愛想笑いは愛想よく









「名字先生は新入生のクラス担当だから入学式終わったら誘導宜しくね」

「はい、分かりました。」











今日は入学式という事で朝早くから物凄く忙しく、教員室は入学式の準備やら新入生の誘導やらでバタバタとしている。
ただでさえ雷門は広いくてマンモス校であるのに、今年入学する新入生は例年より多いみたいで物凄く大変だ。


かくいう私も校舎の前に立ち新入生を誘導する係として朝から駆り出されており今は仕事真っ最中である。






「名前先生、おはようございます」

「あら、おはよう」



因みに雷門は入学式だからと言って在校生が休みになる訳では無い。朝から顔見知りの生徒に話しかけられたり挨拶をされたりと







そんな良い気持ちに浸っていたのに、私の気持ちはふと耳に入ってきた生徒の言葉により一変させられた。







「おい、なんかサッカー部が大変な事になってるらしいぜ!」

「まじかよ、サッカー棟に行ってみようぜ」





「…………………」








遂に雷門中にもフィフスセクターが直接的に関わってきたのだろう。今日もグラウンドで朝練をしている筈のサッカー部が何故サッカー棟にいる

新入生の子達もちらほら人の波につられて、サッカー棟へと向かっていく。


こんなことになって、入学式なんて出来るのだろうか。



色々な意味での不安が沢山あったが、私も生徒達に混じり、駆け足でサッカー棟へと向かっていった。



























「!!」






サッカー棟に入ると、電工掲示板に写る10対0の文字。
観客席には試合を観にきたのだろう、ちらほらと生徒の姿も見える。










ふと、グラウンドに目をやると黒いスーツを着た男の人がいた。どうやら黒木というらしい。

そしてまっすぐ目の前を見ると、反対側の観客席にいた冬海と理事長がガラス越しに見えた。


彼らはフィフスセクター側の人間。昔から信用出来ない人達だ。






そんな事を思っているうちにも、試合はどんどんと進んでいき、ついには化身まで出てきた。

昔、守と修也くんも化身の様なものを出していた気がするけど、今回目の当たりにする化身はなんだか10年前よりパワーアップしている様な気がした。




………時の流れって凄い。










そんなこんなで、色々な意味で10年前を思い起こさせる試合を食い入るように見つめていた私だったが、ふとあることを思い出した。











そうだ。今日は入学式。私は浜野君たちを連れに来たんだった。











それなのにフィフスセクターだのなんだの。今試合に出てドリブルしている男の子も新入生だろう。


色々考えているうちに、段々とイライラしてきた。



試合を見て新入生が痛めつけられてニヤニヤする校長と理事長にも、腹が立つがフィフスセクターの仲間なのかなんだか知らないがいきなりやってきた黒木とかいう人にも腹が立つ。


浜野くん達も結局手伝いに来てくれ無かったし(仕方無いけれども)







入学式ももうすぐ始まってしまう。
その事を伝えるためにも、いきなりやって来た黒木とかいう人に文句を言うためにも、私は観客席からグラウンドに降りていった。




















グラウンドに入ると、いち早く私の存在に気づいた久遠監督に口パクで何をしているんだと言われつつジト目で見られた。




私は悪くありませんよ、フィフスセクターのせいですよ。







なにやら不満げな視線を送り続けてくる久遠監督の事を無視して私は黒木の元へと向かい、出来るだけ笑顔で(引き攣っていたかもしれないが)話しかけた。















「ちょっと、何してるんですか。」

















案外大きかったその声に、試合をしていた選手が驚いて名前の事を見たのは勿論。
久遠監督までもが溜め息を付き、頭を抱えていたことを名前は知らない。










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