私は残されてしまった。
彼に置いてかれてしまった。
何で死ぬの、ばか。
感情とかめんどくさいものは随分昔に捨ててきたのに、今さらこんなにも泣けてくる。
ニールにもう会えないと思えなくて、信じたくなくて、もしかしたらひょっこり帰ってくるんじゃないかって、思った。




「よー×××」



「…ニール」




ほんとうにニールが私の目の前に現れた。その姿は見慣れたもので眼帯もない正常の状態だった。




「俺がいなくなったと思って病んでたか?」



「全然」



「素直じゃないなぁ」



苦笑しながらニールは私に触れてきた。



「泣いた跡が残ってるぞ」



頬にある跡を撫でてきた。拭きもせず重力に任せて涙を落としていたから残ってしまったんだ。その跡を何度も撫でるから若干くすぐったくて嫌だった。




「くすぐったいから止めてよ」



あーごめんごめんって言ってても本人は本当に思ってるかは分からない。


そして少しの沈黙の間を壊したのはまたしてもニールだった。






「なぁ、お前俺の事好きだろ」



「あーそうだね」



適当に返したら今度は腕を掴まれた。強く、痛く、千切られてしまうのではと思うくらいに。




「じゃあ二人で抜け出さないか」



「は?」



「いつ死ぬか分かんねぇし、いつも不安だろお前」



「いま さら じゃん」



「今じゃなきゃ駄目なんだよ。俺とお前が離れる前に」




その言葉を聞いた瞬間に、腕を振り払った。


なんなのさ、ひょっこり出てきたかと思えば、








「死神ですか、あんたは」













(お前あとで後悔すんなよ?)

(逢うのも話すのも、これで最期だ)













ニールが懐かしい。





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