テニプリ/跡忍
長編を書くつもりで断念したもの
いつか続き書きたいです





大事な友達だった。



ライバルと言ってもよかった、



仲もよかった。



大事な。



大事な。






『 友達のやめ方 』
〜HOW TO END TO FRIEND〜








桜が舞散る4月。

俺、忍足侑士は自分の実力を試すため、
関西の中学ではなく関東の中学に進学する事になった。

氷帝学園。
関西にいた時にも名前は聞いていた。
テニスの名門校だ。
そう、俺は小さい頃からテニスをしていた。
遊びのつもりでラケットを持った。
そして、ただボールを追いかける事に夢中になって行った。
人よりずっと長い時間練習した。
走りこみだって、素振りだって。
だから、小学校のとき。学校のクラブ活動の中では一番上手かったと自分で思っている。
しかし外に出ればそんなものわからない。
俺はソレを試したくなったのだ。
だから、誘いのあった氷帝学園に受験することにしたのだった。

「今日から俺も関東人かぁ」
なんて言うてみたりもして。
自分の家から離れ、学校の寮で暮らす。
不安がないと言ったら嘘になるが、
それを上回るドキドキとワクワクがあった。
自分はどこまで通用するのか。
「試したろうやないか」

俺は思いっきり深呼吸すると、一気に氷帝学園の校門をくぐった。

俺は、『入学おめでとう』と大きく書かれた紙を覗きこんだ。
自分のクラスを知るためだ。
しかし人が多い。背伸びをしても、少しジャンプしてみてもまったく見えなかった。
「あかん・・・。もうちょっと人減ってから見よう」
俺はくるっと後ろを向きこの人ごみから出ようと思った。
そこで振りかえっておどろいだ。

(うわ・・・なんやアレ・・・)

1人だけ凄く身長の高い男の子がいた。
いや、その子が高いのではなく、その子を肩車している男性が高いのだ。
「おい、高田。もう少し近くに寄れ」
肩車されている子がそう言い放つと、高田と呼ばれた男性はかしこまりました、とだけ言い人ごみを掻き分けた。
「俺様は4組だ。もどるぜ」
その子はそう言うと、指をパチンと鳴らした。

「なんや凄いやっちゃなぁ・・・」
さすが東京と言ったところか。
関西にはこんな奴おらへんもんなぁ、
と思いつつ忍足は去ってく彼の姿を見ていた。
そのままボーッとしていると、誰かが思いっきり俺の足を踏み付けた。
「・・・ッッ!!いッッ・・・・・たぁ・・・」
俺は踏まれた足をおさえた。
「あ!わ、悪ィ!」
俺がしゃがみ込んで足をおさえていると、踏み付けた本人であろう人物が謝ってきた。
「・・・だ、大丈夫や・・・」
そこまで大袈裟にするほど痛くなかったのは相手の体重が軽かったおかげだろう。
俺は相手をチラッと見上げた。
俺より明らかに身長は低く、細っこくて。
何よりも先に目が行った場所が、明るい色でバッサリと毛先が切りそろえられている髪の毛だった。
属に言う“おかっぱ頭”

まだいるんやなぁなんて思いながらその相手を見ていた。

「いやぁ、人多くて全然紙が見えなくてよぉ。ジャンプしてたんだけど、やっぱり見えねぇの」
ケラケラと笑いながら相手の子はまた紙のほうに目をやった。

俺も立ちあがり、紙の方に目を向けた。
先ほどよりは人が少なくなっており、紙の上の方は見えた。
しかしまだ人は多く、その上文字が小さくて確認する事はできなかった。

(さっきの子はめっさ目いいねんなぁ・・・)

自分よりまだ後ろにいたのに。
俺は目を凝らしたがやはりこの位置ではわからなかった。
「あぁー!ちょっと見えたぁあ!」
隣りにいた彼が大きな声を出した。
ビックリして隣りを振りかえった俺はさらにビックリした。
見えたのは小さな彼の頭ではなくズボンの裾、つまり足だった。
彼の頭はもっと上。ジャンプしていた。

(す、すごいジャンプ力・・・)

俺なんか軽く超えられそうなくらいの。
「ちっくしょー・・・上がダメなら下からぁ」
地上に戻ってきた彼はそう言うと、腰を低くして人ごみを掻き分けていった。
「あ・・・」
俺はボケッとその様子を見ていただけだった。
どうせなら俺の名前を教えてついでに見て来てもらえばよかった。

結局15分ほどずっと人が減るのを待っていたせいで、自分のクラスを確認する頃にはチャイムがなっていた。
確かこのチャイムがなる頃には教室に入っていなくてはならなかったはずだ。

俺は急いで自分のクラス、1年4組に向かった。

教室につくと、もうほとんどの人が席に着いていて近くの人と談笑していた。
氷帝学園は小学校からのエスカレーター方式の人が多く、
違う小学校から来る人は転入生みたいなものなのだ。
当然、関西から来ている俺に知り合いがいるわけもなく、
自分の席を確認すると黙って座り、これから1年世話になる担任の先生を待つことにした。

ジッと座ってると、背中をバシッと叩かれた。
「ぃ、たぁ・・・」
俺は叩かれた背中を押さえ、後ろを振り返った。
「よっ!」
そこには、先ほど出会った“おかっぱ頭”の彼だった。
「あ、お前」
「おんなじクラスだったんだなぁ。俺、向日岳人ってんだ!よろしくな」
向日と名乗った彼は俺ににこっと笑った。
「あ、俺は忍足侑士や。よろしゅう」
俺も向日に向かってにこっと笑った。

氷帝学園に来て初めての友達。
それが向日岳人だった。

その後すぐ担任がやってきて、色々話しをし、紙などを配ったりした。
その中に部活動の紙も入っていた。
先生によると、部活など各自で見学しに行き提出してくれとのことだった。
その後は生徒の自己紹介。

やはり一番印象に残ったのは、朝、肩車されていた彼だった。
跡部景吾と言うらしい。
彼は、自分の順番が回ってくると勢い良く立ちあがり、
「俺様が跡部景吾だ」と言ってのけた。
俺は、全員が自分を知ってる前提な自己紹介は始めて聞いたのでとても印象に残った。

跡部景吾。
向日岳人。

(1年間楽しめそうやなァ)

やはり氷帝学園に来てよかった。
俺はクスリと笑ったのだった。





****




入学式から何日かたったある日。
午前中の授業も終わり、昼休みに俺は仲の良くなった向日岳人と一緒に屋上に昼食を食べに来ていた。
話しを聞いていると、どうやら向日もテニスをするようで、それなら一緒にテニス部に見学に行こうかという話になった。
「じゃあ放課後行ってみようぜ」
「あぁ、そうやな」
こんなふうに何でも一緒にできる友達が出きるなんて思ってもいなかった。
俺は嬉しくてたまらなかった。

「はっお前等女子かよ」

向日とテニスの話しで盛りあがっていると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「あ・・・。跡部景吾だ」
隣りで購買で買ったやきそばパンにかぶりついている向日が言った。
俺は向日が向いている方を振りかえった。
「・・・・・・!」
跡部景吾が仁王立ちしながらこちらを睨み付けている。
「もい、もごもご。もんもごごむぐぐもご!」
向日が口いっぱいにパンを詰め込んでいるのに喋り出すから、もごもごとなっている。
「・・・何言ってるかわかんねぇよ、向日岳人」
「もごもごッッ!!」
「まち、向日。ちゃんと飲みこんでから喋り」
俺にそう言われて、向日は手に持っていたオレンジジュースを飲みこんだ。
「・・・ごくん、はぁ・・・。おい、跡部。なんで俺らが女子なんだよ!」
「・・・・・・。いっつもつるんでて、部活見学まで一緒にってか。ついでに風呂も一緒に入ったらどーだ?」

あぁ、バカにしにきたのか。
俺はボケッと跡部の言葉を聞いていたが、
向日にはカチーンときたみたいでギャアギャアと声を張り上げていた。
「まぁまぁ、落ちついて落ちついて」
俺は冷静に跡部に食って掛かる向日を制していた。
そうしているうちに跡部は「ふん」と言い、屋上を去って行った。

もう、何しに来たんや。

跡部が去ってからもイライラとしている向日を宥めなければならない俺にとってはいい迷惑だった。
ただ跡部景吾とのはじめての会話が‘これ’だったので少しガッカリした。



「まったく、何なんだあいつは!思い出しただけでイライラする!」
放課後。
俺は今だ怒りの冷めない向日と一緒にテニスコートに向かっていた。
「まぁまぁ。そないに怒らんと」
これで何度目かになる宥めの言葉。
「なんだよ忍足!お前はむかつかねぇの?」
確かにカチンとはきたが、向日みたいに怒るほどではなかった。
「そら・・・女子って言われたんやからなぁ・・・」
しかし、これ以上向日を怒らせないためにそう言っておいた。
「だろ!?まったく・・・クソクソ」
向日の怒り(というか文句)はテニスコートにつくまで終わることはなかった。

氷帝学園のテニスコート。
やたらとざわめいていた。
一番初めに驚いたのは見学者の数。
普通の試合の観客数くらいは集まっていた。
「なになに!なんでこんなに人いんの!?」
ブツブツ言っていた向日がテニスコートに集まる人だかりを見て驚いたようにそう言った。
「わ、わからん・・・みんな見学者かな・・・?」
とりあえず近づいてみよう、と俺と向日は人だかりに近寄って行った。

「きゃあかっこいい〜!」
「すご〜い!テニスうまくない!?」
「いやんv私、彼のファンになっちゃったぁ」
「彼なんて言う名前なの〜?」

近づいていくと、ギャラリーには女子が多いことに気づいた。
彼?ファン?
誰かを見ているのか。
俺はそっとコートの中を覗いた。

「あぁ!跡部ぇ!!?」

そう叫んだのはやはり向日だった。
女子たちが振りかえる。
「あなたあの人の事知ってるの!?」
「知り合いなの!?」
「あの人、恋人とかいるの〜!?」
振りかえった女子たちは、一気に向日の方に走り寄ってきた。
「え、え?あ、いや・・・その、あわわ・・・」
俺はポツンと取り残され、女子にもみくちゃにされている向日を見た。

「おい、お前」

向日の大きな声でこちらに気づいたのか。
コートの中にいる跡部景吾が俺の方を見ていた。
「・・・俺?」
「そーだよ、他に誰がいんだ。お前、下りてこいよ」
一応確認すると、イライラとしたように跡部景吾が言った。
彼はあまり気が長いほうではないようだ。
俺は大きなコートに下りて行った。
とても中学生用に用意されたコートの広さではないようである。
さすがテニスの名門と言ったところか。

「お前、テニス部に入んのかよ」
跡部景吾の目の前に来たところで、彼はそう言った。


「ん、まぁ・・・そのつもりやけど」
跡部の問いかけに俺はなんとなく答えた。
「なんだよ、その曖昧な答えは。まぁいい。お前テニスしたことあんのかよ」
なんとなく跡部の態度にムッとしたが、こういう性格なのだろうと思い、気にしなかった。
「まぁな。ちょこっとだけやけど」
お前より上手いで、などと大それた事は言わない。
心のどこかで思っていたとしても。

「・・・・・・・・・。フン、じゃあラケット持って向う行け」
その俺の心の中を読んだかのように、跡部の目が鋭くなった。
「え?」
「俺様と試合しろ」
「・・・は?」
跡部という人物はかなり横暴な人だと思った。
まだ部活に入ったわけでもなない彼が勝手にコートを使用している時点でもう今更なのだろうが。
部長なり顧問なり、注意したりしないものなのだろうか。
「さっさとしろよ!」
俺がボケッと突っ立っているのが気に入らなかったのか、跡部はそこらへんに落ちていたラケットを投げてよこした。
「うわっ、危ないなぁ・・・」
俺はラケットをパシッと掴み、跡部を見た。
「行けよ」
「わかったって、そない睨まんといてぇや」
俺は跡部から目をそらして、言われた通りコートの反対側に向かった。

「ワンセットマッチだ。サーブはお前にやる」
「えらい余裕やなぁ・・・」
跡部が投げてきたボールを受け取りながら俺はそう言った。
「うるせぇ、さっさとしろ」
「はいはい、ほな行くでッ!」
ボールを高く放り投げた。


パコーン


ボールは見事コートの中に入った。

「・・・・・・・・・。」

俺の。


「リターンエース・・・」
俺がそう呟くと、フッと跡部が鼻で笑ったのがわかった。
「・・・やるやん」
「あたりまえだろう、俺様を誰だと思ってやがんだ」


そう言って笑う跡部の顔が印象的だった。


「忍足!あの跡部と試合したんだって!?」
女子にさらわれて行っていた向日がいつの間にか帰ってきていた。
「あ、向日・・・大丈夫やった?」
長い間姿が見えなかったのでどこへ連れて行かれたのかと思っていたのだ。
「それがよぉ、同じクラスなだけだって言ったら余計に離してもらえなくなってよ。
席はどこだの、授業中はどんな感じなんだだのうるせぇうるせぇ・・・ってちげぇよ!忍足、あの跡部と試合したんだろ!?」
「あぁ、したで」
俺はとても長いノリツッコミに感動しつつ答えた。
「で・・・?どーだったんだ?」
向日は、勿論勝ったのだろうな、と言ったような顔つきで俺を見た。
「いや、負けた」
俺はあっさりとそう言った。
「な!?」
まさしく今の向日の顔は「がーん」という効果音が適している。
「いやぁ、跡部強かってん」
「・・・なのになんでそんなケロッとしてんだよ!」
向日はなぜか悔しそうにそう言った。
「や、俺かなり悔しかったで。めっさ強かったし、力の差は歴然やった」
「・・・・・・・・・。」
「せやけど、あいつ。楽しそうにテニスすんねん。負けたんは悔しかったけど、なんか・・・気持ちよかったって言うか・・・」
向日は黙って俺の話しを聞いている。
「まぁ、うまいこと言われへんねんけどな。とにかく俺、楽しかってん」

そう、楽しかったのだ。

跡部との試合。

負けたけど、

またあいつとテニスやりたい。


そう思った。


出会いは“強烈”
印象は“最悪”

しかし、“かっこよかった”


やはり氷帝学園での生活は、


面白い事になりそうである。







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