ、キバあいつのしてるヘッドフォンって…。」

ポニテのひとがキバに話しかける。

「んぁ!?あれは確か限定もののハイテクなやつじゃねーか!」

そして犬塚がびっくりしたようにこっちを見る。

「ん?それってミナトさんが言ってたやつ?」

ぽっちゃりした人はわたしのヘッドフォンを指さしてるのかな?

「うっわ〜!羨ましいってばよ!」

やけに金髪の子が羨ましそうにしてる。
でも、あの金髪どこかで見たことあるなぁ…。

そんでもって、ヘッドフォンのこの素晴らしい音に酔っていればこんな会話も聞こえないわけです。

「おい、藍夏!藍夏ってば!」

そう、こうして肩を叩かれたりしなければ気づかないんです。
結構危険なんですね。
周りに気を使わないとぶつかって転んじゃったりしますし。

「…んあ?あぁ、キバ!おはよ。」

「おう、おはよう!ってお前人が呼んでんだから気づけよな!」

「だって、仕方ないじゃん。この音に惚れちゃあ、他のことへの興味も関心もさらさらありませんよ!」

「やっぱり、こいつそうだよな?!」

「ちょ、人の大事なヘッドフォンをこいつ呼ばわりしないで頂戴!この子は大事な相棒なの。ジョニーなの!」

わたしとキバのこんな会話に吹きだしたのは金髪の子だった。

「ぶはははっ。お前ヘッドフォンに名前つけるって。ちょーウケルってば!しかもネーミングセンスねぇし。」

「ナルト笑いすぎだよ。」

おっ、ぽっちゃりくんがさっきの金髪くん、否、ナルトくんを制止してくれた。
この人絶対いい人だ。

爆笑するナルトくんをよそにわたしはぽっちゃりくんに話しかける。

「あなた、めちゃくちゃいい人ですね!ぜひ、お友達になってください!」

手を差し出すと意外にもあっさり握り返してくれて

「わ、いいの?僕は秋道チョウジっていうんだ宜しくね。」

「わたし井上 藍夏って言います。よろしく!」

あ、チョウジくんってすごくまろやかなオーラだなぁ。
すっかり彼の出すオーラに飲まれて和んでいると騒ぎ出したのがナルトくんだった。

「ちょ、藍夏ちゃん!おーれーは?」

「わたしのジョニーをバカにするやつは嫌だ!」

「そぉんなぁ〜!俺とも友達になってくれってばよ〜。」

わたしにナルトくんが懇願してきていて、どうしようかな〜、なんてしぶっていると、口を開いたのがポニテの子だった。

「それよりも、井上さんの、そのジョニーはどこでしいれたやつなんだ?」

「お、少年、ジョニーの出身を知りたいのかね?いいだろう、教えてやろう。なんとジョニーはね、ここらでは有名(これは内緒だけど)な、波風音楽専門店のミナト(敬愛)さんに仕入れてもらったんだよ!羨ましかろう!わっはっはっは!」

そう言ってやると、食いついてきたのはナルトくんだった。

「うっそーん!父ちゃんの仕入れてたやつってこれだったのかよ〜!」

そうだよ、その父ちゃんだよ、ナルトくん。

「まじかよ!ミナトさん、全然教えてくれなかったのに!」

ん?待って、今、ナルトくん父ちゃんって言わなかった?ねぇ、キバ?

「ホントにビックリだよね。この前キバが聞いても教えてくれなっかったもんね。」

あれ?なんで?ミナトさんってナルトくんのお父さんなの、チョウジくん?

「どんなやつが持ち主かと思ったらアンタだったからなぁ。」

このポニテの人勘が良すぎではないか?

「なんで俺だけポニテの人なんだよ。」

「だって名前知らないもん。ってあれ?わたし口に出てた?」

「「「「思いっきり。」」」」

私としたことが…。
やってしまった。

「それよりも、ナルトくんのお父さんがミナトさんなのは本当なのですか?!」

「おう、波風音楽専門店は俺の父ちゃんの店だってばよ!そんでもって、店長は俺の父ちゃんだってばよ!」

「先ほどは大変失礼しました。ジョニーとでもなんとでも呼んでやってください。そして、わたしとは友達じゃなくて、大親友になっちゃいましょう!そんでもって、ミナトさんに大親友割効くか交渉してください。」

まぁ、ナルトくんがわたしの尊敬するミナトさんの息子だったというわけで、それはもう大変びっくりしたわけで、でも、なんやかんやナルトくんと大親友になっちゃいました。

「ひゃっほ〜!藍夏ちゃん!これからよろしくだってばよ〜!」

「うん、よろしく!」

そんなときに予鈴も丁度よく鳴るもんなんです。

「おっ!予鈴じゃん急がねーとな!」

反応がいいのがキバ。

「一時間目からアスマとかついてねーよな!」

おっ、実は仲良しと見たぞポニテくん。

「ホントだよ、遅れたら何言われるかわかんないし。」

それは遅刻常習犯の台詞ですねチョウジくん。

「じゃあ、またな藍夏ちゃん!」

そんなニカっと笑ったらミナトさんそっくりじゃん、ナルトくん。

「はいはーい!またね〜!」

そう言って別れて、教室に入って気づくわけです。

「あれ!?藍夏ちゃん!?」

「え!ナルトくん同じクラスだったの!?」


新学期なんて意外とそんなもんです。


(あ、名前、聞き忘れたのが一人いた。) prev / next