風にエールを















「…………今日の授業はこれで終わりにしましょうか、ありがとうございました!」



「「ありがとうございました」」










入学式から数日経ち、新入生も学校に慣れてきた頃。





いつもの様に授業を終えた名前は少し凝った肩をグルグル回し、ぐーっと伸びをした。


丁度今終わった授業はお昼前の授業だった為、次は昼休みである。お弁当を食べる準備をする生徒達を横目にしつつ自分も昼食を食べる為に教室を出ようとしたその時。






「「名前先生!」」


「!…………あら、松風くん達。どうかした?」






天馬、葵、晋助の3人に呼び止められ、その足を止めた。












入学式の日、名前が華麗にリフティングする姿を見たり、彼女からタオルを貸してもらった天馬は何かと名前に懐いていた。



勿論、生徒から懐かれて悪い気がする訳も無く、名前も天馬の事を可愛がっていたら、天馬と同じクラスで特に仲の良い葵と信助も同じように名前に懐き……と、名前は3人とはよく喋る仲になっていた。













「あの、名前先生、もし良かったら今日私達とお弁当食べませんか?」


「名前先生がこの前、サッカー部の先輩達とお昼ご飯食べてるの見て、僕達も食べたいなって!」


「今日晴れてるから、一緒に屋上で食べましょうよ!」



「……ふふ、お誘いありがとう。じゃあ一緒に食べさせて貰おうかな」







雷門中はマンモス校ということもあってか規則がそれなりに緩い。

先生と生徒が昼食を一緒に食べることを禁止されてはいないし、昼食を食べる場所だって特に決められていない。お菓子の持ち込み禁止も無い……など、他の校則も随分と緩い。



なので名前は生徒とお昼を共にすることもよくあるのだが、1番お弁当を一緒に食べる割合が高いのがサッカー部の生徒達である。



部下の先輩と共に昼食を食べる様子を見た天馬達が、自分を誘ってくれたことが嬉しくて、名前は少しニヤけつつも誘いに乗った。













数分後、彼女達は天馬が屋上でご飯を食べたいと言っていたので、屋上に座って弁当をそれぞれ広げる。





「わぁ!名前先生のお弁当美味しそうですね!」



「えへへ、ありがとう空野さん。そういう空野さんのお弁当も美味しそうね」



ちゃっかり名前の隣をキープした葵は、彼女のお弁当を見ると目を輝かせる。



ちなみに名前は、料理するのが好きということもあり毎日自分で弁当を作っている。自分で作ったお弁当を褒められるのは素直に嬉しかったらしく、名前は照れたように笑った。







「先生、おかず交換し合いしませんか!秋姉のお弁当も美味しいんですよ!」

「僕も!」

「あっ、二人ともずるい、私も!」





「あら、良いの?じゃあ交換しよっか。好きなの取って良いよ(……秋姉って、秋ちゃんのこと………?)」



「「やったー!」」











「……へぇ、松風くん達、サッカー部に入ったのね」


「はい!でも………昨日の試合で、サッカーが管理されてるって…………」



「(そっか、松風くん達はもう試合を…)………黙っててごめんなさいね。管理サッカーのこと」






その後、弁当を食べつつ様々な話をしていた名前達の話の種はサッカーのこととなったが、サッカー部の話になった途端に天馬達の顔は暗くなる。


それを見て既に管理サッカーの事を彼らは知ったと悟った名前の顔からも笑顔が消え、ぽつりと謝罪の言葉を放った。






「名前先生、管理サッカーのこととかシードのこととか……」


「うん、知ってた。………昨年担当したクラスにサッカー部の子がいたからね。表情が暗かったから、話を少しだけ聞いたの。」


「……………先生、俺ちゃんとしたサッカーやりたいです。……でも、俺が指示に従わなかったせいで、久遠監督が……止めることに………」





そう言って落ち込む天馬に、名前は少し前のことを頭に思い浮かべていた










『久遠監督!突然止めるってどういうことですか、聞いてないです!』


『いずれなってた事だ。新監督はこちらの方でもう手配してある』


『いや、それも聞いてないです』


『……………次の監督は円堂だ。』


『え!?守が!!……じゃあ私もサッカー部に……』


『いやまだだ……革命のことは円堂に詳しいことは話してなくてな。円堂達に革命のことを話す時に名字も正体を明かせ』


『………了解です』











天馬達の様子からすると、彼らはまだ新監督が円堂だということを知らないのだろう。
あまりにも彼らが落ち込んでいるので、少しの励ましにでもなればと名前は天馬の口に自身の卵焼きを突っ込んだ




「んぐっ!」





「あのね、松風くん。貴方は自分のやったことを後悔している?していないなら誰に何を言われようと胸を張りなさい。私はフィールドに立つ立場では無いから偉そうなこと言えないけど、貴方は一人じゃないでしょ?ね、空野さん、西園くん。………それに、新しい監督はきっと貴方達の強い味方になってくれる」





名前の言葉にやっと気持ちが晴れたのか、3人は顔を見合わせると嬉しそうに笑って頷いた。




「……ありがとうございます、名前先生。俺、絶対次の試合では勝てるよう頑張ります!」


「僕も僕も!ぜーったい頑張ります!」


「私もマネージャーとして!出来ることは頑張ります!」


「ふふ、元気になってくれて良かった。先生も力になれることがあったら協力するからね」








その後、授業開始を知らせる呼び鈴が鳴ったため名前にお礼を言うと慌てて教室に戻る三人。




バタバタとしたその様子に名前は笑みを零しつつ彼女も教員室へ戻るべく立ち上がり屋上を後にした。













(先生のお弁当美味しかったねー!)


(うん!………名前先生もサッカー部入ってくれないかなぁ)


(それ良い!今度誘ってみましょうよ!)






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