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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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太陽に焦がれる朝顔
夏の暑さも本番になってギラギラと太陽が、乾いたアスファルトに照りつける。この時期になって一番つらいのが自転車登校のこの身である。

しかもすでに世間では夏休みなのだが、進学希望のわたしは夏休みもせかせかと学校で開かれている夏期講習へと向かっている。

「ほんとになんだよこの坂〜〜〜!」

だれもいないのをいいことに思いっきり叫んでみる。
しかし残念なことに吐かれた台詞は無残にもアスファルトに跳ね返って自分の元へと返ってくる。

もともと代謝はあまり良くない方で汗も人よりもでない。
そのせいか頑張ってないといわれることもほとんどである。
そのため、体育ではどうしても敵が出来たりする。
まぁ、それはいいとして、今日も朝から講習なんだわたしは。

参加者が少ないために全クラス合同で行うのがこの講習だ。

わたしやシカマルくんサスケくんはもちろん参加である。

反対にナルトくんやキバは不参加。チョウジくんは家の手伝いが重なって参加できないらしく、でも、シカマルくんから講習のノートを借りて自分でやっているらしい。チョウジくんばりやば。

「おはよ〜。」

特別講義室に入ると、すでにシカマルくんとサスケくんは教室にいた。

「おっす、藍夏。」

「なんだ、だるそうだな、井上。」

サスケくんにはなんかこのまえのことでいろいろ見られた気がするが、今ではふつうに話しかけてきてくれる。ほんとうに有難い。

「毎日暑くてやってらんないね。」

「夏だからな。」

「夏だからだろウスラトンカチ。」

「おーおー、見事にはもってますね。」

うるせー、とこれまた二人がはもるのでわたしは笑いを押さえずにはいられなかった。

「そういえばさ、夏といえば花火大会だよね!!」

「あっちーのになんであんな人混みに無理していくんだろうな。」

「違いねぇ。おとなしく家のベランダから鑑賞するのが一番だな。」

「あんたたち風流心ゼロだね。それって生きてて楽しいの?」

「まぁ、楽だからな。」

「だいたい井上はあんなところに好き好んで行きたいのか?」

「行きたい(即答)」

わたしがそう答えるとシカマルくんもサスケくんも目をまんまるくして、顔を見合った。

その様子にわたしがハテナマークを浮かべる。

「お、おい井上!」

「ん?なに、サスケくん?」

「お、俺が連れてってやらないこともないぞ!!」

「は?」

「なに抜けがけしてんだよ、サスケ。藍夏、俺が花火大会連れてくぞ?」

「え?」

なんと二人とも私を誘ってくれたらしい。意外な二人の行動にわたしは驚きを隠せずにいられなかった。

「いやいやいや、さっきめんどくさいって言ってたじゃん。二人とも。」

「お前が行くなら話は別だ。」

「そうだ。めんどくさくねーぞ。」

「いや、あの、すこぶる嬉しいんですけど…。」

「けど?なんだ井上?」

「じ、実は先約がいましてですね、ちょっと無理かなっと、あは。いや、誘ってくれてものすごく嬉しいんだけどね。」

「「なんだと?!」」

「おい、それはだれだ井上?!」

「男か女か?!」

どうして二人がこんなにも私に関して質問をしてくるのかは分からないが、花火大会というのはもともとわたしには毎年先約がいるのである。

「ふ、ふたりの知らない人…。」

とりあえず、そう答えておくと二人はがっくりと肩を落とした。(なぜか)


「そんなに花火が見たいなら、二人で見たらどうかな?なんて…。」

「「誰がこんなやつと!!」」

あらら、喧嘩するほど仲がいいってこのことか。

そんな世間話をしていれば、講習の指導をしてくれる先生が入ってきた。

いつもならばゲンマ先生なのだが今回はカカシ先生が入ってきた。

「なんで…。」

会いたくない人No.1って実は最も会う人No.1だよね。

「えーっと、ゲンマ先生は出張の都合でいないので、代理に俺が来ました。………なーんて、実はゲンマ先生二日酔いで体調不良なんだよね、アホだよねーアイツ。」

教室内からどっと笑い声が聴こえる。ゲンマ先生かわいそうだなぁーと人事ながら思ってしまう。

始業前の雑談をしていれば、ふと、カカシ先生と目が合ってしまう。

慌てて逸らして、でもやっぱり、無視はまずいかなーなんて思って、また見てしまうと、カカシ先生はマスクの奥で勝ち誇ったように笑った気がした。

悔しい、悔しい、悔しい。

気にしてたのはわたしだけ?

そうやって、大人はずるい。

っていうかもう知らない!!!

授業モード(カカシ先生に殺気を飛ばしながら)に切り替える。

そのあとはとくになにもなく講習はあっさりと終わった。

講習の終わるチャイムが告げられると、わたしは急いで自分の荷物をまとめた。

「井上、今日は図書館いかないのか?」

「おまえらいっつも図書館にいるのか?」

「シカマル、お前には関係ないだろ。」

「残念ながらないわけでもねーよ。」

「あぁー、ごめんね、二人とも、わたしこれから用事あるから今日は帰るわ!じゃね!」

そう。今日は実は意外な人が学校に来ているものだからどうしても久々に会いたくなったのだ。

急いで、階段を駆け上って、彼らがいるであろう屋上へと向かう。毎回思うのだが、どうして鍵のかかっているはずの屋上に彼らは入れるのだろうか。甚だ謎だ。

「こんにちわー!」

勢いよくはいると、だるそーにイチゴミルクをちゅーちゅー吸ってるデイちゃんとサソリ先輩がいた。

「ほんっとにお前はよく人を待たせるな。今度焼きそばパンおごれよ?」

「そうだぞ、うん。オイラたち待ちくたびれたぞ。」

「お小遣い日前の金欠学生にたからないでください!」

「お前っていつも金なしだよな。」

「うっ。」

「何に使っているんだ、うん?」

「そ、それは…。」

「なんだよ、言ってみろよ。」

「新作のAKFGのアルバムとかOORのシングルとか限定版のLIVEDVDとか、あとはカメラのフィルム…。」

「かんっぜんっに趣味だろ?」

「はい!!!」

「ほんとに藍夏は素直だな。」

「お褒めに与り光栄です!!」

「「褒めてねぇ!!!」」

わたしのまわりの人物はどうしたってはもる人が多いんだなぁと実感する。

「お前はもう少しだな、金の使い方を…」

うんぬんかんぬんサソリ先輩からのお説教をうける。

こんなときはデイちゃんも助けてはくれない。

まぁ、ある程度時間がすぎれば、

「旦那、まぁ、藍夏も反省してるんだし。」

と、制してくれる。
流石わたしの幼馴染み。
本当に優しい。

サソリ先輩がチッと小さく舌打ちするのが聞こえた。

前はこういうところが苦手だったのだが慣れとは恐ろしいもので、今ではそれすらも可愛く思える。

「おい、藍夏、くっだらねーこと考えてたら殺すぞ。」

やっぱり、サソリ先輩は少しだけこわいです。

「そういえば、先輩たちなんで学校にいるんですか?」

「あぁ、ちょっと理事長に呼び出されてな。」

「そうだな。急でびっくりしたぞ、うん。」

「何か悪いことでもしたんじゃ…?!」

「お前俺らをなんだと思ってんだよ。」

「不良?」

「間違っちゃいないがな、うん。」

「デイダラのことだよ。」

「デイちゃん…?あ!!!花火大会ですか?!」

「正解だ、うん。」

実はデイちゃんは若いながらもこの歳で学生傍ら花火職人(本人いわくまだ見習いだそうだが)をしているのだ。

今度の花火大会でも、デイちゃんの試作品を打ち上げるらしく本人はとてもやる気である。

そして、そのデイちゃんの親友であるサソリ先輩と幼馴染みのわたしは毎年その花火を特別席で鑑賞するのが恒例なのである。

「綱手のババァがそのチケットを高値で買うからよこせと言ってきたんだよ。」

「うわ、理事長…。」

「まぁ、特別席の観覧は金があってもできるもんじゃないしな、うん。」

「「そんな素敵なものを毎年ありがとうございます。」」

サソリ先輩と珍しく、はもると、

「旦那も藍夏もオイラにとっては特別だからな。」

そう言って、デイちゃんがわたしとサソリ先輩の間に入ってきて肩を組む形になった。

「デイダラのくせに生意気だな。まぁ、せいぜいたのしみだな。」

「あ、そういえば聞いてくださいよ!わたしなぜか知らないんだけど、サスケくんとシカマルくんから花火に行こうって誘われたんですけど、一緒に行く意味もよくわからないし断ってきました!」

そういうと二人ともなんとも言えない微妙な顔つきになった。

「(おい、デイダラもしかしてコイツ、自分がモテたりってきづいてないのか?)」

「(藍夏は少しだけ鈍いからな、うん。はっきり好きとか言わなきゃダメだろ、うん。)」

「おい、お前はそのままでいい。」

「まぁ、しばらくはそのままでいてくれ、うん。」

「?」

サソリもデイダラも彼女に変な虫がつかなくて内心ホッとしているのである。

「藍夏、あちぃからアイス食ってかえるぞ!」

「わたしラムレーズンがいいです!」

「オイラはストロベリー!」

「仕方ねぇ、今日は特別に俺がおごってやる。」

「「やったー!」」

そのままわたしたちは自転車に乗って、近くの美味しいアイス屋さんで楽しくアイスを食べて下校した。


僕らの青春ラプソディー。


(先輩、デイちゃん、一口交換!)
(お前一口デカいんだよバカ!)
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