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『え、青葉城西と試合するの? ほんとに?』
「うん。武田先生が言ってたから、確かだよ」

開いた口が塞がらないというのは、正にこういうことを言うんだろう。武田先生に入部届けを出して、勉強とか大丈夫なの!? なんて開口一番で聞かれて、まあ色々話した。やっと話が終わって職員室を出て、清水さんと体育館に向かっていると、にわかには信じ難いことが彼女の口から突然こぼれたものだから、びっくりした。さらりと大事じゃないように言うものだから、うっかり聞き流してしまうところだった。

『すっ、ごいね、先生一体どうやったの…?』
「よくは分からないけど、土下座は今回しなかったみたい」
『どっ、土下座…』

うん、と顔色を変えずに頷いた清水さん。慣れって恐いな。でも今回しなかったって、いつもは土下座してるんだろうか。あの先生、新任なのに色々と凄いんだな…。そうするうちに体育館へと着いて、清水さんは澤村くんに声を掛ける。彼はこちらにちらりと視線をやったかと思うと、すぐに部員達に集まるように声を掛けた。

「今野さん今野さん、」

澤村くんが清水さんの隣にいる私にこっちに来るように手で示してきたから、私は素直にそれに従って、彼の側まで小走りで向かう。着くやいなや、自己紹介してと優しい声音で耳打ちされて、突然過ぎて焦った。

『ええ!?』
「軽く、かるーくで良いから、な?」
『…分かった』

なんか、澤村くんに頼まれると断れないなあなんて思ってから、取り敢えず、名前と学年と組、それと、仲良くして下さいって言おう。そう決心して、部員達に向き直る。皆やっぱり私のことを、不思議そうな顔で見ていた。それと、バレー部とだけあって、皆背が高くて威圧感がある。日向くんは、まあ…、可愛いけれど。

『三年五組の、今野志織といいます。えっと、どうぞなかよ…』
「ああああぁっ!?」
『!?』

突然の大声にびっくりして、すぐさま声の主を探す。そしたら、案の定、予想はしていたけれど、…やっぱりその声は飛雄ちゃんのものだった。可愛いその後輩は私を確かにその長い指で指差していて、隣の日向くんが、ど、どうした影山!? なんて若干ビビりながら言ってる。日向くんのビビるその気持ちは、凄い分かる。可愛い後輩だけれども、飛雄ちゃんに指差されると、なんかもう…土下座して謝りたくなるよ、私は。

「なんでここに…志織さんが…!」
『(ヤバいどうしよううわあ)』
「確か先輩は、あお…」
『ととととと飛雄ちゃん!! 後でちょっと話しよう!!』
「……うス、」

ワタワタと慌てる私の横に居る澤村くんの、何かよく分からないけどとにかく恐いオーラを見たのか、飛雄ちゃんは思いの外聞き分けが良かった。ひとまずホッとした、けど、すぐに背の高い眼鏡くんが、飛雄ちゃんに、「王様が聞き分け良いなんてねぇ」なんてことをニヤニヤしながら言うから、飛雄ちゃんの顔がさらに恐くなってしまった。隣の澤村くんは一つ溜め息を落として、それに思わずびくりと身体を揺らすと、私の方が謝らなくちゃいけないのに何故か彼から謝られた。そして一呼吸置いて、澤村くんは前を見る。それを見て、流石の眼鏡くんと飛雄ちゃんも静かになった。

「…微妙な時期だけど、今野さんにはマネージャーとしてバレー部に入って貰うことになった」
『よ、宜しくお願いします…』
「「シアース!!」」

澤村くんの紹介にぎこちなく頭を下げると、運動部らしい声がダイレクトに耳を突いて、少しキーンとしたけど胸の辺りが何か、懐かしくてほっこりした。


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