※ヒロインのstkがいます。 目の前にストーカーがいる。何ヶ月も前から私に付きまとっている(らしい)女の人。今日初めて目の前に現れたから、私は初めてその女性の顔を拝見することになった。 「なんですか、ストーカーさん」 「ストーカーなんてものじゃないわ。私と貴女は結ばれているんだもの。それに、いつだって私は貴女を見守っていたの。いわば恋人よ」 いつから恋人になったのだろうか。会ったことも話したことも無いのに。あぁ、これがいわゆる自意識過剰というものだろうか。いや、というより私はこんなストーカーの存在すらつい最近知らされたのに。ましてや女性がストーカーとは、わけがわからない。それでも相変わらずストーカーさんは妖しくほほ笑んでいる。 「あぁ、もしかしておびえてるの?大丈夫よ、何もしない。ただ愛し合うだけだから」 「…………くっくく…はははっあっはははははっ」 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう沸々と笑いがこみ上げてくる。耐えることのできないくらい。可笑しい、可笑しすぎる。この場に合わない私の笑い声が響き渡る。気づけばストーカーさんの笑みは消えていた。むしろ少し驚いている様子。 「あっはははははっ、あーすみません。可笑しくってつい…。えっと、まず、あいってなんですか?というよりあいしあうって?意味が分からない」 ストーカーさんは困惑しているようだ。さっきまでの私とストーカーの立場が逆転した。もはやこの光景ですら可笑しい。 「私はね、あいがわからないんですよ。目に見えないものを、恰も存在しているように定義付けて、何になるんですか?不確かなものをどうして人間は欲するんですかね?私にはわからない。」 「でも、私は…貴女を、」 「だから、今すぐ私から離れてください。むしろ私の目の前から消えて、二度と現れないでください。」 これが最後の忠告。狼狽えている目の前の人間が言葉を発する前に吐き捨ててやった。 けれどそれは無駄に終わるようだ。 「私は、貴女を愛してる!だから貴女も必ず私を愛するようになるわっ!」 「はぁ…残念ですが、」 街灯によって銀色に鈍く光るナイフが女の首にあてがわれる。 「私にはあいというものを証明してくれると約束してくださった人がいます。ですから、」 「さようなら」 不 協 和 「愛を証明してくれる人、かぁ。嬉しいな嬉しいな嬉しいな嬉しいよ。君にそうやって言ってもらえるなんて」 「それはよかったですね。あと汚れているのに近づかないでください。」 「じゃあ、早く戻ってシャワーを浴びるよ。そうしたら抱きしめてもいいよね」 「どうぞ御勝手に」 「ならそうさせてもらうよ」 「でも今回は女性がストーカーとはねぇ。歪んでいるさまざまな人間を魅了させてしまう君は本当に、いとおしいよ」 |