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 お願い
朝が来る度に虚無と絶望を感じる。

あぁ、また、
わたしはこうして1人で目を覚ますのか。

気だるい体を起こして、自分の寝ていた隣にさっきまでは確かにそこにあったであろう温もりを探した。

「ルッチ。」

思わずポツリと口にしていた。
返ってこない返事を待ったって意味もない。

わかっていたはず。

そう、わかっていたことなのだと自分に言い聞かせた。

そのままするりとベッドを抜けて、わたしは部屋の真ん中にあるテーブルまで足を運んだ。

そこには空のワイングラスがあった。昨晩2人で酌み交わしたままで、そこにも、彼は確かにいたのだという現実を私に教えた。

そして、その横にあったのは、ちぎられた紙に青いインクで書かれていた彼からの"文字"だけだった。

その文字には気持ちも情も篭っていない。無造作に、いつものようにそこに並んでいるだけだった。


そう。
例え、夜を2人で迎えたとしても、夜明けにはわたしは1人置き去りにされてしまう。

彼を愛してはいけないと思っても、このまま抱かれてはいけないと分かってても、わたしはドアを開けてしまうの。

彼との時間はわたしを甘噛みするように淡い赤色の消えない痕を残していくの。

ねぇ、こんなにもあなたのことを思っているのに、どうしてこんなにも虚しくなってしまうの?

あなたはいつも、わたしに本当のことを言ってくれないし、心を決して掴ませてはくれないの。

そのくせ、わたしのことは誰よりもわかっていて、きっとこんな気持ちもあなたには見透かされているのでしょうね。

弱みにつけこむだなんて、ずるい。

でもね、何故か嫌じゃないの。

流されているのに、どこか心地いいの。

考えから離れて現実に目を向ける。

きっと、今頃彼はあの黒い愛車に揺られているのだろう。

文字がいう"さようなら"とは

これが"最後"意味するものなのだろうか。それとも、また"次"があるのだろうか。

あぁ、だめだ。
どうしてもこうして彼のことを考えてしまう。そうして今日も時間をムダにしてしまう。

あの甘い夜は幻だったのだろうか?

それとも、夢であったのだろうか?

彼がわたしの日々に絡まり始めてからは、すべてが遠い日のことのように思えてしまうの。

あなた以外はどうでもいいとさえ思えるの。

だから、わたしはドアを開けてあなたのされるがまま。すべてを剥ぎ取られてしまうの。

その代償にこうして起きる度に自分の哀れな姿をしらしめされる。

わたしはこんなにも醜いんだってことを。
あなたに本気だと思われていないってことは分かっていても、もしかすると、なんていう期待も捨てられないし、また欲望の炎をこの胸に燃やしてしまうの。

開け放った天窓からはまだ星が見える。
手を伸ばしたら届きそうなのにもかかわらずそのどの一つも決して手は届かないの。
まるで、あなたみたいね。

秘密なんてものは、最後まで秘密にした方がいいのかしらね。
でもね、私はこんなにもあなたのことを思っているのよ。
この時計の針が進む音と並行してその気持ちは膨らむばかりよ。
ねぇ、あなたの気持ちを教えて。
どんな答えでも受け入れるから。

ただ、許されることが一つだけあるのならば、
一瞬だけでもいい。


私を愛して。


song by ポルノグラフィティ 瞳の奥をのぞかせて prevnext
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