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「#幼馴染」のBL小説を読む
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初詣の鳥居はあかく
後期の定期テストを終えてから冬休みに突入し冬期講習も難なく乗り越えて師走にいたった。

え?クリスマス?そんなものは講習でお亡くなりになりました。あ、違う。失くなりました。一緒に過ごす相手なぞいない私には好都合です。

サクラやいのはサスケくんと過ごす予定がー!!!と言ってアスマ先生やカカシ先生を怒っていた。

そんなに会いたいなら講習に参加すればいいのにという言葉は彼女たちの威圧の前に消えてしまった。

そしてついに迎えた大晦日。

我が家では、31日のお蕎麦を食べるまでは家族で過ごすのが決まりだ。

大掃除を済ませたリビングで紅白のトリを見ながら皆各々に蕎麦をすすっている。(こんな時にガ〇使なんてみたらせっかくの蕎麦があらゆる穴からリバースしてしまう。)

と言っても、毎年のことながら私は例の先輩ーズたちと二年参りに行くことになっている。

「ご馳走様!」

家族よりも一足先に食べ終えて、食器類をシンクに下げて二年参りへの準備をする。と言っても普段着の上にオーバーを羽織るだけの相変わらずラフなスタイルだ。

夜中だしまぁ大丈夫だろう。

「あったかくしていきなさいよー。」

家を出ようと玄関で靴を履き替えているときにリビングからひょこっと顔を出した母親が話しかけてきた。

「大丈夫!帽子もマフラーも手袋もしてるからね!」

すべて装備した姿を母親に見せると母親は、はぁっと1つ溜息をついて言った。

「デイダラちゃんとサソリちゃんに迷惑かけないのよー?それから……」

「はーい!分かってまーす!」

勢い良く家を出た。母親の言葉を最後まで待っていたら、まだまだ大量に小言が出てくることだろうし。

しかし、心外だ。
どちらかといえば世話をしているのは私の方ではないのか?
ほら、体育祭のときとかはわたしが居たから2人とも1位になったわけだし。あ、でも夏祭りのときは変なのに絡まれた時に心配してくれたっけか。

まぁ、持ちつ持たれつの関係ってことでいいよね。

家を出ると母親の予告通り寒かった。それに昨日からしんしんと降る雪によって路面は凍結し、そのうえに新雪が積もっていく。この雪を踏む感覚は嫌いじゃない。むしろ、楽しみだといってもいいだろう。

毎度のことながら、冬は寒くて嫌になるが雪だけはどうも憎めないのだ。

待ち合わせ場所は近所の神社の鳥居前だ。その鳥居から境内までにはずらっと露店が並んでいる。鳥居にたどり着く前の道路の角にまで美味しそうな香りが漂ってくる。

待ち合わせ場所に行くとやっぱり2人はそこにいた。わたしの姿を発見するやいなやデイちゃんが手を振って声をかけてくれる。

「おーい!藍夏!こっちだぞうん!」

そして、それに応えてわたしも手を振り返しながら彼らのもとへと走っていく。

そんな時に二人に到達する最後の一歩で転んでしまうなんて想像もしてないようなことが起こるんです。

「藍夏!!!!!!」

痛みにこらえようとして目を瞑っていたわたしが感じたのは雪の冷たさではなくて人の温もりだった。そう。わたしが転ぶ瞬間にわたしの名を叫んだサソリ先輩がわたしを支える形でぎゅっと抱きしめてくれたのだ。

「あ、あれ?痛くない?」

「当たり前だ。この俺がわざわざ支えてやったんだからよ。」

「えっと、サソリ先輩ありがとうございます。」

「ほんとお前はバカか。こんな日の路面なんて新雪だといっても下は凍結してんだぞ。走ったらコケるに決まってんだろ。」

「う、返す言葉もございません。」

「大体なお前は昔っからそそっかしいんだよ。いつまでも手がかかるやつだ。」

サソリ先輩の小言が始まってしまった。いや、だが、しかし、この状況はどうにかならないだろうか。抱きしめられたままなんて、なんだかドキドキしてしまう。

困ったようにデイちゃんを見れば、仕方ないと言った顔で頷いてくれた。

「まぁたぁ旦那、ほら、藍夏はいつもこうなんだから、な?うん?」

「そそそ、そうですよ!サソリ先輩!わたし反省してますし!そしてそろそろ支えているの解除しても大丈夫です!自力でも立てます!」

そういうとサソリ先輩はこの状況をあらためて把握したのか、顔がいきなり赤くなってわたしのことを、押し返す形で離してくれた。

「ばっ!!!ちげぇ!!!これは事故だ!!!」

一人でなにか焦っているサソリ先輩がそこにいた。

「う、うん?それはオイラもずっと見てたからわかるぞ?」

「ほんと、わたしが悪いんですよ!すいません!1年の最後の日までご迷惑かけちゃって!!」

わたしもなんだかドキドキしてしまっていて言葉が早口になってしまう。

私の顔もサソリ先輩みたいに真っ赤になっているのだろうか。確かにいまこの顔が火照っているのはわかっている。心の中は恥ずかしさでいっぱいなのである。

「ったく、今年が終わっちまう前に早く並ぶぞ!」

そう言ってふいっと前を向き直ったサソリ先輩につづいてわたしとデイちゃんもすかさずついていく。

前をいくサソリ先輩がブツブツ言っているのに対して、デイちゃんはニコニコと返していてなんだか不思議な感じがした。一方の私は未だに冷めぬ頬を、外の空気が冷やしていた。

長い列に並んで、今年一年の積もりに積もった話をしていれば、必然と顔の熱も冷めていた。

自分たちの番になったので、二礼二拍手一礼。お賽銭を入れて鐘を鳴らす。

今年もみんなでいれますように!
単純かつシンプル。
これなら神様も叶えてくれるだろう。


初夢に君がでてきたのはまた別の話。


(そういえば先輩たちのお揃いのコート羨ましいです!)
(うん?藍夏もほしいか?)
(なら、リーダーに聞いてみるか。) prev / next