拍手小説 | ナノ
ハートと遊園地(前編)
とある日の早朝。
いつものように俺を起こすバカ女の声が部屋に響いた。
コイツは、まぁ、あれだ。
…俺の幼馴染。
「ねぇ、ロー!」
「あ?朝っぱらからなんだバカ女?」
「うわ、機嫌悪っ!目の下黒っ!猫背っ!ダルそ!」
「開口一番俺の悪口とはいい度胸じゃねぇか。」
(機嫌悪く当たるのが照れ隠しだなんて言えねぇ!!コイツが家に来るのが嬉しくて実は結構テンションあがってるとか言えねぇ!!!)
「あ〜、ロー機嫌悪いんじゃやっぱりダメかぁ…。」
(くそっ、がっかりした顔もイイっ…!)
「なんだ、なにか用でもあるのか?」
「ロー機嫌悪いしいいよ〜。低血圧人間は寝てなさい。ペンギンに頼むからいいよ〜、バイバイ〜!」
(ペンギンだと…?!あんなエセ紳士野郎と鈍感なコイツを一緒にさせたらまずいんじゃねぇのか?)
「待て、俺がいつ断った。」
「え、だって嫌そうな顔してるじゃん。」
「お前の要件を俺はまだ聞いてないぞ。」
「別に行きたくなさそうな人と一緒に行っても楽しくないもん!」
「どこへ行くんだ?」
「遊園地だよ!無料招待券、新聞屋さんからもらったの!」
(遊園地?!俺の大の苦手なところじゃねぇか。
でも、待てよ?
もし、ペンギンとコイツを一緒に行かせたら…。
遊園地=人ごみ?=めっちゃ人いる?=変な野郎にコイツが絡まれる?=エセ紳士がコイツをかばう?=コイツがエセ紳士にときめく?=そのままHOTELに((((((ry)
「ダメだ。」
「は?なんでローが反対すんのよ?」
「いいから、ダメだ。」
「だって、無料招待券もったいないし!」
「我慢しろ。」
「いーやっ!楽しみにしてたんだから!」
「黙れ、お前の貞操は俺のもんだ。」
「いつから、そんな話になった、この変態野郎!」
「今からだバカ女。ふざけんな他の男に持ってかれてたまるか。」
「そんなこと知らないわよ!大体私の操はいつか出会う白馬の王子様に捧げるって決めてるの!」
「ふん、お前なんぞのを貰ってくれる奴なんていないだろ。」
「いーまーすー!」
「いや、いない。断言してもいいな。」
「むっか〜。ローなんてホントにただの変態だね!もう、やっぱりローなんて誘うんじゃなかった!いいもん、別にね…」
「……………あの〜?」
「「あ???!!」」
声を掛けられてシャチとベポがいるのにようやく二人は気づいた。
(…やばい、つい、ムキになってしまった。)
そして、沈黙を破るようにシャチが言った。
「え、あの、キャプテン、コイツとペンギンが二人っきりで行くと思ってんすか?」
「な、違うのか?」
「は?そんなわけないじゃーんっ!ベポもシャチも行くんだよ?で、ベポがキャプテンは来ないのって可愛い声で頼むから、機嫌の悪い低血圧な誰かさんを誘いに来たんじゃん!」
「そ、そうか。」
「で、行くの?」
「…いや…俺はいい。」
「ベポが待ってるよ?」
「キャプテン……。」
「…行く!」
((ローって(キャプテン)って単純!!!!!!!))
抱きしめあっている、変態とマスコットのベポは、ほっといて…。
「まぁ、いっか!行こうか!シャチ!」
「そうだな!じゃあ早いとこペンギンちに寄ろうぜ!」
「賛成!」
ハートと遊園地(前編)