純愛に懺悔


NLBL混合注意


思えば長らく傍についていたはずなのに、彼との思い出をもう何一つ思い出せない私はきっと薄情者だ。輝いた日々は掠れ、彼の面影は薄れ、私にはもう何も残っていない。
あぁ小喬、愛しい人よ。そんな顔をしないでおくれ。小喬、私はね、今になってようやく自分の過ちに気付いたんだ。小喬、怒らないで聞いてくれ。私は、きっと、孫策を愛していたんだ。孫策を一等愛していた。だけどね、思い出せないんだよ。孫策との思い出、何一つ。私は薄情な人間だ。彼が死んでも私は涙を流さなかった。流せなかったんだよ。だって泣いたら私は孫策の死を受け入れなければならないだろう。それがどうしようもなく、嫌だった。それに、いつ曹操が南下してきてもおかしくなかったし、劉備軍にも、常に警戒していなければならなかった。一国の主が突然死んで、誰がその隙をついてくるかわかったものじゃなかったから、私は常に気を張っていなければならなかった。まぁ、当時はね、それでいいと思っていたんだ。忙しければ忙しいだけ、彼を失ってぽっかりと心に居座った喪失感を、忘れることができたからね。でも、そうやって彼を意識の隅に追いやっていたら、ついに彼を見失ってしまった。心のどこを掻き分けて探しても、彼の底抜けに明るい笑顔はもう戻ってはこなかった。自業自得なんだ。そうして私は今も彼に執着心じみた感情を抱いている。暖かく優しかったはずの恋心は、彼を失った焦燥感と絶望でいつのまにか姿を変えていた。しかし私には、いつからそうなったのかすらわからないんだよ。私は薄情で、最低の人間だ。
小喬、これが私の最後のお願いだ。
君は強い。強いことは美しいことだ。私は君のお転婆で芯のある性格が、好きだった。だけどね小喬、私が死んだら泣いていいんだ。強がらないでくれ。存分に泣いて、私とさよならをしてほしい。中途半端にさよならできないのが一番辛い。もう彼のことなど思い出せすらしないのに、まだ愛しているんだ。私は彼と、さよならができなかった。
君には、そんな辛い思いをしてほしくないんだ。世界で一番愛しているよ小喬。穏やかで、緩やかな、慈しむべき愛だ。私はこれからもずっと君を想う。だからね、君は私とさよならをして、また前を向いて君らしく生きるんだ。過去の人間に捕われてはならないよ。私が死んだら思う存分泣いて、それから、さよならしよう。

これが私の最後のお願いだ。



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