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「#幼馴染」のBL小説を読む
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紫水晶に魅せられて
卒業式を間近に控えた2月の末。

授業なども短縮の時間割りに切り替わり、放課後の時間にだいぶゆとりができた。いつものように図書館で自習をしていたが、喉が渇いたためにシカマルくんに教えてもらったあの自販機に行きいちご牛乳を買った。ちなみにあの技は未だに成功していない。何度かチャレンジしてみたが気力と体力を失っただけだった。今度シカマルくんにコツでも教えてもらおうかな。

飲み物を買った帰り道に名前を呼ばれて、お菓子もあるわよというその言葉に釣られて空き教室に入った。そこで行われていたのはなんと恋バナというJKらしいことであった。

行っていた人たちといえば、わたしの数少ない女子友人であるサクラといのとヒナタだ。

たまたま通りかかっただけだが、ここでわたしを見つけなかったら呼ぶつもりだったとか言われてちょっと嬉しくなった。

「ねー、藍夏!聞いてよー!サスケくんがねー…」

「そうなのよー!サスケくんがー…」

「ちょっと、デコリン!いまわたしが藍夏に話してるのよ!」

「うっさいわねーいの豚!わたしだって藍夏に話したいのよ!」

この2人の言い合いが段々とヒートアップしてくる。そんなわたしのために争わないでなんて悲劇のヒロイン振るのもいいかもしれないが、生憎そんな容姿は兼ね備えてないし、むしろこの2人に挟まれておろおろしているヒナタにやって欲しい。うん。私得。

そろそろ止めねばと思って2人に声をかける。

「はいはい、そこまでー!どっちの話もちゃんと聞きますよ!」

とりあえず2人の争いはおさまった。そしてここから甘い甘い……?恋バナトークがはじまる。2人のサスケ自慢はものすごい。彼を褒める様は山よりも高く海よりも深くってやつですね。愛ってすごい。

確かに彼は頭もいいしスポーツだってできるしイケメンだし、性格にはやや難があるがそこもカッコイイって2人は言ってるわけだし、納得してるなら全然構わないと思うよこれからも頑張れという趣旨を言えば、そうよね!なんてさらに意気込んでいた2人がいた。

そして、話題は思わぬ方向に飛ぶ。

「で、ヒナタはどうなのよ〜?」

ニヤニヤしながら話を振ったのがサクラ。

「そうよ〜?この前、キバと2人で帰ってるところ見たわよ〜?」

この展開を予期していなかったヒナタは2人のこの言葉に更におろおろしてしまっていた。そこも可愛い。キバよりもむしろわたしを選んで欲しい。おっと話がそれた。

「なっ?!キバとヒナタ2人で帰ったの?!いつの間に?!てか、わたしのヒナタと2人で帰るとかキバめ……。」

「藍夏ちゃん……、声大きいよ……。」

放課後の空き教室ということでついつい声のボリュームがあがってしまった。味方だと思っていたわたしもヒナタに尋問する側になってしまい、ますますヒナタはおろおろしている。しかし、その頬は確かに紅く染まっていた。あぁ、恋してるんだなぁなんて、こんなところで分かってしまう。

「恋、してるんだね。」

わたしがしみじみと言えば、林檎みたいに顔を真っ赤にしたヒナタが一生懸命頷く。それをみたサクラといのもわたしと同じように嬉しそうに微笑んでいる。

「いいなぁ……。」

そうこぼしたのはサクラだった。サクラはサスケくんが好きで、そして、ナルトくんはサクラが好き。そんな三角関係が成り立っている。

ナルトくんの気持ちを知っているわたしにその言葉は少し複雑だった。黙っててって言われたから絶対言わないけど、心の中ではナルトくんに頑張れって言ってるからね!

「あーら?でも、デコリンにはナルトがいるじゃない?」

……………………………………??!!

その言葉を放ったのはいのだった。

「ナルトの気持ちはとっくに分かってるわよ。アイツものすごく分かりやすいもん。」

ナルトくん。すっかりバレてました。女子は手強いです。鋭いです。合掌。

「そういういの豚だってチョウジがいるじゃなーい!」

「チョウジが痩せたら考えるわ。」

…………………………??!!

「えっ!ちょっと待ってチョウジくんっていののこと好きなの?!」

「え、藍夏、知らなかったの?」

「全く。」

「まぁ、藍夏は鈍いから仕方ないわねー。」

「え、わたしって鈍いの?!」

「「自分のことに関してはね。」」

知らなかった。しかし、サクラといのはバッサリ言ってくれるからいいなぁ。それでも、自分自身感受性とか割と強い人間だと思っていたんだけどなぁ。

「で、でも、そこも藍夏ちゃんらしいっていうか、わたしはすごく好きだよ!!」

「ヒナタああああ!!!!!」

すかさずフォローをしてくれるヒナタがとても可愛らしくて、キバに渡すことになるのを今からとても惜しく思う。

そして更に展開は飛躍する。

「まぁ、わたしたちはいつものことだしいいのよ。ね、いの。」

「そうね。今日のメインはほかでもなく藍夏なんだから。」

「う、うまく流れ持っていけたかな……?」

「「ナイスヒナタ!」」

あれ、これはもしかしてもしかする と今までのはフェイク?!彼女たちの巧みなトークに流されてしまったのか?!

「あ、あの、これから一体何が……?」

「やだー、藍夏、ここまできて何を話さなきゃいけないって言わなきゃ分からないかしら?」

ニコニコしてるつもりでしょうけど、目が笑ってませんよいのさん。

「回りくどいことはいいわよ。さぁ答えてもらうわよ藍夏。」

サクラ、近いです。かなり近いです。逃げませんよ。さすがに逃げれませんよ。この状況は。

「あのね、藍夏ちゃんの好きな人も教えて欲しいな ……。」

そんな潤んだ目で見ないで欲しいなヒナタ。いや、見て欲しい!!!でも、これは卑怯でしょ!!!

「あのですね、わたし、好きな人なんて、」

「嘘おっしゃい!というかね、あんたにその気がなくても他の男子は違うのよ!ね!サクラ!」

「そうそう!だいたいね、田中も鈴木もあんたに気があるわよあれは。」

田中?鈴木?
え、誰それ。わかんないですよ。話したことあるんですかね。

「非常に申し訳ないのですが、誰が誰なのかイマイチ分かってないですごめんなさいはい。」

「「「はぁ?????」」」

わー、みなさん声大きいよー。ヒナタもこういう感じだったのかな?ごめんよ。いま全力で謝るよ。

「田中も鈴木も同じクラスじゃない!」

「ひー!そんな怒んないでよサクラ。ほら、わたし人の顔と名前一致できないからさ。」

「みんなイケメン(サスケくんには負けるけど)よ!」

「いのさん、まじですか?」

「「もうー、藍夏は……。」」

そんな2人して同じため息つかなくてもいいじゃないですか。

「じゃ、じゃあ、わたしが聞いてもいいかな?」

「ん?なんだいヒナタ?」

「藍夏ちゃん、シカマルくんと仲いいよね?ほら、体育祭のときとか一緒に走ってたし!」

「確かに。仲はいいほうだと思うよ。」

そうなのだ。男子の中では確かにわたしはシカマルくんと仲はいい。音楽の趣味も合うし、勉強の話もできるし、なによりも頭の回転が速い彼になにかとたすけてもらっている。

だが、仲がいいだけならわたしにはデイちゃんもサソリ先輩もいるわけだ。この2人とはシカマルくんよりも付き合いは長いし、仲の良さはそれ以上である。

それとはまた別の括りであるが、仲のいい相手としてカカシ先生がいるのもまた事実だ。そしてついこの間は告白されたのだし。返事はいらないからっていう大人な逃げ方もされた。

あー、もう好きって何だ。
何なんだ。

みんな好き。それじゃダメなのだろうか。それとも、人を"好き"になるということはもっと別のことなのだろうか。如何せん、そんな気持ちを今までに経験したことがないから分からない。人の相談には多くのってきて、その気持ちを恋だと名付けたことはあるが自分のことになるととことん分からなくなる。

あぁ、これがみんなが言ってたことなのか。

「まぁ、シカマルはいいやつだと思うわよ。幼なじみとして推薦するわ。」

「そうね。わたしもそれは同意するわ。ナルトたちと一緒にいるけどアホじゃないし。」

「わたしも、そう思うかな…!きっとね、藍夏ちゃんはもっと自分に素直になってみたらいいと思うよ…!」

「いの、サクラ、ヒナタ……!」

こんなにも3人が優しいだなんて。もう感激です。涙がちょちょ切れそうだ。

「まぁ、今日はガッツリ話すわよー!」

「「「おぉー!」」」

音頭をとったサクラにつづいてみんなで意気込んだとある冬の日のことだった。


甘い果実はすぐそこに。


(その気持ちが何なのか)
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