ある日の深夜11時
☆は眠れず少し夜風に当たろうと思い、外に出る。
するとそこにはすでに先客がいた。
「あれ、☆も寝れないのか?」
「うん、ゴウも?」
「ああ…」
「そっか…」
「そういえばさ、☆は今までどんな旅をしてきたんだ!?折角だから聞かせてくれよ」
確かにゴウと2人きりになる機会はあまりなかったし、これを機に思い出話をするのも悪くないだろう。
☆は一つのモンスターボールを取り出した。
「それは?」
「ジュカインのボールだよ。ジュカインはさ、元々トレーナーがいたんだけど見捨てられて研究所にずっといたポケモンなんだよ」
「え…っ」
―ホウエン地方ミシロタウン
☆は勢いよく階段を駆け降り、母親への挨拶もそこそこに家を飛び出し研究所へと向かった。
「ごめんね、オダマキ博士はいまフィールドワークに行ってると思うから研究所を案内するよ」
「はーい…」
研究所の内部のポケモンが沢山いるフロアに案内され、ふと室内植物の上にキモリがいるのが見えた。
「あの子がもらえるキモリなんですか?」
「あぁ…あの子はトレーナーに捨てられた子で少し問題があってね…とてもじゃないけど初心者には難しいよ」
「そうなんだ…………おーい、君ー!一緒に散歩しなーい!?」
「ちょ、君」
「………きゃも」
「わ〜、かわい、へぶっ!」
キモリが降りて来たかと思いきや☆に尻尾ではたかれただけだった。
「だ、大丈夫かい、☆ちゃん!?」
「は、はい!キモリ、降りて来てくれてありがとう!」
キモリは変な奴だなとばかりに訝しげに☆を見つめる。
「私さ、小さい頃からキモリを選ぼうって決めてたんだ。よかったら一緒に来てほしいな」
攻撃されたというのに笑顔でパートナーにならないかという☆に少し興味が湧いた。
以前のパートナーは、一度も自分に笑顔なんて向けてはくれなかった。選んでもらった旅立ちの日でさえ。
「よろしくね、キモリ」
「きゃも」
まだいいなんて一言も言ってないが、まぁいいだろう。
もし、いざというときは捨てられる前に見限ればいいだけの話、とその頃のキモリは考えていた。
「そうだったんだ」
「うん…最初は全然言うこと聞いてくれなくって…ジュプトルに進化しても認めてもらえなくて…でもある日元々ジュカインのトレーナーだった人に会ったんだ…」
「ジュプトル〜ご飯一緒に食べよ」
「ジュル…」
「え〜ダメ?あ、ちょっとどこに行くの!」
ジュプトルは木をつたって☆とどんどん距離を取っていく。
それを手持ちポケモンである、キルリア、チルタリス、クチートと共に追っていくとジュプトルと1人の男性が対峙しているのが見えた。
「これ、お前のジュプトルか?ちゃんとしつけしろよ!」
「す、すみません…ジュプトル、帰ろ…」
「ジュル!」
「なんだよ!…………お前もしかしてあん時のキモリか?あーお前も可哀想だねぇ、こんな弱い奴のトレーナーになっちゃってさ」
「…どういうこと…?」
「そいつがジュカインを見捨てた奴で…でも一回バトルに負けちゃったんだ…」
「………」
―
「ジュプトル、ごめんね…うまく指示出せなくて…モモンの実、あったから食べて」
ジュプトルはそのモモンの実を受け取り、少し齧っただけですぐに立ち上がった。
「ジュプトル…安静にしてなきゃ…」
「ジュル!」
ジュプトルはリーフブレードで近くにあった岩を何度も何度も斬りつけようとする。
負けて悔しいジュプトルはいてもたってもいられないのだろう。
その気持ちを汲み取り、特訓に付き合うことにした。
「よし…がんばろ!」
翌朝、目が覚めると隣にジュプトルが立っていた。
そう、負けたトレーナーにリベンジをするために特訓したのだ。
自分より早起きなジュプトルに「おはよう」と声を掛けると初めてニッと微笑んでくれた。
きっと、大丈夫だ。勝てる。
―
「それで、勝てたのか!?」
「もちろん!その時、ジュカインに進化して」
―
「ジュカイン…やったね!」
その時、ジュカインが☆に渡してきたもの、それはモモンの実だった。
昨日からなにも食べてない☆だったが、初めてジュカインから貰ったものだったので食べれずに鞄の中に閉まった。
そのモモンの実は実家の庭に埋めて育てている。
―
「そんなことがあったのか…」
「色々大変なこともたくさんあったけど、ジュカインと一緒に全部乗り切ってきたよ」
ジュカインのボールを宝物のように握りしめ、ジュカインをボールから出すと「なんだよ深夜に」と言わんばかりの態度を見せる。
「☆とジュカインは仲良いんだな」
「もちろん!パートナーだもん」
「俺も、ポケモンたちともっと仲良くなれるかな」
「当たり前じゃん!私とも仲良くしてね」
「あぁ!それこそ当たり前っしょ」
2人は小さくハイタッチをし、星空をもう少しの時間だけ眺めていた。
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