つぎはぎラブロマンス | ナノ
::罰ゲーム

「わ! 今日ツイてるのかね、爽やかくんいるやん」
「え? アレが【爽やかイケメンくん】?うわあ、ウチ初めて見たわ。ほんまにイケメンやな…ありゃモテるやろ…」
「って、お。次やで次、すぐや」
『…………』
「綾ちゃん、本気になんてしなくてええんやからね?」
『……うん』

女子高だから滅多に見ることのないイケメンにはしゃぐ友人達をよそに、心配そうに顔をのぞきこんでくる由奈ちゃんに少し間をあけてから頷いて、席を立つ。未だにニヤニヤとする純子と一緒に電車の扉が開いてから駅のホームに降り立った。後ろを見てみると、電車の中から由奈ちゃんが心配そうにこちらに手を振っていて、その他の友人達はやけに明るい笑顔をこちらに向けていた。後で覚えてろよこんちくしょう…。由奈ちゃん以外の友人達をじとっと睨んでいると、純子に引っ張られて改札へと連れて行かれる。

純子に半ば強引に連れられて改札口へと着くと、既に改札を出ていたものと思っていた爽やかくんは、未だ改札を通らずに何やら電話中だった。

「じゃ、邪魔物はさっさと帰りますんで。気張れや〜」
『うっさい』
「ほななー」

笑顔でひらひらと手を振って純子は改札を通って行った。その背中を見えなくなるまで見送ると同時に、爽やかくんの方も通話を終える。終わったなと思ってそちらを向くと、ばちっと目が合った。罪悪感とかからどきりと心臓が変に跳ねたけど、やるなら今しかないと思って私は彼に声を掛けた。

『あの!』


【罰ゲーム】とは、“爽やかくんに嘘の告白をする”というものだった。







『いや、あの、分かってます? えーっと…』
「白石や。白石蔵ノ介」
『あっ、ご丁寧に。篠崎 綾です、どうぞよろ…って違うわ!』
「お、ノリツッコミ」
『(落ち着け、落ち着くんだ綾。大丈夫、さっきのは…あれだ、何かの…、そう、何かの間違いだ…!)』
「篠崎さん、おもろいなあ」

私が頭をフル回転させて考えているのに対して、目の前の白石さんは白い歯をちらりと見せて笑っている。普通の女の子ならこの笑顔に一撃必殺ノックアウトなのかもしれないけど、今の私にはイライラを助長するものとしか思えなかった。思わず眉を吊り上げて声を張る。

『あの! 私は、貴方が好きだと言ったんですよ! そして付き合って下さいと!』
「ああ、そうやね。やから俺は“ええで”ってOKしたんや」
『(だから何故そうなる…!!)』

にこりとした爽やか笑顔ですげなく受け流される私である。イライラしかしないけど。今日が初対面で初めて話した相手の告白を、こんなあっさり受けたりするか普通? コイツ何考えてんだ、と私が顔を強張らせているのを見て、きょとんとした彼の目は「俺、何も変なこと言っとらんやろ?」とそう言っていた。確かに変なことは言ってませんけどね! でもどういうことか分かるでしょうがあーた! ほんと目は口ほどに物をいうとは、よく言ったものである。

「あ、篠崎さん、携帯持っとる?」
『へ…、あ、はい』

いきなり携帯と言われて、反射的にスカートのポケットからスマホを取り出す。いつもの流れてロックを解除すると、ひょいとスマホが私の手から消える。白石さんが私のスマホを奪ったのだ。あ! と非難の声を上げても彼はさして気にせずに、自分のスマホとそれを左右の手で器用に操作し始めた。取り返そうと精一杯伸ばした私の手は、非情な身長差の前に虚しくも空を切り、ものの3分もしないうちに私のスマホは無事に返ってきた。ほっとするのも束の間、「メアド、登録しといたから」という白石さんの言葉が当たり前のように添えられた。
あ、さいですか。……え?

『え、ちょ…、メアドって…!』
「ほなな篠崎さん、後で俺から連絡するわ」
『あ、はーい…』

「ばいばい」そう爽やかな笑みを一つ残して、白石さんは改札を抜けていった。…もしや、私の言葉を遮ったのはわざとだろうか。彼の笑顔は何だか、本心が読めないような気が、しないでもないようなよく分からない気がする。要するに自分の直感に自信がない。一人そこにぽつんと取り残された私は、手にスマホを持ってぼうっと立ち尽くすのみである。

純子から着信が来るまで、私はそんな感じで突っ立っていた。


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