新しいクラスと懐かしい彼









ああ、ドキドキする。


私が大きな楽しみと期待と少しの不安を抱くこの瞬間が、私にとっての新しい一年の始まりなのだ。







あれから入学式は無事に終わり、今から新しく担当するクラスのホームルームが始まる。今年も私は一年生を担当することになり胸がドキドキでいっぱいです。つい先日までランドセルを背負っていた子たちの面倒を見ると思うと何故か微笑ましく思ってしまう。




そんな事を考えているうちに生徒着席の時間になったので私が新しく担当する教室のドアを開けたら













「……………えっ」




「!……………………っち」




先程、フィフスセクター側のプレイヤーとして一段と強さを見せつけてきた彼がいました。
















「(あの子の視線を物凄く感じるんだけど制服もあんなに改造されたらもう、何も言えないよ!それにさっき私、舌打ちされたよね?絶対嫌われてるじゃん!新学期早々生徒に嫌われた!畜生!)」







その後名前は顔を若干ひきつらせながらも教卓の上に立ってホームルームを始めた。表ではしっかりとしているように見えるが、内心ではパニックに陥っている。





名前自身、別に剣城が嫌いな訳ではない。ただ先程のサッカー部内での出来事もあってか、どう接していけばいいのか分からなかったのだ。






新学期早々悩みを抱えた名前だったが、いつまでも悩んでいる訳にはいかず、ホームルームを進めていく。
新入生に話をしている間にも、名前の頭の中はこれからのサッカー部と剣城とどう距離を保つかの悩みで一杯であった。








そんなこんなであっという間に、生徒の自己紹介や明日からの予定も言い終えてホームルームが終わる。



新入生にとって、今日からは小学校に比べて朝も早く電車通学やバス通学をする事になった人も多い。
慣れない環境に疲れを感じている彼らに気付いているのか早めの帰宅を促す名前。


生徒にさよなうならと挨拶をしていると、






「……………………」

「…………!」





またもや剣城と目があった。


気付けば教室に残っているのは剣城と名前だけで。名前はどうしようかと考えた挙げ句、何も言わないのは彼に対して失礼だと思ったのか、剣城にニコリと笑いかけた。






「………………私、フィフスセクターの事はよく思ってないけど、その感情を剣城くんにまで押し付けるつもりは無いから。宜しくね?」


「……っ!!」



そんな名前を、剣城は目を少し大きくさせて見た後踵を返すように教室から出ていった。





その様子を見ていた名前はきょとんとした後、クスリと笑った。





「……なーんだ、別に悪そうな子じゃ無いじゃない」






彼はちゃんと自分の目を見て話を聞いてくれた。会話に対する返事は無かったもののその事は名前にとって剣城の事を良い子だと思うには十分すぎることであった。






少し心が軽くなったのか、ニコニコしながら教室管理をしていると。背後から声がかけられた。









「…………何ニヤついててるんだよ。名前先生」



「!南沢くん久しぶり!って言ってもさっき会ったか。………どうしたの?」


「んー………名前先生に会いに来ただけ。それと、ちょっと質問」









名前のもとを訪ねて来たのは、彼女が一昨年度に担当したクラスにいた南沢篤志。



当時一年生だった頃から彼はサッカーの才能があり名前も一目置いていた。

因みに彼女の事を「名前先生」と下の名前で呼び始めたのは彼である。さらに名前に向かってタメ口で話すのも彼だけ。その為名前にとって何かと印象深い生徒であると同時に仲が良い生徒であった。











そんな南沢は教室に何の躊躇いもなく入ってきて、綺麗に並べてあった机の一つに座った。





「あっ!こら、机の上には座らないの!」


「相変わらず名前先生って怒っても怖く無いよな」


「………怒っても怖く無いんじゃなくって、本気で怒って無いの!」


「そういうとこも、相変わらず甘いんだよなぁ………」






名前は南沢の言葉に言い返そうとしたが、このままではいつまでたっても話が進まないと思ったのか、グッと言葉を呑み込んだ。










「で、質問ってどうしたの?何かあった?」


「ああ、今日の朝のこと。名前先生、あんなサッカー上手かったのかよ」



「!………あ、あれは…………その、うん。昔ちょっと練習してただけ!そ、それより南沢くんは最近どうなの?」



「………………俺は別に普通。ただ新入生が生意気なだけで」


「もう、すぐそういうこと言うんだから!本当は可愛いって思ってるんでしょ?うふふ、倉間くんとかも懐いてるもんね」


「思ってねぇし懐かれても無ぇよ」

「えぇ、そうかなぁ?」

「(名前先生の方が懐かれてるだろ………)」





その後どんどんと話が逸れていき、二人で昔の思いで話に花を咲かせていると、いつの間にか外は暗くなり始めていた。







「あれ、もうこんな時間?南沢くん、お家の人が心配したゃうから早く帰りなさい」

「はぁ?子ども扱いするなよ…………そう言えば俺今日親仕事で居ないんだよなあ…………夕飯どうしよっかなー………」

「……………もう、仕方ないんだから!今日だけだからね!雷雷軒のラーメンで良い?」

「よっしゃ。名前先生と御飯食べれるの?」

「仕方ないでしょう?こんな時間に生徒一人で外食なんて、心配だもの」





名前が本気で心配そうな顔をして南沢を見るのに対して、南沢は溜め息をついて名前を見上げた。






「だから、子ども扱いすんなって。俺にしてみれば名前先生がこんな時間に一人で歩く方が不安だけどな」

「大人を馬鹿にするんじゃあませんっ!ほら、早く帰る準備しなさい。私もすぐ準備するから」


「はいはい、……というか名前先生と飯食いにいくの久しぶりだな」

「あのねぇ言って置くけど南沢くんは生徒で私は教師だからね。見つかったら私、怒られちゃうんだから」








結局、夕飯を南沢と食べる事になった名前は南沢と校門の前で待ち合わせの約束を交わした後、携帯を取り出して昔からの仲間へと電話をかけた。


















(あっ、もしもーし飛鷹くん?)

(名前さん久しぶりっすね。今回も生徒とですか?)

(そうそう。二人席空けといてくれない?)

(はあ、仕方ないですね。特別ですよ)

(ありがとーっ!!…………くれぐれも、私がサッカープレイヤーの名字名前だって事は内緒ね。まだ飛鷹くんと久遠監督と響木さんくらいしか知らないから)

(はいはい、分かってますよ)














名前ちゃんは雷雷軒の常連なので、今でも飛鷹くんと連絡を取り合ってる仲です。








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