木の葉高校に入ってから2度目の春が訪れた。登校途中に現れるこのレンガ細工の坂道にも慣れたもので、今では息を切らすことなく颯爽と愛車で滑走することができるようになった。
いつものように指定された場所へ愛車を止めて昇降口へと向かう。
確かにいつもざわついているそこだが、今日だけはまあ別のざわつきをしていた。その理由は季節がただ春なだけではない。
そう。
今日はクラス替え発表の日なのである。
そして、いつもは愛車を止めたらヘッドホンをするわたしだが、今日はあちこちから聞こえる誰々と離れたーだのまた一緒だったーだのという声をBGMにして歩いている。
クラスが書いてある紙の前で足を止めて、自分の名前と番号を探す。普通の学校と違って、この木の葉高校はあいうえお順には並ばないので探すのに苦労する。とりあえず、端から自分の苗字を探すことにした。
A組、B組と名前を確認してきたが見つからなかった。
そしてC組。
井上……
井上……
井上 藍夏……
お、下の方にあった。
何でこんなに下にあるんだろう。いったいこれは何順で並んでいるのだろうか。選択科目とかかな。疑問は募るばかりだ。
あれ、担任は誰だっけ、とまた上の方へと視線を移す。
…………はたけカカシ。
予想はしてたけど、うまーくなるものだなぁと関心している。
自分の名前に必死になりすぎてほかのみんなの名前をみつけられてないが、紙の前にいつまでもいるのは邪魔になるだろうし、クラスに行けば分かるだろうとその場をあとにした。
2-C
そう書かれてあるクラスのドアの前で止まり、ひと呼吸してから戸をあけた。そこには見慣れた金髪の彼や顔にトレードマークがある彼、更にはポテチを持った彼や、ポニーテールの彼までがいた。嬉しさで、こちらに気づいておはようと言ってくれる言葉を無視してしまったが、急いで彼らのもとへ駆け寄った。
「え!?もしかして、みんな同じクラスなの!?」
「ばーか、んな訳あるかよ。」
相変わらず言葉が刺々しいキバ。
「本当にそうだったら良かったんだけどねぇ〜。」
新学期でもポテチを欠かさないチョウジくん。そして今日もまろやか。
「まぁ、俺と藍夏ちゃんは一緒だってばよ!」
そうなのかナルトくん。わたしたち、去年みたいにカカシ先生に脅されながら生きてくしかないね。
「そう言ったって普通にこうしてあつまってんだから、クラスなんて関係ねーだろ。」
お、シカマルくんさすが。正論すぎるぞ。
「とりあえず、分かったのはナルトくんとわたしは同じクラスってことと、これからもよろしくってことだね!」
わたしがそう言えばみんな納得したように笑ってくれた。
「今年は色々と行事があるし楽しみだな。」
キバは行事に熱い男だから仕方ないね。
「僕は体育祭の代わりにある文化祭が楽しみだなぁ。」
それは模擬店があるからだねチョウジくん。
「俺は修学旅行が楽しみだってばよ!」
うんうん。みんなでお泊り最高だよねナルトくん。
「まぁ、今年は俺たちも本格的に活動するし、藍夏にも手伝ってもらうぜ?」
はじめは、シカマルくんはいったい何を言い出したのかと思ったが、すぐにそれはわかった。
「あ!文化祭!ってことはみんな演奏するのか!写真なら任せてね!カッコよく撮るからさ!」
そう言って笑えば、みんなもまた笑顔をみせてくれた。彼らの演奏はまだ聴いたことないが、きっと良い演奏をするんだと思う。シカマルくんの演奏は少しだけだが聴いたことあるが、それだけでもよかった。みんなで演奏するならまたさらによくなるだろう。早く聴いてみたいという気持ちが高まってきた。
頑張ってねと声をかければ、去年のようにタイミングよく予鈴が鳴り響いた。
じゃあまたとC組を去るキバとチョウジくんとシカマルくんをナルトくんと見送ってから席に着く。きっと本鈴が鳴ってから3分後に、わたしが長々と答えを待たせている彼が、やる気の無さげな格好で欠伸しながらゆっくりと現れるだろう。わたしは銀髪の彼との保たれたこの距離感に今はハマっていたかった。それが心地よかったのだ。ごめんねとありがとうが混ざる気持ちと、嬉しいような嬉しくないような、そんな感情を抱えて新学年は始まりそうである。
はじめまして、ではなく2度目まして。
(はーい、担任のはたけカカシです)
(今回の手伝いも目が合っちゃった藍夏ちゃんで)
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