02

○○はその日は遅くなってしまったため、ナナカマド博士の好意で研究所に泊めてもらえることになった。

もぞもぞとなにかが動く気配がし、確認してみると布団の中に入ってきたイーブイだった。
どうやら研究室から抜け出してきたらしい。
イーブイは○○の手に頭をもたれかけるかのように寝ている。かわいい寝顔に癒される。起こさないよう○○も再び眠りについた。




「それじゃあナナカマド博士。イーブイをよろしくお願いします」
「ぃぶぃ…」




イーブイに別れを告げ、研究所を後にする○○。
イーブイが気がかりだったが、旅に連れて行くには危険が伴う。
これでよかったのだと自分に言い聞かせ道を進んだ。




「ジュカイン!リーフブレード!」
「あぁ!ムックル…!」



道中すれ違ったトレーナーとバトル。これもトレーナーの醍醐味だ。


「君、強いんだね!君だったらあのルクシオもゲットできるんじゃないかな?」
「ルクシオ…?」
「そう!この道をもう少し進むと出てくると思うよ。この辺りのボスみたいな奴で誰がゲットするか競い合ってるんだ」
「そうなんだ」


ルクシオ。どんなポケモンなんだろうか。





「ぃぶぃっぃぶぃっ!」


イーブイは隙を見つけ研究所を抜け出して○○の跡を追っていた。しかしいくら走っても○○には追いつけず、とうとう疲労で座り込んでしまった。


「ガルルルっ…」
「ぶい…!?」


茂みから聞こえた唸る獣声。
間違いない。いま自分は野生のポケモンに狙われている。







「ブイー!」
「イーブイ!?どうしたの??!ついてきちゃったの?」
「ブイー!ぶい!」
「?あっちになにかあるの?」




イーブイに誘導されついて行くとそこには怪我をして倒れたルクシオと傍に少年が立っていた。



「ふんっ。思ったより大したことなかったな」
「…これあなたがやったの?」
「なんだお前」


あまりにボロボロなルクシオを見て思わず少年に声をかけてしまった。



「ちょっと、やりすぎじゃない?」
「ここら一帯のボスって言われてたからどんなものかと思えば…ぬるいな」
「なにその言い方」
「お前には関係ないだろ」



少年を無視し、鞄からキズ薬を取り出すがルクシオに噛まれてしまった。
どうやらルクシオも人間に対して敵対心を持っているようだった。


「ふん、ぬるいんだよ」
「ルクシオ…手当てするだけだから」
「ぅぅぅっ!」
「ぃぶい!ぶいぶい!ぃーぶぃ!」


ルクシオはアリアドスに襲われそうになっていたイーブイを助けてくれたのだ。
なおも抵抗するルクシオにイーブイは説得した。
まるで自分がジュカインからしてもらったように。
少し大人しくなったルクシオにキズぐすりをかけて、包帯を巻いて行く。


「大丈夫だからね…」
「…」


包帯を巻き終えると、ルクシオは立ち上がり草むらへと駆けていく。
こちらを少し見遣り、小さくお辞儀をした。
逞しく優しいポケモンだ。
またどこかで会えたら、その時はもっとゆっくりお話したい。
そう思った。
きっとまた会えることを信じて。

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