数日前、○○のPCに届いたメールにはこう書かれていた。
「各タイプのエキスパートにそのポケモンの生態等を取材しレポートとして纏めること」と…
そして○○に言い渡されたタイプとはゴーストタイプだった。そして締め切りは3日後だということ。
残念ながら○○にはゴーストタイプの専門の知り合いがいないため、溜息をつく。
ピロンっと○○のスマホが鳴り、フォルダを開けると珍しくダンデからのメールだった。
実は以前連絡先を交換していたが、この課題について相談するためにメールをしたのが初めてだった。






『ゴーストタイプに強い知り合いなら知ってるから紹介するぜ!』




と、綴られており話は通しておくのでガラル地方のラテラルタウンに向かうよう追伸されていた。
時間がないため早速ラテラルタウンに向かうことにし、ダンデにお礼のメールを素早く打った。





-夜。
先方の待ち合わせ場所に指定してきたのはやはりというかなんというか、墓地だった。
夜の墓地は雰囲気があるというかなんというか、一歩一歩ゆっくり進む。




「ゲン〜!!」
「わっ、ゲンガーだぁ!かわいい、よしよし」
「ゲ、ゲン!?」
「………き、君が○○?」




か細い声が聞こえ、後ろを振り向くと仮面を被った華奢な少年が立っていた。
音も気配もなかったため、全く気がつかなかった。




「もしかして、オニオン君?」
「ゲ、ゲンガーのこと、こわくないの…?」
「友達のゲンガーがいつも驚かしてくるから慣れちゃった!…君がオニオン君?」
「う、うん…それで、○○はなにが聞きたいの…」
「あ、そうだった!えーとね…」




予め聞きたいことを纏めてきたため比較的スムーズに聞くことができた。



「ありがとう!これでいいレポート書けそう!」
「よかった………そ、それじゃ僕はこの辺で…」
「あ…っ」




オニオンは逃げるように去ってしまった。
レポートの取材のために来てくれたのだから終了したらさっさと帰るのは当然か。
○○は早速ポケモンセンターに戻りレポートを書くことにした。





「ふぅー…徹夜で終わらせた…」
「きゅきゅぅ!」
「ポニータ、折角だからラテラル見て回ろっか!」
「きゅ!」




ラテラルには掘り出し物が多く、ポケモンの進化に必要な石や持ち物などが売られている。
今日は残念ながらあまりお金を持ってきていないため購入するのは難しいが、見るだけならタダだろう。






「すっかり暗くなっちゃったね、ポニータ」
「きゅぅ…きゅ?」




ポニータはなにかを感じ取ったのか昨日の墓地に走って行った。
追いかけるとオニオンの足に頬擦りしており、困惑しているオニオンの姿があった。




「あ………○○、さん………この子」
「ポニータ、ダメでしょ勝手に行っちゃ!ごめんね、オニオン君」
「きゅうきゅぅー!!」
「ぼ、ぼくは大丈夫………」
「オニオン君は何してたの?」
「え、えっと…月…見てました」
「ほんとだ、今日は満月だね!綺麗だね」




オニオンの言う通り、今日は満月でとても綺麗だった。
オニオンはいつもこうして一人でいることが多いのだろうか。




「オニオン君はいつもゴーストタイプの子たちと一緒なの?」
「は、はい………いっぱい、一緒にいてくれます」
「そうなんだ、じゃあ寂しくないね!」
「………怖くないの?……おばけ」
「怖くないよ、ポニータやオニオン君が一緒にいてくれるから」
「え…?」



僕?という今にも消えそうなか細い声で聞き返す。



「うん、オニオン君が隣にいてくれるから全然怖くないよ!…あ、ごめん昨日会ったばかりなのに図々しいよね」
「そ、そんなことないっ………」



オニオンは今までで1番大きな声を出し、否定をする。
オニオンの仮面の奥の瞳が潤んでいるように見えた。




「オニオン君…?」
「○○さん、僕…」
「きゅきゅー!」
「ポニータ、どこ行ってたの?…そのポケモン…………サニーゴ!?」




しかし、○○が知っているサニーゴとは随分姿が違っていた。白い姿をしたサニーゴ。色違いかと思いきやポニータと同じガラルのリージョンフォームをした姿らしい。
そして、角を怪我していた。




「はやくポケモンセンターに連れて行ってあげなきゃ…」
「………こ、怖くないの………!?」
「怖くないよ…私ポケモンセンターに行ってくるから待っててね!行こ、ポニータ」
「きゅー!」





-ポケモンセンターにて





「ジョーイさん、この子を診てください!」
「○○さん、待って…っ」
「あら、色違いのポニータ珍しいわね!見たところ元気そうだけど…」
「ポニータじゃなくてこっちのサニーゴを…」
「サニーゴなんてどこにもいないけど…」
「え?…ここにいるじゃないですか!」



しかしジョーイさんは首を傾げる。
一体どういうことなのだろうか。




「か、帰ろ………っ」
「えっ、待ってオニオン君…」




オニオンに引っ張られ先程の墓地に戻ってきた○○。
先程のサニーゴは既に亡くなっていたポケモンで滅多に人に見られることはないのだという。



「じゃあ、サニーゴは怪我をしたまま…」
「う、うん………そう………ここが、サニーゴのお墓だよ………」
「………」




○○は鞄からお菓子を取り出してサニーゴの小さな墓にお供えをし、手を合わせる。




「こ、この話聞いても…っ、怖くならないの…?」
「だから怖くないってば。サニーゴちょっとでも顔見れてよかったよ。また会えたら嬉しいな」
「…!」



お墓に向かってその言葉を投げかけるとサニーゴが微笑んだような気がした。
次の日の朝、空港にオニオンがお見送りに来てくれた。




「帰っちゃうの………?」
「うん、色々ありがとね!」
「また、会える…?」
「うん、会いたいな!」
「そ、その髪留め似合ってる、ね…」
「これ?ダンデさんから貰ったんだ」
「だ、ダンデさんから…?」
「うん、ダンデさんほんとかっこいい…」
「……………○○さんは、ダンデさんのこと好きなの?」
「うん、大好きだよ!」
「…………………」
「あ、ごめんね一人で盛り上がって」
「こ、これあげる」





オニオンがくれたのはあのキョダイマックスをさせるバンドだった。
まさかオニオンがこれをくれるなんて思ってなかった。




「オニオン君、ありがとう!またねー!」
「う、うん!また…」




「………ダンデさん………」




あわや呪いそうな声色で呟いたオニオン。
ダンデはその日寒気が止まらなかったそうだ。


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